運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

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1 王女殿下の魔猫編

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 嫌な予感はすぐに現実となった。

「そういうわけで、すべてはルベラス君の頑張りにかかっているんです」

「なんで私?」

 けっきょく、面倒になった団長が「ダメ元で第三騎士団で突入してみようかなぁ」と言い出して、先頭を切る魔術師を誰にするかの話になって。
 今、私は、魔術師長のパシアヌス様、ユリンナ先輩、そして第三騎士団の魔術師のもう一人、魔塔孤児院の知り合いでもあるオルドー・フェルアス、この三人に囲まれていた。

「第三騎士団の魔術師で一番強いのは、ルベラス君ですから。私はルベラス君の足下にも及びません」

「魔術師長が卑屈にならないでほしい。頑張ればいけるはずです、パシアヌス様」

 だいたいこういうのはトップ魔術師が担当するものですよね?という目で、パシアヌス様を見ると、パシアヌス様はパシアヌス様で、小動物のようなつぶらな目をウルウルさせて、こちらを見つめ返す。

「ムチャを言わないでよ、エルシア。パッシーはもう年なんだから」

「…………。ダイモス君は口を開かなくていいですからね」

 ユリンナ先輩のあまりにも酷い言いように、温厚なパシアヌス様もさすがにへそを曲げた。

「あら酷いわ、パッシー。事実でしょ」

 ユリンナ先輩も発言を撤回するようなことはなく、パシアヌス様=高齢者扱い。まだ五十代だったはずだけどね。

 騎士の場合は体力の問題もある。騎士で五十代だと特別な場合を除いて一線には立たないけど、魔術師で五十代ならまだまだ現役。
 だから、パシアヌス様はまだまだ高齢者扱いされる年齢ではないのに。

 パシアヌス様がダメな場合でも、うちの騎士団にはまだ二人も魔術師がいた。

「ユリンナ先輩やオルドーも、いるじゃないですか」

「エルシアなら、絶対一人でやれる!」

「エルシアなら、絶対おもしろいことになるわ!」

「言動が絶対おかしい」

 どうにも、私を先頭にさせたがってるんだよね。

 それか、自分が先頭になりたくないのか。先頭になりたくない何かがあるのか。

「元凶というか原因は何なんですか? 団長も騎士のみんなも、アレとしか言わないんで、何がなんだか。
 先頭を引き受けるにしても、私も分かってないことが多いので、教えてください」

 私はやっと、言いたいことを言い切った。
 朝一からアレアレ言われて、私だって苛立っていたのだ。

 ささっと私から離れて、何事か相談し始める。

「どうする?」

「確かに原因が分からないことにはね」

「でも、ルベラス君の注意事項に引っかかるんですよ」

「「だよねー」」

 話し込んでいた三人が、突然、クルッと私の方を向いた。

「ルベラス君、落ち着いて話を聞くことは出来ますか?」

「エルシア、ぶち切れて暴れ回ったりしないか?」

「いっそのこと、エルシアが暴走すれば解決しそう」

「絶対しません」「さすがにしないって」

 おもしろがるユリンナ先輩を止める他の二人。

「なんで、私が暴れる前提?」

 私が暴れる前提から離れて。私だって理由もなく、そうそう簡単に暴れないから。

「話を聞かないことにはどうにもならないようだぞ、エルシア」

 ムスッとする私の隣から、聞き覚えのある声がするので、振り仰ぐと特徴ある赤茶色の髪に赤眼。クラウドだ。

 魔術師長たちに囲まれる際に、騎士たちとはちょっと離れたところに移動したので、クラウドともその時に離れたはずだったのに。

「あ? 俺がなんでここにいるかって?」

「うん」

「団長やクストス隊長に言われたんだ。エルシアが暴れないよう、落ち着かせろって」

「いやだから…………。みんなして、なんで私が暴れる前提かな?!」

 納得いかない。

「ともかく、アレの説明をするから。冷静に聞いて欲しいんですよ、ルベラス君」

 納得いかなくても、聞き出すにはある程度、妥協は必要だった。

「うん、なんか引っかかるけど。約束します」

「誓約してほしい」

 オルドーが約束ではなく《誓約》を求めてきた。誓約は言ってみれば、約束する魔法だ。口約束と違って、約束が破られることはない。

「その方が安全ですね、みんなが」

「チェッ、おもしろそうなのに」

 はぁ。

「わーかーりー、まーしーたー」

 面倒だけど、《誓約》くらいどうってことはない。私は右手の人差し指の指先に魔力を集め、くるっと回した。

 小さな小さな魔法陣が現れる。

 私はその魔法陣に右手の手のひらを当てて、宣言した。

「《エルシア・ルベラスはここに誓います、今この場で受けた説明を聞いて、意味なく暴れないことを》」

 クラウドは私の宣言を聞いて、ぽかんとしている。
 多少、魔力があるとはいってもクラウドは騎士。魔導騎士や魔剣士ほど魔法は扱えない。剣に魔力を込められる程度なので、魔術師の言葉を理解はできないから。

 ぽかんとするクラウドとは違って、言葉が理解できる三人は別の意味でぽかんとしていた。

「いやそれって、意味があれば暴れられるやつ」

 この《誓約》を使う場合は、うまーく言葉を選ぶものだからね。
 しかし、この念の入れようは絶対に何かがある。嫌な予感がまだ収まらない。

「よしっ」

「よし、じゃありませんよ。でもまぁ、説明しましょうか」

 ここに来てようやく、アレについてと今何が起きているのかの説明が始まった。
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