31 / 72
3章 二人の過去と今と未来へ
31.お屋敷での目覚め 〜ルカ視点〜
しおりを挟む朝、目が覚めると見慣れぬ部屋の中だった。
「そうだ……。アラン様のお屋敷に、お世話になっているんだった」
質素な自分の寝室と、あまりにも違うので戸惑う。
僕が危ない目にあっていたところ、アラン様に助けられてこうしてお世話になっているけどいいのかな。
気持ちの良い布団から体を起こして、ベッドに座っていたときにドアがノックされた。ネネさんが起こしにきてくれたようだ。
「ルカ様、お早う御座います。良く眠れましたか?」
部屋のカーテンを開けて、にっこり微笑んで挨拶してくれた。
「お早う御座います。良く眠れました。アラン様は……」
アラン様は何となく、毎日早起きしているイメージがあるので聞いてみた。
あらあら! ふふ……とネネさんは嬉しそうだ。
「坊ちゃま……いえ、アラン様はお仕事に出かけましたが、お昼前にニール様と戻って来られる予定になっております」
「そうですか……」
もうお仕事に行ってしまったのか……。朝のご挨拶したかったな……。僕は寂しくなった。
事情聴取があるとアラン様が話していたので、お昼前にいらっしゃるのか。
「アラン様は早朝に鍛錬してからお食事し、お仕事に向かわれましたが、ルカさまのことをかなり気にされてましたよ」
「え?」
ふふ……とまた嬉しそうに笑い、僕に教えてくれた。
「ゆっくり寝かしてやれとか、食事は胃に優しいものをとか……もう、それはルカ様の心配ばかりお話して、お仕事に行かれました」
お話しながらネネさんはテキパキと、僕の支度を手伝ってくれた。
着心地の良いシャツに、ズボン。
「お借りしますね」
僕がそう言うとネネさんは、
「まあ! ルカ様は大事な大事な、大切なお客様なので遠慮なさらないで下さいませ!」と言ってくれた。
僕はネネさんに優しくされて、母と子供の頃に世話をしてくれた人を思い出した。
ネネさんに鏡台の前に座るように言われたので、座った。
「髪の毛に良い、オイルがあるので使いますね」
今日はローブを洗ってもらっているので、羽織ってない。
「あ! 自分でやります」
耳があるのを知られたくない。一応、しまってはいるけど念のために。
「では、毛先だけやらせて下さいませ」
鏡越しにネネさんが、「ね?」と言って両手を合わせて、微笑んでいたのが見えたので断れなかった。
「お、お願いします……」
僕がペコリと頭を下げると、ネネさんは見て分かるような良い笑顔になった。
「失礼しますね」
そっと僕の後ろの髪の毛を一房、手に取ってオイルを塗っていった。
フワリといい香りが僕の周りに広がった。
「いい香りですね」
優しい花の香り。ボサボサの僕の髪の毛に丁寧につけてくれている。
「お気に召しましたか? アラン様がお選びになった物なのですよ。ルカ様に、って」
アラン様が? 嬉しい。
「お手入れをしていけば、髪も艶々になりますよ」
「ありがとう御座います」
どうしても自分の手入れは後回しにしてしまうから、髪の毛は傷んでしまっていた。
「さあ、お食事にいたしましょう」
そのあとは他のメイドさん達が来て、朝食を食べた。僕が食べられそうな量だったので良かった。
「アラン様とニール様がいらっしゃるまで、お時間がありますからお庭を散策などなさいますか?」
美味しい朝食を食べ終わり、紅茶を頂いていたときにネネさんが誘ってくれた。
お庭はたくさんの花が咲いていた。
石畳があって進んで行くとガゼボを見つけた。ベンチや椅子の上に屋根がついたものだけど、日除けになって壁がないので風通しが良くて好き。
僕はそこにお邪魔して椅子に座った。
ふう……と軽く深呼吸すると、外の新鮮な空気が気持ちが良い。天気もいいので、咲いている花々の色が鮮やかに見えて綺麗だ。
お屋敷の皆さんに優しくされて、美味しい食事に肌触りの良い衣服。良いのかな……。
与えられてばかり申し訳ないので、僕ができる事は……。
キョロキョロと周りを見る。今はネネさんとメイドさんはお茶の用意のために、ここにいない。
ガゼボから出て、数歩。歩いて立ち止まる。影になっているので見えないだろう。
両の手のひらを、肩あたりまで上げて呪文を唱える。
「ルカリオンの名において。このアラン様の屋敷を優しく守り、外からの悪しき侵入を許すことのないように」
スッ……と両手を頭上にかざすと、キラキラと光るベールがお屋敷とお庭全体を覆った。
「これで結界は、ヨシッと……」
気が付かれないけれど、これでアラン様とお屋敷の皆さんが守れるならいい。
久々に大きな結界を張ったので、魔力が減ってスッキリした。使わないと溢れて、大変なことになるから良かった。
上気分で、振り返ってガゼボに戻ろうとした。
「ルカ……?」
そこにはアラン様とニールさんと、治療をしてくれた医師兼魔法使いの人が、ガゼボの向こう側に立っていた。
「アラン……様」
僕はまさかアラン様が、こんなに早くお屋敷に戻ってくるとは思わなかったので、驚いて立ちすくんだ。
でも。
「伸びをしてたのですか? お元気そうで良かったです。ルカ君」
ニールさんが、何も疑いなく話しかけてきたのでホッとした。
「……はい。気持ちが良いお庭だったので、体を伸ばしていました」
嘘をついているようで嫌だったけれど、魔法を使えることを知られたくないので、とっさに返事ができた。
「こちらのお庭。このガゼボでお話しましょうか? 事件のことは簡単にして、楽しみましょう」
ニールさんがそう言い、ガゼボに入ってきた。あとに続いてアラン様と医師の人が入って座った。
「よろしくお願いします」
ニールさんと医師の人は真向かいに、アラン様は僕の隣に座ってくれた。
430
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【完結】悪役令息⁈異世界転生?したらいきなり婚約破棄されました。あれこれあったけど、こんな俺が元騎士団団長に執着&溺愛されるお話
さつき
BL
気づいたら誰かが俺に?怒っていた。
よくわからないからボーっとしていたら、何だかさらに怒鳴っていた。
「……。」
わけわからないので、とりあえず頭を下げその場を立ち去ったんだけど……。
前世、うっすら覚えてるけど名前もうろ覚え。
性別は、たぶん男で30代の看護師?だったはず。
こんな自分が、元第三騎士団団長に愛されるお話。
身長差、年齢差CP。
*ネーミングセンスはありません。
ネーミングセンスがないなりに、友人から名前の使用許可を頂いたり、某キングスゴニョゴニョのチャット友達が考案して頂いたかっこいい名前や、作者がお腹空いた時に飲んだり食べた物したものからキャラ名にしてます。
異世界に行ったら何がしたい?との作者の質問に答えて頂いた皆様のアイデアを元に、深夜テンションでかき上げた物語です。
ゆるゆる設定です。生温かい目か、甘々の目?で見ていただけるとうれしいです。
色々見逃して下さいm(_ _)m
(2025/04/18)
短編から長期に切り替えました。
皆様 本当にありがとうございます❤️深謝❤️
2025/5/10 第一弾完結
不定期更新
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる