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3 王子殿下の魔剣編
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「え? 交流なんてありませんよ?」
「なんだい、それは」
私の返しに、意味が分からないとでも言うように、ヴァンフェルム団長がキョトンとする。
私に遅れてクラウドが口を開いた。
「それがですね、エルシアの代の魔術師コースは他の代とまったく交流がないんですよ、ヴァンフェルム団長」
ちょっと言い訳がましい言い方だけど、紛れもない事実だった。
「だから俺も騎士団に入るまで、エルシアのことはまったく知らなくて。噂すら聞いたことがありませんでした」
噂一つ立たないのは、まぁ、私が静かに学院生活を送っていたからなので、当然のこと。
私の代の魔術師コースは、私が首席でソニアラート・カエルレウス公爵令嬢が次席だった。
ソニアからは最初はライバル視されて、ギスギスしていたものだけれど、何かをキッカケにして、程良く付き合えるようになったんだよね。
もちろん、ソニアだけじゃない。最初は、私が黒髪の魔術師だからと、バカにしたり蔑んだりする人たちばかりだった。
それも、ある日を境にパタッとなくなったのだ。
黒髪だからと差別する目がなかったので、意外と、学院生活は良いものになったし、私も穏やかに勉強ができたと思う。
その素敵な学院時代に対して、ヴァンフェルム団長はあからさまに不審な目を向けてきた。
「交流がない代なんて滅多にないよ? ルベラス君、君、学院で何かやらかしたんだろう?」
いや、だから。
そもそもな話、私が他の代と交流がないんじゃなくて、私の代の魔術師コース全体が他の代と交流がないってことなのに。どうして、私個人の話になるわけ?
私が困っていると、「そういえば」とパシアヌス様がパチンと手を叩いた。何かを思い出したようだ。
団長の言いがかりを押しのけてくれるのを期待して、私はパシアヌス様の次の言葉を待つ。
結果、
「ルベラス君の代の魔術師コースは、他の代から隔離されていたと聞きました。危険なので」
「「危険?!」」
私とパシアヌス様以外全員の声が揃う。
物騒な言葉が混じって、余計に『何かやらかした疑惑』が深まる羽目になった。
「え、そういう理由?」
「そんな理由あるのか?」
クラウドとクストス隊長が同時に私を見るけど、預かり知らぬ話だって。
ヴァンフェルム団長に至っては、
「ルベラス君、何をやったんだい?」
と、私が何かやった前提で質問してくるのはやめて欲しい。
「何もやるわけないじゃないですか」
「教室を破壊したとか、実験室を破壊したとか、演習場を破壊したとか」
「するわけがないでしょう」
だから、破壊した前提で質問してくるのはやめて欲しい。
「だって君。三聖の展示室とか第二の演習場とか、いろいろ破壊しているだろう?」
うっ。耳が痛い。
「ぜんぶ直したじゃないですか」
痛む耳を無視して言い返すと、ついつい口が尖る。
いや、そのへん、壊したのは事実だけどね。なんでもかんでも壊す人のように言わないで欲しいわ。
「それに、私、魔力コントロールには自信があるんです。保護者にビシバシ鍛えられましたからね」
えへんと胸を張る私。
なのに、未だに疑わしい視線を向けてくる、ヴァンフェルム団長。
「でも、おかしいじゃないか。ルベラス君の代だけ隔離されてるなんて。ルベラス君以外にやらかす人なんていないだろう?」
うん、私の扱い。私の扱いが酷い。
「そんなこと言われても、心当たりなんてまっっっったく、ありませんから!」
「そうかなぁ」
「団長もしつこいですね」
「いや、だってなぁ」
ヴァンフェルム団長は引き下がらない。
「普通、首席以下のトップクラスは、他の代や他のコースと交流を深めるものなんだよなぁ。そういった人脈も財産になるわけだから。
それをまったくやらせないって、何かとんでもない事件が起きたと考えるのが、普通じゃないかい?」
ヴァンフェルム団長の言い分も、理にかなっているような気もする。
とはいえ、私は何もやってないのに、あれこれ責められるのは筋違いという物。私はヴァンフェルム団長の言葉をキッパリと否定する。
「そんなこと言われたって」
見に覚えのないことを騒ぎ立てられて、嫌な気分になった。
あーあ。
冤罪って、きっとこうやって起きてくる物なんだね。
私がため息をついていると、ソファーに座る私の隣から、呆れたような声が聞こえてきた。
「やっただろ、主」
声を上げたのは私の杖、セラフィアスだ。いつの間にか、人型に顕現していて、ちょこんと座っている。
冤罪をかけられて、無意識にセラフィアスを呼び出してしまったようだ。
ところが、セラフィアスも私の味方ではないようで、身に覚えのないことを言ってくる。
「主、忘れたのかよ。やっただろ、『あの時』だよ、『あの時』」
セラフィアスにつつかれたものの、『あの時』がどの時なのか、よく分からない。
私は首を傾げる。
「あの時?」
そのとき、ふっと、過去が私の頭の中に広がった。
「あ」
頭の中の過去に私は目を留める。
