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3 王子殿下の魔剣編
6-0 終わり
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剣術大会が無事に終わり、私も久しぶりに第五隊の隊長室に戻ってきた。
「なぁ、エルシア」
「何? 口を動かしてないで手を動かさないと、終業までに終わらないわよ」
もちろん、溜まりに溜まった書類整理をするためだ。お喋りする暇なんてどこにもない。
なのに、久しぶりのせいか、何かと話しかけてくるクラウド。相手をするのも面倒だ。
「お前、なんで、祝勝パーティーを休んだんだ?」
しかも話題は剣術大会の祝勝パーティーのこと。うん、やっぱり面倒だ。
「休んでないわよ」
クラウドの質問に顔を上げず、書類を睨みつけながら答える。
「え? いや、だって」
「休暇届が出てたよな?」
口ごもるクラウドに代わって、クストス隊長まで聞いてきた。面倒すぎる。
「クストス隊長も、書類がなくなりませんよ?」
さらっと質問を無視する私に対して、クストス隊長の方が上手だった。
「エルシアの行方が気になって、書類が頭に入らない。また、どこかで反省文を増やしたんじゃないかと思うと、胃が…………」
頭とみぞおちを同時に押さえるクストス隊長。そう来たか。こうなると、クストス隊長は果てしなく面倒くさい。
「どうしてそうなるんですか?! そうです、休暇届、出しましたよ!」
「やっぱり休んだんだろ?」
私の返事を聞いて、クラウドが元気に絡んできた。クストス隊長の方も頭とみぞおちを押さえるのをさっさと止めて、私の方を見ているし。
まったく、どうしてこんなに面倒くさい人たちなんだろう。
おまけに口うるさいし。はぁ。
「第三騎士団は休みましたけど。剣術大会には行きましたよ? 応援しましたし、掛けでたくさん儲かりましたし、祝勝パーティーも参加しましたよ?」
事実だ。間違いなく事実だ。私は事実だけを口にしている。
それなのに疑わしい目を向ける二人。
「それなら、別に休暇届を出さなくても」
「第三騎士団じゃなくて、後援家門のほうにいましたから」
「「え?!」」
ビクッとして動きを止める二人。
そんなに驚くことだろうか。
「エルシアの後援家門、出てたのか」
「出てました」
「それで後援家門の騎士団といっしょにいたと」
「その通りです」
「それより、第三騎士団より後援家門を優先させていいのか?」
「そういう約束だそうです」
矢継ぎ早に質問され、聞くことがなくなったのか急に黙り込んだ。
「そういえば、祝勝パーティーは保護者と参加するって言ってたな」
クラウド、やっと思い出したか。
「そういえば、エルシアの保護者にフェリクスを紹介したのか?」
クストス隊長の方は何を考えてるのか、変なことを聞いてきた。
「はぁ? なんで、フェリクス副隊長を紹介しないといけないんですか?」
「いや、食堂でそう話してたって、みんなが言ってたが…………」
話したことは話したけど。
「あー、パーティーで会えたら紹介するとは言いましたけど。会えなかったので」
「「…………………………。」」
正直に答えると、再び、急に黙り込む二人。
「なんですか?」
「いや、フェリクスのヤツ、かわいそうだなぁと思ってな」
「そこは、フェリクスを探してやるのが普通だろ」
まぁ、普通はそうなんだろうけどね。
なんとなく、私の保護者とフェリクス副隊長を会わせてはいけないような、そんな気がしたんだよね。
私の保護者は、自分より若い騎士には厳しい人だったし。
フェリクス副隊長の方は、保護者=父親代わりのようなイメージを持っていて、何か誤解しているようだったし。
この二人を普通に引き合わせたら、何かがいけない、そんな予感があったから。
そのうえ、予想以上に人が多くて、歩きにくくて。面倒だったから。
「人、多かったし。面倒だったし」
正直に答えると、三度、急に黙り込む二人。そして何かに納得したように二人で頷き合う。
「エルシアなら、そう来るよな」
「フェリクスが不憫すぎる」
いったい何なの、この人たち。
「あのー、私の分の書類整理終わったんでー、帰らせてもらいますねー」
頷き合ってる二人を残して、私は定時で仕事を終わりにしたのだった。
と、いう感じで終わるはずだったのに。
バタン!
「エルシア! 大変よぅ!」
派手な音を立てて、クストス隊長の部屋に転がり込んできたのは、ユリンナ先輩だった。
何がなんだか分からないけど、もの凄く慌てている。
ユリンナ先輩とは剣術大会の間、会うこともなくて、二日ぶりだ。
ユリンナ先輩だけではない。
剣術大会では、私は第三騎士団から離れていたので、パシアヌス様やオルドーたちとも会っていなかった。
まさか、魔術師関係のことで、何かあったんじゃないよね?
残念ながら、何事かの心当たりもまったくないので、気になっていたことを呑気に尋ねてみた。
「あ、ユリンナ先輩。金章もらえたんですか?」
一番成績がいい人のパートナーになるって言ってたユリンナ先輩。最終的に誰と祝勝パーティーに参加したんだろうか。気になるよねぇ。
「そーれーがーねー、じゃなくて! 大変なのよぅ! 団長から呼び出しがあったのよぅ!」
ユリンナ先輩は、私の話には乗らず、大変を繰り返すだけ。
「えー、帰りたいのにー」
また、ヴァンフェルム団長絡みか。
はぁ。
私は早々に諦めることにした。
ヴァンフェルム団長絡みなら、ろくな話じゃない。いつもいつも、簡単な仕事だなんだと言っておいて、簡単だったためしがないから。
先日起きた『伝説の魔剣』の話も、けっきょくはうやむやになって。
祝勝パーティーでも、カス王子とカス大公子が(ただの)魔剣を得た話も出て。
カス大公子の家族が総出で盛り上がっていたっけ。
伝説の魔剣の話の収拾をつけるため、わざとカス王子とカス大公子の魔剣を話題にしたのでは?
まぁ、私には関係ないけど。
「エルシア、さっさと、団長のところへ行くわよぅ!」
私はユリンナ先輩の大声で、現実に引き戻される。
「えー、帰りたかったのにー」
まぁ、文句を言ってても仕方ないか。
慌てるユリンナ先輩に急かされて、私は団長のところに向かうのだった。意外な話が待っているとも思わずに。
「なぁ、エルシア」
「何? 口を動かしてないで手を動かさないと、終業までに終わらないわよ」
もちろん、溜まりに溜まった書類整理をするためだ。お喋りする暇なんてどこにもない。
なのに、久しぶりのせいか、何かと話しかけてくるクラウド。相手をするのも面倒だ。
「お前、なんで、祝勝パーティーを休んだんだ?」
しかも話題は剣術大会の祝勝パーティーのこと。うん、やっぱり面倒だ。
「休んでないわよ」
クラウドの質問に顔を上げず、書類を睨みつけながら答える。
「え? いや、だって」
「休暇届が出てたよな?」
口ごもるクラウドに代わって、クストス隊長まで聞いてきた。面倒すぎる。
「クストス隊長も、書類がなくなりませんよ?」
さらっと質問を無視する私に対して、クストス隊長の方が上手だった。
「エルシアの行方が気になって、書類が頭に入らない。また、どこかで反省文を増やしたんじゃないかと思うと、胃が…………」
頭とみぞおちを同時に押さえるクストス隊長。そう来たか。こうなると、クストス隊長は果てしなく面倒くさい。
「どうしてそうなるんですか?! そうです、休暇届、出しましたよ!」
「やっぱり休んだんだろ?」
私の返事を聞いて、クラウドが元気に絡んできた。クストス隊長の方も頭とみぞおちを押さえるのをさっさと止めて、私の方を見ているし。
まったく、どうしてこんなに面倒くさい人たちなんだろう。
おまけに口うるさいし。はぁ。
「第三騎士団は休みましたけど。剣術大会には行きましたよ? 応援しましたし、掛けでたくさん儲かりましたし、祝勝パーティーも参加しましたよ?」
事実だ。間違いなく事実だ。私は事実だけを口にしている。
それなのに疑わしい目を向ける二人。
「それなら、別に休暇届を出さなくても」
「第三騎士団じゃなくて、後援家門のほうにいましたから」
「「え?!」」
ビクッとして動きを止める二人。
そんなに驚くことだろうか。
「エルシアの後援家門、出てたのか」
「出てました」
