運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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8 騎士一族と黒鉄編

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 と、いうような経緯やら何やらがあって、今、私はクラウドに質問されながら、試合場へと向かっている最中だった。

「見ての通りと言われてもな」

 クラウドは困っているようだ。

 それもそうか。
 入場してくるメンバーが全員、出場するとは限らないから。

「まぁ、後でのお楽しみってことで」

 私はその場をごまかす。

 その場しのぎなのは分かっていた。どうせ試合開始の挨拶の時に、出場メンバーだけが整列するんだ。先に知るか後に知るかの違いだけ。

「たっぷり焦らせておけばいいわ」

 フフフフフフ。

「(今回の返しは問題なさそうですね)」

「(そうか? お嬢の性格、悪くなってるだろ。マウンタ副官殿のせいじゃ)」

「(ですです。お嬢の性格、悪くなりましたよ)」

「(あれは、お茶目な性格っていうのよ)」

 明後日の方を向いてつぶやく私の周りから、様々なニグラートの声が聞こえてくるのだった。

 うん、ぜんぶ、私の悪口だよな。




 試合場に入り、出場メンバーの確認(主に第三騎士団の方)が終わり、ようやく、試合開始の礼。

 ざっざっざっざっ、と音を立てて、第三騎士団が移動してきた。

 先頭は、と思って眺めると、

 はぁ

 と、ため息をつきたくなった。

「サイラスのおっさんが出てきたな」

 グレイの指摘通り、先頭はヴァンフェルム団長。サイラスというのは、団長のファーストネームだ。

 出向中は気がつかなかったけど、入場通路でもグレイは名前の方で呼んでいたので、二人はそれなりに親しい間柄のよう。

 年齢はそれほど近くはないのに、と思って、はたと気づく。

 グレイ、数年間だったけれど、第一騎士団に所属してたんだったわ。

 遥かに年上のようにも感じるときもあるが、グレイは私の五つ上。学院を出て騎士になってまだ五年ほど。まだまだ若手と言われる年齢なんだった。

 そのグレイにも、当然、王宮騎士団での下積み時代はあって。
 私はその話を聞いていたからこそ、王宮騎士団で経験を積んでからニグラートに戻りたい、とお願いしたのだ。

 第一騎士団といえば、貴族出身の騎士が集まるところ。そこで、グレイもヴァンフェルム団長も切磋琢磨したんだろうな。

 私はグレイの横顔を眺めながら、新人時代のグレイを想像してほっこりした気分に浸っていると、グレイがまたもや指摘を始める。

「エヴァルトやウィルバーのヤツも出てきてるな」

「え? エヴァルト? ウィルバー?」

 首を傾げる私の前に並び始めたのは、ユースカペル副団長とケニス隊長だ。

 まさかのファーストネーム呼び捨て。

 私はグレイの袖をつまんで引っ張ると、第三騎士団の面々に背を向ける。なんだ?という顔で、私と同じように背を向けるグレイに私は話を切り出した。

「(ねぇ、グレイ。団長や副団長やケニス隊長とは知り合いなの? 親しい仲なの?)」

 私の質問の意図に首を捻りながら、グレイは答える。

「(シアより親密なヤツはいないぞ?)」

「(いや、その比較はいらないから。婚約者や結婚相手より親密な、しかも男性がいたら大問題だと思うんだけど)」

「(それはそうだな)」

 当然でしょうが。

「(あいつらは第一騎士団時代の同僚だ)」

 グレイは目を背後にちらっと向けると、そう答えた。うん、やっぱり。私の推察通りだ。

 ただ、気になることが。

「(先輩でしょ? あいつらとか呼び捨てとか、大丈夫なの?)」

 ユースカペル副団長もケニス隊長も、グレイより年上だろう。第一騎士団では先輩だっだたはずだ。

 私も、同期の同僚の他で、呼び捨てにしてるのは、魔塔の孤児院でいっしょだったオルドーくらい。後の人たちには、役名や敬称をつけて呼ぶようにしている。

「(むろんだ。あいつらは俺の部下だったから)」


 ゲホゲホッ


 どうしてそうなる?!

 むせて涙目になりながら、私はグレイに食ってかかった。

「(そんなわけないでしょ。グレイの部下が、グレイが辞めて数年で副団長とか隊長になるわけないわよ)」

「(第一騎士団で、特別チームみたいな物を組んだときがあってな。その時、俺がトップだったんだ)」


 グフッ


 思わず仰け反る。

「(だから、あの二人。俺が出向してた時、あまり俺に話しかけてこなかっただろ?)」

「(そう言われてみれば)」

 私もグレイの真似をして、背後に視線を向けた。

 出向したばかりの時の宴会的な場でも、カップを持ってやって長々と喋っていったのは、クストス隊長だけだ。
 団長も副団長もケニス隊長も、最初にささっと声をかけてきた後は、近寄ってこなかったし。

「(散々、こきつかってやったからな。それ以来、避けられてるな)」

 うん、何をやったのか具体的には分からないけど、かなりなことをやったのは確かだ。私はユースカペル副団長とケニス隊長のことを、少しだけ、かわいそうに思った。




 疑問も晴れたところで、身体を第三騎士団に向ける。体格のいいグレイの隣だ。貧相に見えないよう、ピシッと立った。

 グレイも第三騎士団の面々に相対する。

 ヴァンフェルム団長を先頭に、第三騎士団は私たちから少し離れて列になっていた。

 ここで、各チームのトップに、審判から最後の説明が行われる。

 団長とグレイが審判の人に身体を向けて話を聞くだけ。一部や二部なら体力回復の時間稼ぎになるのに、三部ともなるとこの行程が無駄に思えてくる。

 しかも、今回は時間短縮のため、三部はリーグ戦ではなくトーナメント。この部分も時間短縮してもらいたい。

 私が手持ち無沙汰でいると、前方から、ちくちくと視線が飛んできた。

 ふと、顔を向ける。


 バチッ


 目線があった。

 私の方を見ないようにしている副団長はともかくとして、ケニス隊長以下、全員が私をガン見してる。

 いや、そんなに眺められても。

 焦る私。落ち着け、私。

 深呼吸で鎮めていると、向こうからはヒソヒソと雑談をするような声が。

「まさかとは思っていたが、本当にあれだけなのかよ?!」

「おいおいおいおい、団長が言ってた最悪パターンか」

「いや、本気かよ。冗談だと言ってくれよ」

「どうやら、本当に冗談じゃなさそうだよな」

 顔を私に向けたまま、雑談しないで欲しいわ。しかもヒソヒソ声がデカい。こちらにまでバッチリ聞こえてくる。

 ちなみにフェリクス副隊長は「エルシア、俺と結、」と口にしたところで、両隣の騎士に口をふさがれていた。それ以降は、モゴモゴする音が聞こえてくるのみ。

「それじゃ、本当に例の作戦で行くのか」

 誰かが気になる発言をしたところで、

「第三騎士団側、静かにして並んでください。それでは準決勝を開始します」

 いつの間にかトップに対する説明が終わっていて、審判が開始の挨拶を促したのだった。
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