飼われる側って案外良いらしい。

なつ

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2.救い?

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銀行を希望した理由、として念の為1万円を下ろしておく。あとはもう用は無いのでとっととタルアが待つ車へ向かった。

「早かったね?迷子にはならなかったかな」
 
「あの、さっきから僕のこと小型犬のようなものだと思っていませんか」

「え、違うの…?」

この人外駆逐してもいいだろうか。

「俺は真面目に心配してるんだよ!?」とか何とか騒ぐ野郎を無視して車に乗る。用はこれだけだ、と告げれば意外…という顔をされた。何だ。

「ここで暴れて無理にでも帰るところまで考えてたから、350ページある飼い主マニュアル持ってきたんだけど…」

タルアは後部座席に置かれた鞄を一瞥した。分厚い本のようなものが鞄から飛び出ている。

「無駄な荷物ですね」

紫ヶ崎があんなに帰りたいと喚いていたのは先程の一件がいちばん大きな理由なので、それが済んだ以上騒ぐ必要もなくなったのだ。勿論仕事に行かなければというのもあるが、多分それはタルア達の言う通り休まないと叶わないものだろう。
もし、もしそれで復帰後想像もしたくないくらい酷い目に遭うのなら、その時は今度こそ今世からサヨウナラするチャンスだと思えばいい。

「…ま、大人しく休んでくれるなら何よりだよ。」

紫ヶ崎がシートベルトを着けたのを確認すると、タルアは自宅へ運転を始めた。その表情からまだ何か思うところがあるのは分かるが、聞いてこないのは有難い。
会話という名のタルアの一方的な語りで車内が静寂に包まれることなく、彼の自宅に着いた。

さっき初めて外から見た時も思ったがでかいな。

天辺を見ようとすれば首がポッキリと逝ってしまいそうなくらいの高層マンション。エレベーターに乗った際1番上だから下に着くまで少し時間が掛かると言われ銀行に着く前に気絶しそうになった。
そんなことを思い出しながら、タルアからたまに飛んでくる問いかけに適当に返事をする。

「────と、思うんだけど君はどっちが好きかな?赤?黒?白も似合うと思うな」
 
…え?何の話してんだ?

「あー……黒で……?」

「黒の首輪かあ。いいね、今度見に行こう」

数分前の己に人の話はちゃんと聞いた方がいいと説教をしたい。

「あっ結構です」

「結構欲しいって?」

この流れもういいって。

「人間界では欲しくないですっていう意味です」

「ううーん、冷たい」

やれやれと首を振るタルアは、それからすぐ忘れていたことがあったね、と帰宅しひと段落着いたところでこちらを向く。

「これからどうぞよろしくね、ど、う、きょ」

語尾に星マークでも付きそうなテンションでウインクしながら言われてしまった。同居を療養だと訂正していると、暫く働けないという事実を突きつけられた気分だ。思わず苦い顔になる。
とまあそんな訳で、キラキラ野郎とボロボロ野郎の奇妙な生活が始まってしまったのだった。
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