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第119回『バーコード ラブラブ 愛想笑い』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第119回『バーコード ラブラブ 愛想笑い』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約時間分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=i7ckE5vRyqo
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「メリークリスマス! さあ、寒いけど出かけようぜ!」
敦がコートをばさりとはためかせながら両手を広げて言った。
顔には満面の笑みが浮かんでいた。
部屋の中ではストーブで温められたやかんがしゅんしゅんと音を立てていた。
「えっとー……。」
突然の誘いにしばらく沈黙が流れた。
「なんでクリスマスの日に俺がお前と外を出歩かなきゃいけないんだよ。」
俺をやっと敦に毒を吐くことができた。
確かに俺には彼女はいない。
そして敦も彼女はいない。
お互いクリスマスの日は予定が空いているのが恒例だ。
だが、だからといってこの日に外を歩くのは危険だ。
ラブラブカップルという恐ろしい魔物が幸せそうに闊歩しているのがクリスマスなのだ。
独り身の者が意味もなく出歩くのは自殺行為に近い。
だが俺の煙たがった反応とは裏腹に、敦は自信ありげな表情を浮かべていた。
「ふっふっふ。俺だってそう思ってたさ。昨日まではな。」
「昨日まで?」
クリスマスの居心地の悪さは敦だって十分に理解しているはず。
いや、顔を見る限り俺より理解してるはず。
それがたった一日で覆るなどという馬鹿なことがあったのか?
俺は付き合いの長い敦を初めていぶかしんだ。
外は寒気に包まれていた。
しかしこの寒気はただ寒いだけではない。
天気予報を見た限り、夜には雪になるということだ。
これではますますロマンチックになってしまう、実に面白くない天気だ。
俺は敦に言われた通り外に出てみたものの、さらに不機嫌になっていった。
しかし敦はそんな俺をよそに、うきうきと俺の前を進んでいった。
街中はクリスマス一色だった。
そして案の定幸せそうな笑顔を浮かべているカップルや家族がわんさかとあふれていた。
ぐはっ。
俺はそんなカップルや家族が目に飛び込んでくるたびに心に大きなダメージを負った。
俺でさえこのダメージだ。
顔を比べる限り、敦は俺よりも大きなダメージを負っているはず──。
俺は敦の方を見た。
しかし敦は相変わらずにこにことしていた。
こいつにだって幸せそうなカップルたちが目に入っているはずなのにだ。
猛然としたい苛立ちを感じた俺は敦の胸倉を掴んだ。
「てめえ、なに平気そうな顔してんだよっ。目の前を幸せそうなカップルが歩いてるんだぜっ? いっしょにゲボ吐こうぜっ?」
俺の白い吐息が敦の前で渦を巻いた。
しかし敦はにやにやとしたままだった。
「落ち着けよ、浩二。」
敦はわざとらしく両の掌を俺に向けた。
「俺は昨日いつも通りコンビニのバイトをしていたんだ。」
敦は語り始めた。
「でな、そこへ若い男女の客が来た。」
「カップル……か……?」
「そう思うだろ? 俺だって最初はそう思ったさ。二人で腕を組んでたしな。でもレジでの支払いのときある事件が起こった。」
「事件……?」
敦はうなずいた。
「客がQR決済でと言ってスマホを取り出したので、俺はバーコードリーダーを持って待った。しかし通信環境が悪かったのかスマホの処理速度が重かったのか、なかなか決済画面が出なかったんだ。」
確かにレジを前にしてもたついてしまうことはままある。
「そのとき男は気まずさに耐えられなかったのだろう、女に向ってなかなか出ないやと言って、自分のスマホをいじっていた女はそれに笑いかけたんだ。だが俺は見抜いてしまった。女のあの笑顔は愛想笑いだと。」
敦の話を聞いているうちに俺はいつの間にか寒さを忘れていた。
「き、気まずかったから愛想笑いだったんじゃないのか……?」
「いや、違うね。あれは男にあきれていたんだ。あきれているときの愛想笑いだ。」
「そのカップルが破局寸前だとでも言いたいのかよ。」
例え別れた男女がいたとしても、その女が俺たちに回ってくることはないことは今までの経験から十分にわかっていた。
「それも違う。そもそもあの二人は恋人でもなんでもなかったのさ。」
俺の体に電撃が走った。
「ま、まさか……。」
「そのまさかさ。だから俺は学習したんだ。男女が仲良く歩いているからってそれは恋人同士だとは限らないって。お金だかが介在する関係ってのもあるのさ。」
敦の声のトーンが一段落ちた。
「いいか、浩二。クリスマスソングにだまされるな。イルミネーションに流されるな。街を歩く男女が全てカップルだとは限らない。大事なのは顔だ。二人の顔をよく見るんだ。微細な表情の変化も見逃さないようにな。そうすればそこにきっと真実が現れる瞬間があるんだ。」
今俺たちの横をおしゃれな格好をした男女もカップルではない可能性もあるのか。
後ろから聞こえる楽し気な会話もカップルのものではない可能性もあるのか。
長年ひたすらカップルから目を背けてきた俺には目から鱗だった。
顔をよく見たら見えてくる真実もある──。
俺は今一度目の前の敦の顔を見た。
そしてやっぱりこいつは俺よりも彼女はできなさそうだなと思った。
~・~・~・~・~
~感想~
ラブラブと愛想笑いというお題の組み合わせは相性がいいと思うのですが、設定はいろいろなパターンを考えたんですが、ラブラブという言葉を文章として出すことを考えたとき、どういう話なら使うことができるのかわからなくなり、書き始めるまで10分以上かかってしまいました。
オチはぼんやりと決まっていたとはいえ、ぼんやりと書き進め、とりとめのない話となってしまいました。
というか、エピソードや登場人物の理屈に強引さが否めません。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第119回『バーコード ラブラブ 愛想笑い』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約時間分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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「メリークリスマス! さあ、寒いけど出かけようぜ!」
敦がコートをばさりとはためかせながら両手を広げて言った。
顔には満面の笑みが浮かんでいた。
部屋の中ではストーブで温められたやかんがしゅんしゅんと音を立てていた。
「えっとー……。」
突然の誘いにしばらく沈黙が流れた。
「なんでクリスマスの日に俺がお前と外を出歩かなきゃいけないんだよ。」
俺をやっと敦に毒を吐くことができた。
確かに俺には彼女はいない。
そして敦も彼女はいない。
お互いクリスマスの日は予定が空いているのが恒例だ。
だが、だからといってこの日に外を歩くのは危険だ。
ラブラブカップルという恐ろしい魔物が幸せそうに闊歩しているのがクリスマスなのだ。
独り身の者が意味もなく出歩くのは自殺行為に近い。
だが俺の煙たがった反応とは裏腹に、敦は自信ありげな表情を浮かべていた。
「ふっふっふ。俺だってそう思ってたさ。昨日まではな。」
「昨日まで?」
クリスマスの居心地の悪さは敦だって十分に理解しているはず。
いや、顔を見る限り俺より理解してるはず。
それがたった一日で覆るなどという馬鹿なことがあったのか?
