23 / 35
2.救い?
12
しおりを挟む
銀行を希望した理由、として念の為1万円を下ろしておく。あとはもう用は無いのでとっととタルアが待つ車へ向かった。
「早かったね?迷子にはならなかったかな」
「あの、さっきから僕のこと小型犬のようなものだと思っていませんか」
「え、違うの…?」
この人外駆逐してもいいだろうか。
「俺は真面目に心配してるんだよ!?」とか何とか騒ぐ野郎を無視して車に乗る。用はこれだけだ、と告げれば意外…という顔をされた。何だ。
「ここで暴れて無理にでも帰るところまで考えてたから、350ページある飼い主マニュアル持ってきたんだけど…」
タルアは後部座席に置かれた鞄を一瞥した。分厚い本のようなものが鞄から飛び出ている。
「無駄な荷物ですね」
紫ヶ崎があんなに帰りたいと喚いていたのは先程の一件がいちばん大きな理由なので、それが済んだ以上騒ぐ必要もなくなったのだ。勿論仕事に行かなければというのもあるが、多分それはタルア達の言う通り休まないと叶わないものだろう。
もし、もしそれで復帰後想像もしたくないくらい酷い目に遭うのなら、その時は今度こそ今世からサヨウナラするチャンスだと思えばいい。
「…ま、大人しく休んでくれるなら何よりだよ。」
紫ヶ崎がシートベルトを着けたのを確認すると、タルアは自宅へ運転を始めた。その表情からまだ何か思うところがあるのは分かるが、聞いてこないのは有難い。
会話という名のタルアの一方的な語りで車内が静寂に包まれることなく、彼の自宅に着いた。
さっき初めて外から見た時も思ったがでかいな。
天辺を見ようとすれば首がポッキリと逝ってしまいそうなくらいの高層マンション。エレベーターに乗った際1番上だから下に着くまで少し時間が掛かると言われ銀行に着く前に気絶しそうになった。
そんなことを思い出しながら、タルアからたまに飛んでくる問いかけに適当に返事をする。
「────と、思うんだけど君はどっちが好きかな?赤?黒?白も似合うと思うな」
…え?何の話してんだ?
「あー……黒で……?」
「黒の首輪かあ。いいね、今度見に行こう」
数分前の己に人の話はちゃんと聞いた方がいいと説教をしたい。
「あっ結構です」
「結構欲しいって?」
この流れもういいって。
「人間界では欲しくないですっていう意味です」
「ううーん、冷たい」
やれやれと首を振るタルアは、それからすぐ忘れていたことがあったね、と帰宅しひと段落着いたところでこちらを向く。
「これからどうぞよろしくね、ど、う、きょ」
語尾に星マークでも付きそうなテンションでウインクしながら言われてしまった。同居を療養だと訂正していると、暫く働けないという事実を突きつけられた気分だ。思わず苦い顔になる。
とまあそんな訳で、キラキラ野郎とボロボロ野郎の奇妙な生活が始まってしまったのだった。
「早かったね?迷子にはならなかったかな」
「あの、さっきから僕のこと小型犬のようなものだと思っていませんか」
「え、違うの…?」
この人外駆逐してもいいだろうか。
「俺は真面目に心配してるんだよ!?」とか何とか騒ぐ野郎を無視して車に乗る。用はこれだけだ、と告げれば意外…という顔をされた。何だ。
「ここで暴れて無理にでも帰るところまで考えてたから、350ページある飼い主マニュアル持ってきたんだけど…」
タルアは後部座席に置かれた鞄を一瞥した。分厚い本のようなものが鞄から飛び出ている。
「無駄な荷物ですね」
紫ヶ崎があんなに帰りたいと喚いていたのは先程の一件がいちばん大きな理由なので、それが済んだ以上騒ぐ必要もなくなったのだ。勿論仕事に行かなければというのもあるが、多分それはタルア達の言う通り休まないと叶わないものだろう。
もし、もしそれで復帰後想像もしたくないくらい酷い目に遭うのなら、その時は今度こそ今世からサヨウナラするチャンスだと思えばいい。
「…ま、大人しく休んでくれるなら何よりだよ。」
紫ヶ崎がシートベルトを着けたのを確認すると、タルアは自宅へ運転を始めた。その表情からまだ何か思うところがあるのは分かるが、聞いてこないのは有難い。
会話という名のタルアの一方的な語りで車内が静寂に包まれることなく、彼の自宅に着いた。
さっき初めて外から見た時も思ったがでかいな。
天辺を見ようとすれば首がポッキリと逝ってしまいそうなくらいの高層マンション。エレベーターに乗った際1番上だから下に着くまで少し時間が掛かると言われ銀行に着く前に気絶しそうになった。
そんなことを思い出しながら、タルアからたまに飛んでくる問いかけに適当に返事をする。
「────と、思うんだけど君はどっちが好きかな?赤?黒?白も似合うと思うな」
…え?何の話してんだ?
「あー……黒で……?」
「黒の首輪かあ。いいね、今度見に行こう」
数分前の己に人の話はちゃんと聞いた方がいいと説教をしたい。
「あっ結構です」
「結構欲しいって?」
この流れもういいって。
「人間界では欲しくないですっていう意味です」
「ううーん、冷たい」
やれやれと首を振るタルアは、それからすぐ忘れていたことがあったね、と帰宅しひと段落着いたところでこちらを向く。
「これからどうぞよろしくね、ど、う、きょ」
語尾に星マークでも付きそうなテンションでウインクしながら言われてしまった。同居を療養だと訂正していると、暫く働けないという事実を突きつけられた気分だ。思わず苦い顔になる。
とまあそんな訳で、キラキラ野郎とボロボロ野郎の奇妙な生活が始まってしまったのだった。
363
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる