運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

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4 聖魔術師の幻影編

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 ダイアナ嬢に都合のいいように改竄された話は、意味もなく続いた。

 とそこで、ポンと陛下が手を打つ。

「それで、金冠の主となったのか。それは素晴らしいな」

 いや、グリプス伯が主が見つからずに、眠りについたって言ったよね。

 目が合った。陛下と。

 目があったままニヤリと笑う陛下。

 あー、これは分かっててやってるヤツか。

 グリプス伯を窺うと、グリプス伯も小さく頷く。

 だよね。

 グリプス伯が先に報告書を送って、後から王城に行く。そして報告書に目を通し終わった陛下が私たちの前に現れて、私たちの話を聞いていると。

 いったい、これは何のパフォーマンスなんだろ。形式か。

 出発するときも一応、王太子殿下が見送りに来てた。帰ってきたときは報告書だけで終わりにはせず、こうやって成果を聞いて、陛下自らねぎらうんだ。

 非効率的なようだけど、国王陛下自ら話を聞いてくれて、労ってくれるとなると、こちらも悪い気はしない。ありがたく思えてくる。

 でも。

 成果を分かってて尋ねてくるのは、少し、意地が悪いような気もする。

 陛下の賛辞に、ダイアナ嬢は首を静かに横に振った。

「そのことですが、金冠の主は新リテラ王国に留まらないとなりません」

「まぁ、そういうことになるな」

「わたくしがグラディア王国を離れることになっては、王宮魔術師団にとって、いえ、この国にとって大きな痛手。
 ですので、残念ながら主にならずに、涙を飲んで、グラディア王国に戻って参りました」

 細かいところはだいぶ違うけど。結果はおおよそ正しい内容。

 陛下は何かに満足したように、うむと頷いてみせた。もしかして。これは、何かの試験なのかもしれない。陛下の様子を見ていると、そんな印象を受ける。

 そこへ、挙手をして勝手に喋り始めるフォセル嬢。

「え、そういう話では、もご」

 リュリュ先輩がうまーく口を塞ぐ。

「(ダメよー 合わせてあげないとー)」

「(でも、違いますよね?)」

「(物は言いようですわね)」

「(でも)」

 細かい違いに納得出来なかったのか、不満げな顔をするフォセル嬢。
 リュリュ先輩だけでなく、ソニアも声をかけるも、フォセル嬢は納得が出来ない様子だった。何かいいたげに、口を尖らせる。

「(いろいろ痛いなぁ)」

 ここで細かい違いを指摘すれば、ダイアナ嬢の立場がなくなる。

 報告書で詳細がすでに伝わっているのであれば、細かい違いには目をつぶって、やり過ごすのが正解だと、私はそう思っている。

 何が正解なのか、人によって考え方は違うとは思うので、あながちフォセル嬢の考え方がいけないとまでは思わない。
 フォセル嬢のやり方の方が、上手くいく場合だってあるのだから。

 ともあれ、ここはフォセル嬢が何か行動するのではなく、国王陛下に任せるのが一番だろう。

 そのため、私は心の目をつぶった。

 陛下はというと、すべて分かってるような表情で、穏やかに話を続ける。

「なるほど、なるほど。それは難儀だったろう」

「いえ、それほどでも」

「謙虚な姿勢も素晴らしいな。そうだ、場所を移して、茶でも飲んでいくと良い。用事がある者は参加せずとも構わぬ」

「まぁ、わたくしのためにありがとうございます、陛下」

 これでこの場での話は終わりになる、はずだった。




 急にバタバタと音がしたかと思ったら、侍従が慌てて入室し、陛下に耳打ちをする。

「陛下、至急の件が」

「何? それはマズいな」

 私たちの目の前で話をするとは、どうやら本当に急な話であるらしい。しかも、かなりマズそうな。

 場の雰囲気が分かってないのか、ダイアナ嬢が先ほどの続きのように、陛下に尋ねる。

「どうかされましたか?」

「あぁ、王宮魔術師団の方から報告があってな」

 穏やかな顔のまま、質問に答える陛下。

 ダイアナ嬢が失礼にも先に話しかけているのに、陛下はあまり気にしておらず、普通に答える。

 侍従たちもいつものことなのか、陛下に勝手に話しかけたダイアナ嬢に対しても、気さくに返事をする陛下に対しても、気にしていない様子だった。

 それにしても気になるのは、陛下が途中まで話しかけた内容。

「まぁ」

 王宮魔術師団と聞いて、ダイアナ嬢が声をあげた。

 王宮魔術師団といえば、ダイアナ嬢が所属する組織。
 立て続けに二度もトラブルを起こしているので、あまり関わりたくない。

 陛下が何か話そうと口を開いた、まさにその瞬間。

 広い応接間の扉が無造作に開かれた。
 ひょいっというような感じに。

 そこに現れたのは見たくない顔。

「やぁやぁ、お帰り。僕も金冠の話を聞こうかと思ってね」

「我が主、陛下の御前です」

 そして聞きたくない声。

 あれだけ殴ってケガをさせたはずなのに、もう動けるようになったのか。もう少し殴っておけば良かったかな。

 応接間に勝手に入ってきたのは、私がこの世で一番会いたくない相手、私の実父、クズ男その人だった。
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