運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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6 辺境伯領の噴出編

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「しっかし、感動しました!」

 お昼が終わって、食堂から団長室へ向かうまでの道すがら、バルザード卿はデカい声でまくしたてていた。

「お嬢が北で生きてくことを、本気で考えてくれてるなんて。北の人間としては嬉しいかぎりですよ」

「当然でしょ、グレイの同志なんだから」

 変なこと言うなーと思いながら、私はバルザード卿のお喋りを聞く。

「俺は北で生まれて北で育ったんです。そして、北で戦い北で死んでいくんだと思っています」

 あれ?

 軽いお喋りのはずが、なんだか内容が重くなってきた。

「隊長はニグラードの血筋ですが生まれは違いますし、お嬢は生まれも育ちも王都ですよね?」

「まぁ、そうだけど」

 バルザード卿にそう答えながら、私はグレイの血筋とやらを少し思い出していた。




 グレイの祖母は、前ニグラード辺境伯の姉に当たる。私の血縁上の祖母、ルベル公爵夫人とは大親友だったそうで。

 そんな関係だったこともあり、お互いの子どもを婚約させる運びになったらしい。

 そして、私のお母さまのことも相当気に入っていて、二人の結婚をとても楽しみにしていたんだそうな。

 それなのに。

 蓋を開けてみたら、自分の息子は前代未聞の婚約破棄騒動を引き起こし、グレイの祖母はお母さまのことを深く傷つけてしまったと、とても後悔されていた。

 と、いう話は、北部辺境伯領で直接、グレイの祖母から直接、聞いたんだけどね。

 うん?

 グレイの祖母、つまりおばあさまには会ったことがあるのかって?

 そりゃあ、もちろん。

 だって、グレイのおばあさまは、息子の婚約破棄騒動に激怒して、ニグラード辺境伯領に戻ってしまっているから。

 別居状態ってやつだ。離婚はしてないらしい。なんでも、離婚するにはいろいろ難しい問題があるんだとか。

 そんなわけでニグラード辺境伯領に行くたびに、私は現辺境伯のベイオス閣下とグレイのおばあさまに歓待されている。

 髪の色以外はお母さま似なので、それもあって、グレイのおばあさまに歓迎されているのかと思っていたら、

「エルシアちゃん、グレイアドが怖くないの? 無理してない?」

「エルシアちゃんは王都育ちよね? 北は嫌じゃない? せめて、グレイアドがもっと美男子だったら良かったのにね」

 とグレイに対する暴言が出てくる出てくる。

 まぁ、確かにちょっと強面でムスッとしていて無愛想な感じもあって、見た目が怖いけど。怖いのはあくまでも見た目だけ。中身はそんなに怖い人ではない。

 私が素直にそう答えると、おばあさまは凄く感激してくれた。

「エルシアちゃんはグレイアドの中身を見てくれるのね。本当にありがたいわ」

 と感謝までされた。

「魔物を素手で屠ったり、魔獣を一人で狩り尽くしたり、人間にも容赦しないし。あの子だけ妙にニグラードの血が強く出てしまって、『血濡れの黒狼』と呼ばれていてね」

 うん。それは初耳だわ。人間相手には何をやったんだろう。怖くて聞けない。

 とまぁ、グレイのおばあさまは私が辺境に帰るたびに、いろいろな昔話を聞かせてくれるので、私はそれも楽しみにしていたのだ。

 そして、おばあさまからしっかりとニグラードの血を受け継いだグレイ。

 生まれは北の地ではないのに、見事に北の辺境伯領に馴染んだらしい。




 それに比べて、私は王都生まれの王都育ちだった。グレイと違って北出身の親族がいるわけでもない。

 そんな私が、住みやすい王都ではなく、厳しい北で生きることを選んだ。そのことをバルザード卿は『嬉しい』と言ってくれている。

 そう言われて、嬉しいような気持ちが半分。もう半分は残念な気持ち。

 なぜなら、

「王都の人間が北で暮らすのって、なかなか大変だと思いますよ? だから、お嬢は凄いなぁと思って」

 私を『北の人間』扱いはしてもらえないから。

 バルザード卿にとっては、そしておそらく他の『北の人間』にとっても、私は北で生きることを選んだ『王都の人間』。

 私がちょくちょく北部辺境伯領に行くようになって五年が経つけど、私はまだ『北のヒヨコ』にもなってない状態なのだ。

 いつになったら、私は『北の人間』と言ってもらえるのだろう。もしかしたら、一生、言ってはもらえないかもしれない。

 そんなことを考えながら、私はバルザード卿のお喋りに付き合う。

 グレイは興味がないようで、さきほどからずっと黙っているし。

「それに、大噴出に立ち向かう勇気にも感服ですよ。俺、本格的な大噴出にはまだ参加したことがないんで、緊張します」

 バルザード卿が大噴出の話に触れたところで、グレイの表情が少し引き締まった。相変わらず、無言のままだけど。

 ベイオス閣下からの手紙は見せてもらえなかったので、詳細は分からないが、今回の大噴出はかなりの大規模のよう。

 ふと、私は思いついたことを口にすると、バルザード卿が不思議そうな顔を私に向けた。
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