運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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6 辺境伯領の噴出編

2-11 ミライラ、打ち合わせに参加する

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 今日、私は団長室の隣にある会議室に、またもや呼び出されていた。

 呼び出されたのは私だけではない。

「フェリクス、大丈夫か?」

 この前の会議で、闘技会のメンバーに選ばれた人たちが呼び出され、集められたのだ。
 今日の議長はユースカペル副団長だそうで、まだ来ていないのか、会議室の中は集まった人たちでざわざわとしている。

 そう、私も見事にメンバー入りを果たした。クラウド先輩といっしょに。

 これが嬉しくないわけがなく、メンバー発表で最後に名前を呼ばれたときは、イスから飛び上がりそうになった。

 ところが。

 メンバーに入れても、必ず出場できるわけではないという。

 闘技会は団体戦。

 勝利条件は相手を全員倒す、もしくは相手の旗を取ること。

 予選リーグを勝ち上がったチームが、決勝リーグに駒を進め、優勝チームはさらにレジェンドチームと対戦する。

 試合数も多いし、戦う相手によって出場メンバーを組み替えるので、参加メンバーに選ばれていても出場できないこともあるんだそうだ。

 出場できる人数も、出場者のランクによって変わってくる。団長クラスは1人で何人分、杖持ちの魔術師は何人分と細かく決まっていて、その表も見せてもらった。

 この前、『ルベラスクラスならペナルティが』と話が出てきたのは、このルールがあるからだと私はようやく理解する。

 しかし、ルベラス先輩のランクって、一体、どのくらいなんだろうか。クストス隊長も「上が決めるから」とよく分からない様子だった。

 この辺の話はここに来るまでの間に、クストス隊長からみっちりとレクチャーをしてもらったので、今日の会議で困ることはないはず。
 もちろん、クラウド先輩もいっしょなので心強いし、嬉しいし、顔がにまにましてしまうのを抑えるので大変だ。

 この頃、私は良いことだらけで怖いくらい。

「フェリクス、しっかりしろ」

 そういえば、向こうの方では、フェリクス副隊長がみんなに囲まれている。

「フェリクス副隊長、どうしたんでしょうか?」

「エルシアがいないから、ショックだったんじゃないか?」

 イスから立ち上がって、様子を窺おうかどうしようかと迷っていると、クラウド先輩が呆れたようにため息をついた。

 フェリクス副隊長は相変わらずルベラス先輩一筋で、クラウド先輩はルベラス先輩への気持ちが少し冷めたような感じ。

 このことも、私にとって良いことの一つ。

「ルベラス先輩、後援家門の事情で領地に戻ったんでしたっけ?」

「そう聞いている。一時帰省だって話だから、しばらくしたら帰ってくるとは思うけどな」

「そうなんですか? そのまま、第三騎士団を辞めてしまうとか」

 そうなったら、クラウド先輩の気持ちは完全にルベラス先輩から離れるだろう。私が期待を込めて口にすると、クラウド先輩は「さぁ」と短く答えるだけ。

「それはないな」

 と、はっきり否定したのは意外にも、第一隊のケニス隊長だった。

「ケニス隊長。何かご存じなんですか?」

「うちのダイモスが帰省の挨拶を受けてた時、立ち聞きしたから」

 それって盗み聞きっていいません?

 帰省の挨拶の話が出て、ビクッとクラウド先輩が反応する。

「帰省の挨拶って、何ですかそれ。第五隊には来ませんでしたよ?」

「それはそうだろう。ダイモスとオルドーのところだけ行ったようだからな」

 ケニス隊長はそれしか口にはしなかったけど、その目はこう語っていた。

 第五隊はルベラス先輩に言いがかりをつけただろうに、と。




「席に着け、何を騒いでる?」

 ユースカペル副団長が会議室へと入ってきた。魔術師長のパシアヌス様も続いて入室する。

 二人とも手には資料を持ち、会議室の広いテーブルにドンと乗せた。

 隅の方では相変わらず、フェリクス副隊長を囲んで何やら騒いでいるので、ザワザワ、ガヤガヤ。
 それを見咎めたユースカペル副団長に、ケニス隊長が謝罪する羽目になった。

「ユースカペル副団長、すみません。エルシアのことでちょっと」

「はぁ。ルベラスはいてもいなくても、騒ぎを起こすのか」

 顔に手を当てて、ため息をつく副団長。
 ケニス隊長が言いにくそうに話し始める。

「あー、エルシアが一時帰省して、うちのフェリクスが使い物にならなくなっていまして」

 部屋の隅に顔を向けるケニス隊長の視線の先には、テーブルに突っ伏すフェリクス副隊長に、周りを囲む騎士たち。ダイモス先輩もその中に加わっていた。

 副団長はまたもやため息をつくと、隅の集団へ声をかける。

「あぁ、フェリクスか。ルベラスならそのうち帰ってくるから」


 ガバッ


 副団長の言葉を聞くとすぐ、フェリクス副隊長が突っ伏していた身体を起こした。

「本当ですか?! 良かった。俺、エルシアに確認したいことがあったんです!」

 復活が早い。囲んでいた騎士たちも同じことを言って、それぞれの席へ。

 喜ぶフェリクス副隊長を見て、私は複雑な気持ちになる。

 フェリクス副隊長には悪いけど、そしてルベラス先輩に恨みはないけど。

 このまま、ルベラス先輩が帰ってこなければいいのに。ルベラス先輩さえいなくなれば…………。

「ただ、早くて一週間、長ければ一ヶ月はかかる。大噴出の討伐に戻ったから。万が一に備え、親しい人間には別れの挨拶をして帰ったはずだ」

 私の思考をユースカペル副団長の言葉が遮った。

「「えっ…………」」

 みんなが見計らったように声を上げ、フェリクス副隊長に至っては、勢い余って、バンと立ち上がる。

 立ち上がったはずみでイスが後ろに倒れるけれど、それを気にする人はいなかった。

 大噴出か、エルシアなら無事に帰ってこれるさ、とざわめきが起きる中、

「ダイモスが挨拶を受けてましたよ。帰省の挨拶じゃなかったんですね」

 とケニス隊長。

「急いで帰ったから数人しか挨拶してないんじゃないか?」

 もちろん、団長室には挨拶があったがな、と当たり前のことを言うユースカペル副団長。

「数人、数人から俺は漏れた」

 とこれはフェリクス副隊長。さっき復活したかと思えば、もう、がっくりとしている。一喜一憂の激しい人なのかも。

 しかし、続く話で、フェリクス副隊長は完全にノックアウトされることとなる。

「まぁ、戻ってきたら、すぐに話は済ませておけよ。闘技会では別陣営になるし、今年度いっぱいで退団となるから」

 退団。

 ユースカペル副団長から、みんなが仰天する言葉が飛び出した。

「「えっ!」」

「副団長、詳しく!」

 さっきの比ではないほど、周りが取り乱す。ルベラス先輩が退団。私はこっそりほくそ笑んだ。

 隣で、クラウド先輩も身体を硬直させているのを感じる。

「闘技会では後援家門からの出場となるから、」

「そっちではなく、退団の話です!」

「元々、期限付きの採用だったからな」

 後の話はよく耳に入ってこなかった。
 邪魔者がいなくなる嬉しさで、心臓がバクバクするのを感じる私。

「騎士団付き魔術師の仕事を覚えるために入団していますから。早めに終わりそうなので、退団時期が繰り上がったんです」

「さぁ、もういいだろ。席に着け」

 騒然とする中、闘技会に向けての打ち合わせが始まった。
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