俺は付き合いの長い敦を初めていぶかしんだ。
外は寒気に包まれていた。
しかしこの寒気はただ寒いだけではない。
天気予報を見た限り、夜には雪になるということだ。
これではますますロマンチックになってしまう、実に面白くない天気だ。
俺は敦に言われた通り外に出てみたものの、さらに不機嫌になっていった。
しかし敦はそんな俺をよそに、うきうきと俺の前を進んでいった。
街中はクリスマス一色だった。
そして案の定幸せそうな笑顔を浮かべているカップルや家族がわんさかとあふれていた。
ぐはっ。
俺はそんなカップルや家族が目に飛び込んでくるたびに心に大きなダメージを負った。
俺でさえこのダメージだ。
顔を比べる限り、敦は俺よりも大きなダメージを負っているはず──。
俺は敦の方を見た。
しかし敦は相変わらずにこにことしていた。
こいつにだって幸せそうなカップルたちが目に入っているはずなのにだ。
猛然としたい苛立ちを感じた俺は敦の胸倉を掴んだ。
「てめえ、なに平気そうな顔してんだよっ。目の前を幸せそうなカップルが歩いてるんだぜっ? いっしょにゲボ吐こうぜっ?」
俺の白い吐息が敦の前で渦を巻いた。
しかし敦はにやにやとしたままだった。
「落ち着けよ、浩二。」
敦はわざとらしく両の掌を俺に向けた。
「俺は昨日いつも通りコンビニのバイトをしていたんだ。」
敦は語り始めた。
「でな、そこへ若い男女の客が来た。」
「カップル……か……?」
「そう思うだろ? 俺だって最初はそう思ったさ。二人で腕を組んでたしな。でもレジでの支払いのときある事件が起こった。」
「事件……?」
敦はうなずいた。
「客がQR決済でと言ってスマホを取り出したので、俺はバーコードリーダーを持って待った。しかし通信環境が悪かったのかスマホの処理速度が重かったのか、なかなか決済画面が出なかったんだ。」
確かにレジを前にしてもたついてしまうことはままある。
「そのとき男は気まずさに耐えられなかったのだろう、女に向ってなかなか出ないやと言って、自分のスマホをいじっていた女はそれに笑いかけたんだ。だが俺は見抜いてしまった。女のあの笑顔は愛想笑いだと。」
敦の話を聞いているうちに俺はいつの間にか寒さを忘れていた。
「き、気まずかったから愛想笑いだったんじゃないのか……?」
「いや、違うね。あれは男にあきれていたんだ。あきれているときの愛想笑いだ。」
「そのカップルが破局寸前だとでも言いたいのかよ。」
例え別れた男女がいたとしても、その女が俺たちに回ってくることはないことは今までの経験から十分にわかっていた。
「それも違う。そもそもあの二人は恋人でもなんでもなかったのさ。」
俺の体に電撃が走った。
「ま、まさか……。」
「そのまさかさ。だから俺は学習したんだ。男女が仲良く歩いているからってそれは恋人同士だとは限らないって。お金だかが介在する関係ってのもあるのさ。」
敦の声のトーンが一段落ちた。
「いいか、浩二。クリスマスソングにだまされるな。イルミネーションに流されるな。街を歩く男女が全てカップルだとは限らない。大事なのは顔だ。二人の顔をよく見るんだ。微細な表情の変化も見逃さないようにな。そうすればそこにきっと真実が現れる瞬間があるんだ。」
今俺たちの横をおしゃれな格好をした男女もカップルではない可能性もあるのか。
後ろから聞こえる楽し気な会話もカップルのものではない可能性もあるのか。
長年ひたすらカップルから目を背けてきた俺には目から鱗だった。
顔をよく見たら見えてくる真実もある──。
俺は今一度目の前の敦の顔を見た。
そしてやっぱりこいつは俺よりも彼女はできなさそうだなと思った。
~・~・~・~・~
~感想~
ラブラブと愛想笑いというお題の組み合わせは相性がいいと思うのですが、設定はいろいろなパターンを考えたんですが、ラブラブという言葉を文章として出すことを考えたとき、どういう話なら使うことができるのかわからなくなり、書き始めるまで10分以上かかってしまいました。
オチはぼんやりと決まっていたとはいえ、ぼんやりと書き進め、とりとめのない話となってしまいました。
というか、エピソードや登場人物の理屈に強引さが否めません。
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