飼われる側って案外良いらしい。

なつ

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3.霧、もしくは雨、もしくは…

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漸く食べ終わる頃にはリビングは静寂で満ちていた。

「……ご馳走様です」

「おう、洗っておくからそこ置いとけ」

そこ、と指を指されたキッチンの方へ食器を持っていき水につける。薬のゴミを捨てリビングを背に窓の外を見ていると、背後から声をかけられた。

「帰りたいか?」

「はい、と言ったら家まで送り届けてくれるんですか」

そんな訳ないだろ、と笑われた。じゃあ聞くなよ。

何も言わずに黙ってそのままで居ると、何故か向こうも静かに外を見続けた。
その様子をちらりと盗み見ると、微笑んでいた。懐かしむように、そこにはただの景色だけでなく他に何かあって…それを慈しむように。

僕の知らない感情だ。

紫ヶ崎はそ、と目を逸らした。

僕は帰りたいと思う。ここは僕が居るべき場所では無いから。日常に戻るべきだから。それが普通だから。

須磨が食器を洗い始めてから終わるまでの間もずっと外を見ていた。
やがてそれも飽きてきて、無言で部屋に戻る。フローリングの上を素足で歩くペタペタという音が妙に響いた気がした。

・・・

「そろそろ俺帰るわ。彼奴はお節介で煩いが決して悪い奴じゃねえから、仲良くしてやってくれ」

部屋に戻りぼんやりとどこかを見たり、SNSを眺めていた所に扉の向こうからそう声をかけられたのは、夕方の5時頃だった。

そうして須磨が帰り、リビングから外を眺めていた時ちょうどミースが帰ってきていた。何やらとても上機嫌な様子で、笑顔で鼻歌なんか歌っている。周りに花や妖精がふわふわ舞っていても可笑しくないくらいだ。

こいつもこいつで煩いんだよな…

「待って、紫ヶ崎くん」

とっとと部屋に戻ろうと歩き出したものの、呼び止められてしまった。

「…なんですか」

男の方を向くことなく、視線は与えられた部屋のまま冷たく返す。

「今日、あったこと教えて欲しいな」

は…?今日あったこと?

一瞬何を言っているのか理解できなかった。

「うん、君の事知りたくて。ああ特に深い意味は無いんだけれど」
 
「……須磨さんと、少し話をしました。それからご飯を食べて部屋でぼーっとしていました。話の詳細はあの人にどうぞ」

あの人とは勿論須磨の事だ。僕は彼の「まだまだ長いなあ…」という独り言を無視して、今度こそ部屋に戻り扉を閉める。1ミリの隙間も空けまいと、しっかり。

1人になれたと思ったけど結局夕食だとかお風呂、歯磨きだとかで部屋から出ないといけないのが何とも……

はぁ、とここに来て何度目になるか分からない溜息がまた零れた。ピシャリと言い放った手前すぐに部屋から出る気にはなれず、昨日よりも少し遅めの時間にすべきだと言われていることを済ませて横になった。

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