「それで後援家門の騎士団といっしょにいたと」
「その通りです」
「それより、第三騎士団より後援家門を優先させていいのか?」
「そういう約束だそうです」
矢継ぎ早に質問され、聞くことがなくなったのか急に黙り込んだ。
「そういえば、祝勝パーティーは保護者と参加するって言ってたな」
クラウド、やっと思い出したか。
「そういえば、エルシアの保護者にフェリクスを紹介したのか?」
クストス隊長の方は何を考えてるのか、変なことを聞いてきた。
「はぁ? なんで、フェリクス副隊長を紹介しないといけないんですか?」
「いや、食堂でそう話してたって、みんなが言ってたが…………」
話したことは話したけど。
「あー、パーティーで会えたら紹介するとは言いましたけど。会えなかったので」
「「…………………………。」」
正直に答えると、再び、急に黙り込む二人。
「なんですか?」
「いや、フェリクスのヤツ、かわいそうだなぁと思ってな」
「そこは、フェリクスを探してやるのが普通だろ」
まぁ、普通はそうなんだろうけどね。
なんとなく、私の保護者とフェリクス副隊長を会わせてはいけないような、そんな気がしたんだよね。
私の保護者は、自分より若い騎士には厳しい人だったし。
フェリクス副隊長の方は、保護者=父親代わりのようなイメージを持っていて、何か誤解しているようだったし。
この二人を普通に引き合わせたら、何かがいけない、そんな予感があったから。
そのうえ、予想以上に人が多くて、歩きにくくて。面倒だったから。
「人、多かったし。面倒だったし」
正直に答えると、三度、急に黙り込む二人。そして何かに納得したように二人で頷き合う。
「エルシアなら、そう来るよな」
「フェリクスが不憫すぎる」
いったい何なの、この人たち。
「あのー、私の分の書類整理終わったんでー、帰らせてもらいますねー」
頷き合ってる二人を残して、私は定時で仕事を終わりにしたのだった。
と、いう感じで終わるはずだったのに。
バタン!
「エルシア! 大変よぅ!」
派手な音を立てて、クストス隊長の部屋に転がり込んできたのは、ユリンナ先輩だった。
何がなんだか分からないけど、もの凄く慌てている。
ユリンナ先輩とは剣術大会の間、会うこともなくて、二日ぶりだ。
ユリンナ先輩だけではない。
剣術大会では、私は第三騎士団から離れていたので、パシアヌス様やオルドーたちとも会っていなかった。
まさか、魔術師関係のことで、何かあったんじゃないよね?
残念ながら、何事かの心当たりもまったくないので、気になっていたことを呑気に尋ねてみた。
「あ、ユリンナ先輩。金章もらえたんですか?」
一番成績がいい人のパートナーになるって言ってたユリンナ先輩。最終的に誰と祝勝パーティーに参加したんだろうか。気になるよねぇ。
「そーれーがーねー、じゃなくて! 大変なのよぅ! 団長から呼び出しがあったのよぅ!」
ユリンナ先輩は、私の話には乗らず、大変を繰り返すだけ。
「えー、帰りたいのにー」
また、ヴァンフェルム団長絡みか。
はぁ。
私は早々に諦めることにした。
ヴァンフェルム団長絡みなら、ろくな話じゃない。いつもいつも、簡単な仕事だなんだと言っておいて、簡単だったためしがないから。
先日起きた『伝説の魔剣』の話も、けっきょくはうやむやになって。
祝勝パーティーでも、カス王子とカス大公子が(ただの)魔剣を得た話も出て。
カス大公子の家族が総出で盛り上がっていたっけ。
伝説の魔剣の話の収拾をつけるため、わざとカス王子とカス大公子の魔剣を話題にしたのでは?
まぁ、私には関係ないけど。
「エルシア、さっさと、団長のところへ行くわよぅ!」
私はユリンナ先輩の大声で、現実に引き戻される。
「えー、帰りたかったのにー」
まぁ、文句を言ってても仕方ないか。
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