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3 植物図鑑を拾った
しおりを挟む美形の食べている所作がきれいだったので、ちょっと見惚れていた。
「冷めてしまいますよ」
「あ、ハイ!」
微笑んで言われたので、俺は見惚れていたのをごまかすために急いで残りを食べた。
美形の服装を見てみると布の服に胸当て、腰には木でできた剣をぶら下げていた。自分は食べ終えて食後のコーヒーを飲んでいた。こちらの異世界の食べ物飲み物と、日本の食べ物と飲み物があまり変わらないのを知って安心した。
『あなたは、冒険者ですか?』
んん? 勝手に俺の口から、セリフが出てきた。美形に話しかけている。
「そうです。まだ始めたばかりですが」
装備から初心者とわかるけれど、勝手にテンプレートみたいなセリフが出たのはなぜだ?
『それなら初めは町の近くで魔物を倒して、レベルを上げるといいですよ!』
また勝手にテンプレのセリフが、俺の口から出た――! 村人A、みたいなセリフだ――!!
「なるほど……」
美形は、シチューセットをきれいに食べ終えていた。
「また、会えたら! ありがとう!」
そして俺に礼を言って席を立ち、行ってしまった。俺は呆然として美形の背中を見送った。
「なんなんだ?」
俺の口から二度も、テンプレのセリフが勝手に出た。自分の意思ではない。強制力がかかったようだ。
「もしかして……」
俺も、NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)ではないか? 俺がNPC……?
ん? いや、俺は自分で動いているけど……。考えれば考えるほどわからなくなってきた。
「出るか」
混んでいるので俺は食後のコーヒーを一気飲みして、お会計の場所へ向かった。
「お会計、お願いします」
レジにいた店員さんへ話しかけた。
『ありがとう御座います』
そう言ったあとに店員さんは「あら?」と言った。なにか俺が間違ったか心配になった。
「同じ席の方が、先にお二人分の会計を済ませていますね」
二人分の会計が済んでいる?
「あっ!?」
もしかして相席になった、冒険初心者の美形さんが払ってくれたのかな!?
「お会計は大丈夫ですよ」
店員さんが俺に言った。どうしよう。名前を聞くのを忘れた。
『ありがとう御座いました――』
俺はお店から出た。先に会計を済ませてくれたなんて、なんていい人だ。今度会えたらお礼を言おう!
お腹はいっぱいになったけれど、これからどうしよう。ご飯代は美形さんにおごってもらった。手持ちは減らず、1050Gある。
でもどこかに泊まるなら、このお金じゃ無理だろう。
「なんか拾って来るか」
石を拾って1000Gだったから、今度はもっと良いモノを拾えるはず。俺は町から出て、元居た森へ向かった。
「うわぁ……」
森から出られたときはすぐだったけれど、こうやって森を外から見ると良く出られたなと思うくらい深い森だった。あまり奥へ入らないようにしよう。
そういえば美形に言った、セリフを思い出してみる。
『それなら初めは町の近くで魔物を倒して、レベルを上げるといいですよ!』というセリフ。
つまり、魔物という敵がいる。その敵を倒してレベルを上げる。……やっぱりゲームの世界らしい。
俺の知っているゲームなのか、知らないゲームなのかはまだ判明してない。ただ、ちょっと古いゲームっぽい。
気をつけないと何も武器を持っていない俺が魔物と鉢合わせになったら、ゲームオーバーだ。
どうやらハジメノ町、一番初めの町らしいから魔物のレベルは低いはず……と思いたいし遭遇しないでほしい。
「なにかの武器を持っていた方がいいのかな?」
足元を探してみると、ちょっと太めの木の棒が落ちていた。拾ってみると野球のバット位の太さと長さ。いいかも。拾った太めの木の棒を片手で持って、森の中を探索した。
森の中には色々な植物が自生している。たくさん採取したいけれど、きのこ類は毒キノコと見分けが難しいから今は採るのをやめておく。何かの実も生っているけど食べられるものか、毒かわからない。
「困った……」
太い木の棒を引きずりながら歩いていた。
「あれ? なんだろう?」
右の方向に緑の何かが落ちているのを見つけた。膝までの雑草を足で踏みしめて進んで行くと、草の青っぽい香りがした。こんな道を歩くのは久しぶりだった。長いズボンでよかった。半ズボンだったら皮膚に擦り傷ができただろう。
たどり着いて緑のものを手に取って見ると、一冊の本だった。
「図鑑?」
ペラペラと本をめくってみると、図にかいて説明した書物だった。これ、植物図鑑だ!
ラッキー! これで食べられるものと毒の区別がつくかな? 俺は植物図鑑を読んでみた。詳しく説明されていてわかりやすい。
「……へえ。俺の知っている植物があるんだ」
これなら探せそうだ。
来た道を戻ってから、俺は初めに居た泉まで行くことにした。食べられそうなものや使えそうなものを、注意深く探しながら歩いていった。
「あの赤い実は野イチゴかな?」
図鑑を見て毒じゃないかを調べようとした。片手に持った図鑑が、自然にパラパラとめくれた。
「え?」
調べようとしていた赤い実のページが開かれた。同じ形の赤い実の説明がされたページだった。偶然……だよな。でもちょうど良く、赤い実の詳しく説明されているページが開かれたから戸惑った。
「まあいいか。えっと……。この赤い実は食べられそうだ」
図鑑を読んでみると、食べられることが分かったので採ってみる。たくさんあるけれど他の生き物の分を残したり、採りすぎて次の年に実がならないなんてことのないようにしたりしなければいけない。採る量を加減する。
「こんな感じでいいかな」
片手に乗せたイチゴが山盛りになるぐらい採れた。
「あ、採った野イチゴを入れる物がない」
採ってから気が付いた。何か入れ物がないか周りを見たけど何もない。……とその時、俺のいる場所より奥の方から犬か何かの吠える鳴き声がした。
アオ――ン!
「えっ? まさか魔物がいるのか?」
俺は静かに、鳴き声がする方へ近づいて行った。
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