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8 騎士一族と黒鉄編
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私がグレイの戦いから目を離していた間に、何が起こったのか。それについては、クラヴィスが教えてくれた。
私の悲鳴を聞いて、ケルビウスの元から即座に戻ってきたクラヴィス。
今までいったいどこにいたのかというと、真正面の運営側席付近からグレイの戦いを見ていたらしい。
ケルビウスは賭の胴元というか、主催者側なので、いちおう、公平な試合が出来ているか監視する役割があるそうだ。
そこに、クラヴィスも付き合わされていたので、すべてを見ていた、ということのようだった。
《あのおばさん、極悪魔剣士が本気を出せないのが分かってたね》
という出だしで、クラヴィスが手短に語ってくれたところによると、まず、グレイと打ち合っていたのは、ヴェルフェルム団長だった。
そこに合わせて、交互に第一、第二隊、第三隊の隊長たちが打ち込んでいたと。
「《なんで、隊長ばかりが?》」
《それだけ剣の技量があるから、と考えたいところだけれどね》
と続いて出てきたのは、公私混同も甚だしい内容。
《全員がフェルムの関係者なんだよ、主》
なんですって?
フェルム侯爵の余計な発言のせいか。
私に、つまり、ニグラートに勝ったものが後継者云々という。
《剣の技量があるフェルム一族を集めて、極悪魔剣士と戦ってたってことか》
《そういうこと》
それでも、まとめて掛かったところで、グレイがやられるはずがない。
《あのおばさんが右から一撃を食らわせるのと同時に、もう一人が左から一撃を食らわせたんだ》
近衛騎士団との戦いの時に似ている。
《ところがだ。三人目がいたんだよ》
クラヴィスの声は真剣だった。
《同時に三人目が気配を消したまま、極悪魔剣士の左腕に撃ち込んだんだよ》
まるで、今もその現場を目の前にしているかのように。
つまりだ。
グレイが全力で戦うと出力過多になることを、ヴェルフェルム団長は気づいていた。
気づいていたからこそ、複数同時攻撃でグレイの出力調整の隙をついて、ダメージを与えたと。
相手に気がついていれば、相手の力に合わせて危なくない出力で返すグレイ。
ところが、相手に気がつかずに攻撃を受けたら?
《極悪魔剣士も、三人目を感知できなかっただろうから》
無論、返しが間に合わなくなる。
返しが間に合わなければ、もろに攻撃を食らう。
いくら、グレイが頑丈でも、不意打ちをもろに食らって無事なはずがない。
クラヴィスの話を聞いて、私は用意していた特大魔法陣を一瞬で、自陣の旗の防御用に切り替えた。《壁》を何重にもまとめて強固にする。これで私がそばにいなくても旗は安全だ。
旗をしっかり確認すると、私はグレイに向かって走り出した。
大変、グレイが大ケガをしている!
自陣の旗を守るため、旗を攻撃してきた騎士たちを壁で潰すのも、私は忘れることはなかった。
試合場の中央に駆け寄ると、そこでは戦いが続いていた。
「グレイ、グレイが死んじゃう」
《死ぬかよ、あのくらいで》
よくよく見ると血は出てなさそう。でも、グレイの顔は歪んでいた。苦しそう。きっと痛いんだ。凄く凄く痛いんだ。
目の前がじわっと滲む。泣いてる場合じゃないのに。
「グレイ、痛そう。グレイ、かわいそう」
《かわいそうは言い過ぎだよな》
《だよな。あれは痛い顔じゃなくて、まぁ、いいや、とにかく主。冷静にな。作戦通りいけよ》
作戦? 作戦てなんだっけ?
それよりグレイだ。大ケガをして死にそうなグレイを助けないと。
「ええ? 作戦? やだよ? グレイが死んじゃいそうなのに」
痛そうなグレイの顔を見ていると、私にも痛みがあるような気がしてきて、私は自分の左腕はさする。
《だから、あの極悪人があのくらいで死ぬかよ》
「グレイ、利き腕やられてるし!」
《あいつ、両利きだろ》
「だから、利き腕でしょ!」
グレイの周りではしつこいほどに、四人の騎士が張り付いていた。
いったい、誰なんだろう、気配を消してグレイに打ち込める騎士って。
見た感じ、誰も気配は消せていない。
不思議なことに、駆け寄ってきた私には誰も近寄らない。ああ、そうか。私自身も壁で囲っていたから、近づけないのか。
《僕の主は、おもしろいね》
《そんなに心配なら、主が代わりに殴りに行けばいいだろ》
無責任に会話する私の杖たちの言葉を聞いて、私はあることを閃いた。
「なるほど。その手があったか」
え?
私が殴る。グレイの代わりに殴る。
いい。とてもいい考えだ。
《主、ダメだろ。作戦あるだろ!》
《主、落ち着け。作戦は守らないと!》
心の中でニンマリする私に対して、杖たちが焦りの声をあげた。
「作戦?」
作戦通りなら、私は防御組だ。壁が私の武器となる。そうか、壁か。
「なるほど。その手もあったか」
グレイを壁で囲ったら、グレイは誰からも攻撃されなくなる。
主ーーーーー!
