護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん

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19.事ノ顛末

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「え、ほんとに?」

「ほんとに」

「そっかー」

あのお胸の大きな人は、結界張りなおすこと出来なかったんだね。

イアンは、有言実行でローランド王国に行ってきたらしい。
それで、王国は魔獣に襲われたみたいで、滅びたっぽいって教えてくれた。

「祖国の辛いニュースを伝えてちゃってごめんね?でも真実を知った方がいいよね?」

「そだね。でも全然辛くないよ。いい思い出ないもん」

あのクズ王子、お胸の聖女さんと二人で仲良く王国を護って行くのかなって思ったけど、無理だったのかー。
あ、でも、私10年も頑張ったのに、お胸の聖女さんはすぐに護らなくて良くなるとか、なんかズルいな。

ブタさん聖職者たちも無理だったのかな。
『私達はやれば出来ますが今は聖女がいるから聖女に栄誉を譲る』とか言ってたけれど。あ、そか、お胸の聖女さんに栄誉を譲ったのか。

「そうか、ジルヴァラが辛くないなら良かった」

「ん、…普通は辛いもの、なの?」

あれ?間違えたか。
でもなー、無事を祈りたい人いないもんなー。

「いや、それ以上にジルヴァラが辛い思いしてたってことでしょ?
感じたことに対して、他人の普通を押しつけられる筋合いないんだから、ジルヴァラは他人の普通を気にする必要ないからね」

「そか」

「考え方なんてみんな違う。ジルヴァラは変わった子って言われるかもしれないけれど、変の定義って何?普通って素晴らしいものなの?」

「んー、よくわかんないよ」

「ん、わからなくていいよ。そのうち理解する日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。
僕とジルヴァラの考え方が違うのなんて当たり前ってこと」

「ん、わかった」


この町で暮らして、誰にも強制されない自由な生活をしている。
全部自分で決めるのは、ワクワクするけれど、怖いし面倒くさいって思うこともある。
まだ知らない人と話すのは慣れないし、みんな優しいのにもビックリする。

今思えば、王国ではどうしてあんなにも蔑まれていたのかわからない。

貴族や教会の人からは常に、平民風情が聖女を名乗るなどとは身の程知らずめとか言われて、足引っ掛けられたり、物を投げつけられたりした。
それをマネするように、貴族じゃない人たち、平民とかにも、バチあたりとか、何もしないくせにお金貰って贅沢な暮らししてるとか言われたけれど、あの生活のどこに贅沢があったのか教えてほしい。
ごはんもくれたりくれなかったり、それもパン一切れしかない日もあったりとか、成長期舐めてんのかって、今なら思う。

5歳までは親元で暮してたはずなんだけど、5歳までの記憶なんて全然ないし、両親について思い出せるのは、私を売って稼いだ大金を見ながら浮かべていた邪な笑顔だけ。
正直トラウマでしかない。

聖女やってた時は、結界の維持で本当に大変だった。
いつも割れるみたいな頭痛がしてたし、充分な睡眠も取れなかったから、夢と現実の区別がついてなかった。
ある意味洗脳されたみたいに、現状が当たり前なんだと思い込んでいた。
悪いのは平民なのに恐れ多くも聖女になってしまった自分なのだと。その分、身を削って働くのは当然だとなんだと。

プラタがいなければ、とっくに死んでたか、壊れてた。

「ニャー」

「ん、プラタ、かわいいね」

お食事処に猫はダメだから、コッソリしててね。

「にゃ」

小さめな声でプラタがないた。

「その猫、賢いね」

「うん。プラタだからね」


前にも一度連れてきてもらったイアンお勧めのこのお食事処は、元気でぽっちゃりめの女将さんが切り盛りしてる暖かい雰囲気のお店だ。
厨房で、女将さんの旦那さんが美味しいご飯を作っていて、すっごく美味しいからって色々勧めてくれる。愛のお裾分けだ。

勧められたごはんは、どれも本当に美味しくて、食べると幸せになる。

普段は宿のごはんを食べてるんだけど、もちろん宿のごはんも美味しいんだけど、ここのは格別な気がする。

「もっとたくさん食べなよ」

ニコニコしながらイアンが勧めてくる。
元々そんなにたくさんは食べられないから、もうお腹いっぱいなんだけど、それでも、少しずつ食べる量増やしていけば、だんだん食べられるようになるからって言われた。

なんだろうね、ポカポカするね。

もぐもぐと美味しいごはんを食べる。
今日は何かの肉を表面はパリパリで、中味はジューシーに焼いたやつに、ワイン風味のソースがかかったのがメインディッシュ。付け合わせは野菜をあまーく煮たやつだ。
皮のパリパリが好きだ。んまい。

