飼われる側って案外良いらしい。

なつ

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1.波紋を描く、異色の水滴

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どういう方向だろうと、身の回りの環境が変化してしまうのは好ましくない。
Swisが来たことでどのような影響が、と懸念したものの、己だけは変わらずド底辺で安心した。
ただ周りはかなり変化した。特に今まで僕に冷たく当たっていた人達だ。彼奴らはあのSwis──セミュールという名前だったか──が居る時は絶対に僕に何もしてこない。寧ろ優しい。まるで入社してすぐの頃のようだ。
ただ良くない変化もある。良い変化の周りには、必ず変わる前とは違う嫌な変化も共に着いて回るもんだ。それが、昇進間際の彼、西園寺さいおんじだ。

「…」

ドカッ!ドゴッ、バキ…ッ

「っぐ……うぅ、うあ゙っ…」

ただただ蹴られ、殴られ。
僕の背中はきっと青くなっている。
きっとSwisの中で容姿や地位に優れた上位種であるせミュールが来てから、注目される機会が減ったからだろう。Swisという生物の物珍しさだけじゃない、上位種であるからこその人間を愛玩動物として傍に置ける権利があるからだ。皆それを虎視眈々と狙っている。
何しろ、全てを兼ね備えた彼らに飼われれば、将来安泰だと言われているのだ。ただお金があるだけのお坊ちゃまと付き合うのとは比にならないくらいメリットがある。

その事実が、挫折を味わったことのない西園寺には酷く響いた。

そしてそれが全部僕に回ってくる。全くとんだとばっちりだ。Swisは福を呼ぶなんて言うやつまで現れたが、誰がどこで何をしていようがそれが僕にとってプラスになったことはただの1度も無い。

「君も本当は心の中で笑っているんだよね、良くないな。奴隷なのに」

心の中まで制限しないで欲しい。

殴られながら思う。正直本音は?と聞かれると………

「ねえ君はこの中で一番輝いていて1番で、至高で、天上が似合うのは、俺だと思うよね」

こくり、と頷く。ここで違ぇよなんて言えば本当に死んでしまうので。

「違う。言って」



バキ…ッ!

首を傾げれば拳が飛んできた。

「俺が!一番だろう!!!」

「ぐ、ぅ…」

ああ言え、ってそういうこと。

「西園寺、様、がっ…いちばん、っです…」

最下層のすることは決まっている。
ひとつ、逆らわないこと
ふたつ、肯定すること
みっつ、立場を忘れないこと
こんな奴隷の一言でも多少は効いたのか、西園寺はいつもの保管庫を出ていった。

今日は、戻れるかな。

彼は初めて手加減を忘れた。僕で殴り慣れたその拳は重い。僕で力の入れ方を覚えた足は背骨をうんと軋ませる。体格だって僕より当然いい。

戻れない?いや、戻らなければ。

立ち上がろうと力を入れるとあちこち痛む。よろめく。膝から崩れ落ちて、今にも意識を失いそうだ。…違う。立て。立て、立て、立て…!!
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