私の考えを分かってるのか、分かってないのか、杖たちの声が私の中で爆発した。
私の悲鳴を聞いて、ケルビウスの元から即座に戻ってきたクラヴィス。
今までいったいどこにいたのかというと、真正面の運営側席付近からグレイの戦いを見ていたらしい。
ケルビウスは賭の胴元というか、主催者側なので、いちおう、公平な試合が出来ているか監視する役割があるそうだ。
そこに、クラヴィスも付き合わされていたので、すべてを見ていた、ということのようだった。
《あのおばさん、極悪魔剣士が本気を出せないのが分かってたね》
という出だしで、クラヴィスが手短に語ってくれたところによると、まず、グレイと打ち合っていたのは、ヴェルフェルム団長だった。
そこに合わせて、交互に第一、第二隊、第三隊の隊長たちが打ち込んでいたと。
「《なんで、隊長ばかりが?》」
《それだけ剣の技量があるから、と考えたいところだけれどね》
と続いて出てきたのは、公私混同も甚だしい内容。
《全員がフェルムの関係者なんだよ、主》
なんですって?
フェルム侯爵の余計な発言のせいか。
私に、つまり、ニグラートに勝ったものが後継者云々という。
《剣の技量があるフェルム一族を集めて、極悪魔剣士と戦ってたってことか》
《そういうこと》
それでも、まとめて掛かったところで、グレイがやられるはずがない。
《あのおばさんが右から一撃を食らわせるのと同時に、もう一人が左から一撃を食らわせたんだ》
近衛騎士団との戦いの時に似ている。
《ところがだ。三人目がいたんだよ》
クラヴィスの声は真剣だった。
《同時に三人目が気配を消したまま、極悪魔剣士の左腕に撃ち込んだんだよ》
まるで、今もその現場を目の前にしているかのように。
つまりだ。
グレイが全力で戦うと出力過多になることを、ヴェルフェルム団長は気づいていた。
気づいていたからこそ、複数同時攻撃でグレイの出力調整の隙をついて、ダメージを与えたと。
相手に気がついていれば、相手の力に合わせて危なくない出力で返すグレイ。
ところが、相手に気がつかずに攻撃を受けたら?
《極悪魔剣士も、三人目を感知できなかっただろうから》
無論、返しが間に合わなくなる。
返しが間に合わなければ、もろに攻撃を食らう。
いくら、グレイが頑丈でも、不意打ちをもろに食らって無事なはずがない。
クラヴィスの話を聞いて、私は用意していた特大魔法陣を一瞬で、自陣の旗の防御用に切り替えた。《壁》を何重にもまとめて強固にする。これで私がそばにいなくても旗は安全だ。
旗をしっかり確認すると、私はグレイに向かって走り出した。
大変、グレイが大ケガをしている!
自陣の旗を守るため、旗を攻撃してきた騎士たちを壁で潰すのも、私は忘れることはなかった。
試合場の中央に駆け寄ると、そこでは戦いが続いていた。
「グレイ、グレイが死んじゃう」
《死ぬかよ、あのくらいで》
よくよく見ると血は出てなさそう。でも、グレイの顔は歪んでいた。苦しそう。きっと痛いんだ。凄く凄く痛いんだ。
目の前がじわっと滲む。泣いてる場合じゃないのに。
「グレイ、痛そう。グレイ、かわいそう」
《かわいそうは言い過ぎだよな》
《だよな。あれは痛い顔じゃなくて、まぁ、いいや、とにかく主。冷静にな。作戦通りいけよ》
作戦? 作戦てなんだっけ?
それよりグレイだ。大ケガをして死にそうなグレイを助けないと。
「ええ? 作戦? やだよ? グレイが死んじゃいそうなのに」
痛そうなグレイの顔を見ていると、私にも痛みがあるような気がしてきて、私は自分の左腕はさする。
《だから、あの極悪人があのくらいで死ぬかよ》
「グレイ、利き腕やられてるし!」
《あいつ、両利きだろ》
「だから、利き腕でしょ!」
グレイの周りではしつこいほどに、四人の騎士が張り付いていた。
いったい、誰なんだろう、気配を消してグレイに打ち込める騎士って。
見た感じ、誰も気配は消せていない。
不思議なことに、駆け寄ってきた私には誰も近寄らない。ああ、そうか。私自身も壁で囲っていたから、近づけないのか。
《僕の主は、おもしろいね》
《そんなに心配なら、主が代わりに殴りに行けばいいだろ》
無責任に会話する私の杖たちの言葉を聞いて、私はあることを閃いた。
「なるほど。その手があったか」
え?
私が殴る。グレイの代わりに殴る。
いい。とてもいい考えだ。
《主、ダメだろ。作戦あるだろ!》
《主、落ち着け。作戦は守らないと!》
心の中でニンマリする私に対して、杖たちが焦りの声をあげた。
「作戦?」
作戦通りなら、私は防御組だ。壁が私の武器となる。そうか、壁か。
「なるほど。その手もあったか」
グレイを壁で囲ったら、グレイは誰からも攻撃されなくなる。
主ーーーーー!
私の考えを分かってるのか、分かってないのか、杖たちの声が私の中で爆発した。
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