運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

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5 覆面作家と水精編

3-11 取材なんだけどね!

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 あたしは今日もまたまた小説のネタを探してさまよっていた。

 て、ことに今日もなるはずだったのに。

 第三騎士団に足を踏み入れるや否や、イケメン! イケメンに遭遇! しかもイケメンが二人! やったわ! ついてるわ!

 あたしはあたしの『イケメン運』が急上昇するのをヒシヒシと感じた。

 あたしのイケメンたちは、あたしのちょっと先で何か話をしている。

「クラウド、三聖の展示室で一騒動起きたようだな」

「なんで、兄貴がこんなところに?」

「王女殿下に命じられて、三聖の展示室で起きた騒動の情報収集にあたっている」

「はぁあ? なんだよ、それ」

「何が起きた? 三聖の展示室以外に研修部でも騒動が起きたと聞いたが。ルベラス嬢が何かやったのか?」

 あたしはそーっとイケメンに近寄り、耳を立てた。

「て、あれはイケメン男主人公!」

 やったわ、あたし!

 またもや、あたしは例のイケメン男主人公に遭遇した。連日、会えるなんて、ついてるとしか言いようがなかった。

 近くに寄るとイケメンのイケメンらしさがより鮮明になる。

 イケメン男主人公は、赤みがかった茶髪に赤眼。魔力も少しありそうだから、うまく鍛えれば炎属性系の魔剣士になりそうな感じ。筋肉も良い付き方をしている。

 もう片方のイケメンは、黒みがかった褐色の髪に赤眼。魔力はあるけど、出して使う系ではなさそう。溜めて回して使う系かしら?
 見るからにバランスの良い体格をしていて、剣の腕前はイケメン男主人公よりも、勝っていそうだった。

 背の高さは同じくらいで、姿勢というか、身体の動かし方というか、どことなく似通っている。同じく騎士だからかしらねぇ。

 あたしはジリジリとイケメンに近づく。

 さらに近づいて観察してみると、イケメンたちの様子がおかしい。

 かたや深刻な顔をするイケメン主人公。少し渋みが加わっている。そんな渋みが加わるような年じゃないのに。

 もう一人のイケメンも深刻な顔だった。こっちは爽やかな容貌にちょっと陰りを加えたように見える。そこらへんのご令嬢がキャーキャー言いそうだわ。まったく。

 イケメンは深刻な顔も美味しいわねぇ。

 て、顔ばかり観察している場合じゃなかったわ。

 イケメン男主人公が何か説明してる。

「今日はミライラの業務チェックの日だったんだ。団長や研修部の見学会が終わった次の回に、三聖の展示室が突然、水浸しになって。三回目は中止だよ」


 ゴホゴホゴホゴホ。


 今、聞いてはいけない話が聞こえちゃったかも。

 聞いてはいけないと知りつつ、あたしの耳はイケメンたちの話に集中した。

 三聖の展示室ってあれよ。あれよねぇ。あそこが荒れるってことは、力のある魔導具が何かの拍子に目覚めちゃって、力を持て余したり、主候補に無駄にアピールしようとしてたりするヤツだわ。

 そんなことが、あたしが新作の準備をしているタイミングで起きることに、運命のような物を感じた。ビンビンに感じた。

 イケメン男主人公の説明に、なぜか、もう一人のイケメンは別の人物の名前を持ち出してくる。

「ルベラス嬢も訪れてたのか?」

 イケメン男主人公は新たに出てきた人物の名前を聞いても、何一つ、不思議がりもせず説明を続ける。

「いいや、エルシアは研修部に呼ばれたとかで、業務チェックにはいなかった。それに、業務チェックの回にはなんともなかったんだよ」

 ふーんと腕組みをするもう片方のイケメン。

 ルベラス嬢と聞かれて、エルシアと答えるところから、エルシア・ルベラスという名前なのだという所までたどり着く。

「それで、兄貴は気になることでも?」

「王女殿下の杖、リグヌム殿が三聖の展示室で魔力の動きを感知して。それで俺が」

 この後の話は周りを気にしてかヒソヒソ声。

「ああ~ん。二人の声がぁ、聞こえないわ~ 何を話してるのかしら~」

 と、ここであたしは二人とも似たような顔をしていることに、いまさらながら気がついた。

 それに、

「兄貴? てことは!」

 つーまーりー

 イケメン男主人公とその兄ね!

 あたしはガサガサとあたしのメモを確認する。

「あったあったあった。あったわよ、メモに書いてあったわ。女主人公候補が言ってたわ。イケメン男主人公の好きな女性に、イケメン男主人公の兄が思いを寄せてるって!」

 てことはよ?

 二人の会話に出てくるエルシア・ルベラスってのが、恋い慕う女性のフルネームなんだわ!

 フルネームまで行き着けば、探すのは簡単な話。女主人公、男主人公、男主人公の兄、男主人公とその兄が慕う女性、登場人物もこのくらい揃えばいいかしらね。

 後は残りの人物を取材して、一気にががががっと書き上げて終了!

 過去二作も男主人公たちはイケメンだったけれど、今回はイケてる筋肉を持つイケメン。あたし好みの。むふふふふふ。

「もう行く。俺、これから報告書を書くようだし」

「水浸しは災難だったな。それじゃあ」

 おおっと。

 あたしが一人で興奮して身悶えているうちに、二人の会話は終わってしまった。

「て、ゆっくりしてる場合じゃないわ! イケメン男主人公の兄を追いかけるわよ!」

 取材をしないと、取材!

 あたしは慌ててイケメン男主人公の兄を追いかけたのだった。
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