イアンは既に食べ終わってて、赤ワインを飲んでいる。
私も飲みたいのに、飲ませてくれないんだよね。成人してるって何回も言ってるのに。
絶対このお肉に合うのに。そのためのワインのソースなのに。
年相応に大きくなるためにも食べなければ。もぐもぐ。

「それでね、一度帝国に帰ろうと思ってるんだけど、ジルヴァラも一緒に来ない?」

イアンはテーブルに肘をついて、ワイングラスの下の方を持ってくるくるしながら言う。

「え、イアンは帝国の人なの?」

「そうだよ。言ってなかった?」

「たぶん聞いてないような気がする」

「そっかあ。じゃあ今言うね」

「うん」

イアンは、すっかり空気に触れて酸化した赤い色のワインを口に含んで味わいながら話し始めた。

「1ヶ月前に、なぜかこの国がオズワルド帝国に戦争を仕掛けてきてね。
最初は無視してたんだけれど、強力な魔道具を持ち出してきて、だんだん無視出来ない被害になってきたから、返り討ちしに来たんだ」

この国と北の帝国との戦争の話?

「元々の戦力差があり過ぎるから、一瞬でこの国を制圧したんだけれど、なぜ喧嘩売ってきたのかわからなくてね。
聞いてみたら、東隣の古の王国から、魔大陸時代の魔道具兵器を譲って貰ったそうで、その見返りに、どれだけの効果があるのか検証しろと言われたそうだ」

「何そのバカみたいな話」

「うん、バカみたいだよね。
この国の国境に面しているのは、東に古のローランド王国、北と西にオズワルド帝国。そして南には、切り立った山脈の向こうに、海に面した小さな国と、島々の集落からなる共和国があるけど、まず山脈は越えられないから、国交はない。
となるとウチの国しかないってことになって、やってみたんだって」

「この国の人、いい人ばかりなのに酷いね」

「そうだね、国民はたまったもんじゃないね」

イアンは、グラスに残っていたワインをくいっと全部飲み干してから、惜しそうな顔でグラスを見ている。
おかわりしたければすればいいよ。

「同じのもう一つ。ジルヴァラは?」

「水でいい」

ぽっちゃり系女将さんを呼んで追加オーダー。

「それでね、帝国に攻めてきたのは、この国の王子の独断で、なんでも古の王国の王子と共謀してのことだって言うんだよ」

あのクズ王子。

「その辺の事情も聞きたかったんだけどね。残念ながら聞けなかったよ」

「北の帝国は、ローランド王国とも戦争しようとしてたの?」

「いや、ローランド王国の存在を確認してなかったからね。何の情報もないのに戦いを挑むような国は一瞬で滅びるよ。
まあ試しに、国境の森にいる魔獣を狩り立てて、東に向かうようにしてみたけれど」

やっぱりそういうことMPKだったの!
私それで修復とか結構たいへんだったんだけど!

「結局そのせいで古の王国がああいうことになったのかなと少し反省している」

んー、たぶんその分の魔獣は結界にぶつかって消滅してると思うから気にしなくて良いと思う。言わないけど。

「それにしても戦争して負けたのに、この国は混乱してないね?」

「うん、まあね。この国の王様が土下座して謝ってきたし、多額の賠償金も提示してきて、帝国の属国になるって言ってきたからね」

「ごめんなさいがちゃんと出来る王様なんだね」

「うん。えらいよね。
だから、この国の民の生活はそんなに変わらないはずだよ。
王族とか権力者はそうはいかないだろうけどね」

「そっかぁ」

そんな話だったのかぁ。

「それで、そろそろこの国から駐在する兵を残して帰国しようと思うんだ。
この国は、隣の古の王国から援助を受けて成り立っていたらしいから、古の王国が滅びた今となっては、国の運営も厳しくなる。帝国に戻って色々相談しないと」

「そっかぁ」

「これからはこの国も不安定になるだろうし、ジルヴァラが一人で暮していくのは厳しくなると思うんだ。
だから、一緒に帝国に行こう?
オズワルド帝国魔法学院にも通えるかもしれないよ?」

「ほんと?!行きたい!」

あ、でも、

「お金あんまりない」

「そこは奨学金制度とかあるよきっと。それに凄いポーション作れるんならなんとかなるんじゃない?」

「そかな?」

「まあ、相談には乗るよ」

「よろしくお願いします」

「うん。こちらこそよろしくね」

北の大帝国オズワルドに行くことになった。

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