「そういえば、『あの時』…………」
私はようやく『あの時』を思い出した。
「なんだい、それは」
私の返しに、意味が分からないとでも言うように、ヴァンフェルム団長がキョトンとする。
私に遅れてクラウドが口を開いた。
「それがですね、エルシアの代の魔術師コースは他の代とまったく交流がないんですよ、ヴァンフェルム団長」
ちょっと言い訳がましい言い方だけど、紛れもない事実だった。
「だから俺も騎士団に入るまで、エルシアのことはまったく知らなくて。噂すら聞いたことがありませんでした」
噂一つ立たないのは、まぁ、私が静かに学院生活を送っていたからなので、当然のこと。
私の代の魔術師コースは、私が首席でソニアラート・カエルレウス公爵令嬢が次席だった。
ソニアからは最初はライバル視されて、ギスギスしていたものだけれど、何かをキッカケにして、程良く付き合えるようになったんだよね。
もちろん、ソニアだけじゃない。最初は、私が黒髪の魔術師だからと、バカにしたり蔑んだりする人たちばかりだった。
それも、ある日を境にパタッとなくなったのだ。
黒髪だからと差別する目がなかったので、意外と、学院生活は良いものになったし、私も穏やかに勉強ができたと思う。
その素敵な学院時代に対して、ヴァンフェルム団長はあからさまに不審な目を向けてきた。
「交流がない代なんて滅多にないよ? ルベラス君、君、学院で何かやらかしたんだろう?」
いや、だから。
そもそもな話、私が他の代と交流がないんじゃなくて、私の代の魔術師コース全体が他の代と交流がないってことなのに。どうして、私個人の話になるわけ?
私が困っていると、「そういえば」とパシアヌス様がパチンと手を叩いた。何かを思い出したようだ。
団長の言いがかりを押しのけてくれるのを期待して、私はパシアヌス様の次の言葉を待つ。
結果、
「ルベラス君の代の魔術師コースは、他の代から隔離されていたと聞きました。危険なので」
「「危険?!」」
私とパシアヌス様以外全員の声が揃う。
物騒な言葉が混じって、余計に『何かやらかした疑惑』が深まる羽目になった。
「え、そういう理由?」
「そんな理由あるのか?」
クラウドとクストス隊長が同時に私を見るけど、預かり知らぬ話だって。
ヴァンフェルム団長に至っては、
「ルベラス君、何をやったんだい?」
と、私が何かやった前提で質問してくるのはやめて欲しい。
「何もやるわけないじゃないですか」
「教室を破壊したとか、実験室を破壊したとか、演習場を破壊したとか」
「するわけがないでしょう」
だから、破壊した前提で質問してくるのはやめて欲しい。
「だって君。三聖の展示室とか第二の演習場とか、いろいろ破壊しているだろう?」
うっ。耳が痛い。
「ぜんぶ直したじゃないですか」
痛む耳を無視して言い返すと、ついつい口が尖る。
いや、そのへん、壊したのは事実だけどね。なんでもかんでも壊す人のように言わないで欲しいわ。
「それに、私、魔力コントロールには自信があるんです。保護者にビシバシ鍛えられましたからね」
えへんと胸を張る私。
なのに、未だに疑わしい視線を向けてくる、ヴァンフェルム団長。
「でも、おかしいじゃないか。ルベラス君の代だけ隔離されてるなんて。ルベラス君以外にやらかす人なんていないだろう?」
うん、私の扱い。私の扱いが酷い。
「そんなこと言われても、心当たりなんてまっっっったく、ありませんから!」
「そうかなぁ」
「団長もしつこいですね」
「いや、だってなぁ」
ヴァンフェルム団長は引き下がらない。
「普通、首席以下のトップクラスは、他の代や他のコースと交流を深めるものなんだよなぁ。そういった人脈も財産になるわけだから。
それをまったくやらせないって、何かとんでもない事件が起きたと考えるのが、普通じゃないかい?」
ヴァンフェルム団長の言い分も、理にかなっているような気もする。
とはいえ、私は何もやってないのに、あれこれ責められるのは筋違いという物。私はヴァンフェルム団長の言葉をキッパリと否定する。
「そんなこと言われたって」
見に覚えのないことを騒ぎ立てられて、嫌な気分になった。
あーあ。
冤罪って、きっとこうやって起きてくる物なんだね。
私がため息をついていると、ソファーに座る私の隣から、呆れたような声が聞こえてきた。
「やっただろ、主」
声を上げたのは私の杖、セラフィアスだ。いつの間にか、人型に顕現していて、ちょこんと座っている。
冤罪をかけられて、無意識にセラフィアスを呼び出してしまったようだ。
ところが、セラフィアスも私の味方ではないようで、身に覚えのないことを言ってくる。
「主、忘れたのかよ。やっただろ、『あの時』だよ、『あの時』」
セラフィアスにつつかれたものの、『あの時』がどの時なのか、よく分からない。
私は首を傾げる。
「あの時?」
そのとき、ふっと、過去が私の頭の中に広がった。
「あ」
頭の中の過去に私は目を留める。
「そういえば、『あの時』…………」
私はようやく『あの時』を思い出した。
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