俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ

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第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

2 ツンの裏にある、なにか。

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翌朝。
教室のドアを開けた瞬間、またそれは始まった。

「……足音、うるさい」

「まだ一歩しか歩いてないけど!?」

「その“一歩”がうるさいのよ」

「理不尽すぎない!?」

 朝からこれである。
 俺、もうこの一週間で、黒瀬の“理不尽耐性”だけは鍛えられた気がする。

 そんなやり取りをしていたら、隣の席の佐伯がニヤニヤしながら囁いてきた。

「おまえら、ほんと夫婦みたいだな」

「やめろ、その地獄みたいな例え」

 黒瀬の眉がピクリと動く。

「……誰が、誰と夫婦ですって?」

「いえ、何も。佐伯が勝手に言っただけです」

「ふーん……」

 こっちを一瞥して、また視線を逸らす。
 その頬がほんの少しだけ赤いのは、気のせいだろうか。

 ……いや、絶対気のせいだ。



 昼休み。
 俺が購買のパンを片手に戻ってくると、自分の席の上に見慣れないシャーペンが置かれていた。

「ん? 誰のだこれ」

 持ち主の名前シールもない。
 でも、よく見ると、軸の根元に小さなシールが貼ってあった。

 ――アニマルプリン王国のペンギン、ぷりん太。

 妹が小学生のとき好きだったキャラだ。
 でも、こんなシールを貼るような子、クラスにいたっけ?

 そう思ってふと視線を上げると、
 黒瀬が、なぜかこっちを見ていた。

 ……いや、“見ていた”というより、“睨んでいた”。

「な、なに?」

「それ、触らないで」

「え、俺の机の上にあったんだけど!?」

「だからって触っていいとは言ってないわ」

「理不尽シーズン2来たな……」

「……返して」

 黒瀬は一歩近づいてきて、俺の手からシャーペンを奪い取った。
 その動作が、いつもよりずっと焦ってる。

「ぷ、ぷりん太……かわいいよな」

 つい、言ってしまった。
 黒瀬の手が止まる。

「……え?」

「いや、妹が昔好きでさ。アニメ見てたから知ってる。黒瀬も好きなんだな、こういうの」

 次の瞬間。

「ち、ちがうっ!」

 珍しく声を張り上げた黒瀬が、顔を真っ赤にして言った。

「べ、別に好きとかじゃなくて! たまたま……貼ってあっただけで!」

「貼ってあった……だけ……?」

「そう! 勝手に! 気づいたら!」

「誰が!?」

「……知らない!」

 そう言って、黒瀬は顔を背けた。
 その耳まで真っ赤なのを、俺は見逃さなかった。



 放課後。
 教室を出ようとしたとき、背後から小さな声が聞こえた。

「……さっきのこと、誰にも言わないで」

 振り返ると、黒瀬が窓のほうを向いたまま、ぽつりと呟いた。

「……別に、恥ずかしいことじゃないと思うけど」

「うるさい。あんたには、関係ないでしょ」

 そう言って、彼女はそそくさと教室を出ていった。
 でもその背中は、いつもの“完璧超人”とは少し違って見えた。

 ……なんていうか。

 普通の女の子、って感じだった。
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