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6 辺境伯領の噴出編
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翌日。
「エルシア様、良いんですか?」
私は、私の身の回りの世話をしてくれる侍女さんたちに囲まれていた。
魔力結界を作って誰も侵入できないようにはしてみたものの、籠城生活を送る上でごはんは必須。
ごはんを運んできてくれたり、部屋を掃除してくれたり、甲斐甲斐しく気を配ってくれる侍女さんたちが出入り出来ないとなってくると、私が死ぬ。
逆に言えば、侍女さんたちさえいれば、私は快適に生きていける。
だから、朝起きて真っ先に、侍女さんたちだけは部屋に入ってこられるような仕組みに変えてみた。
具体的に話すととてーも長くなるけど、侍女さんたちの持つ固有の魔力波動を扉の魔法陣に記録して、記録と合う魔力波動の持ち主が近づけば扉の鍵が開き、その人物だけが結界を出入り出来るような仕組み。
おかげで、朝ご飯を自室に持ってきてもらって、優雅に一人朝ご飯を堪能できた。
食後のお茶も優雅にいただけた。
うん、気分がいい。
その間、部屋の外にはグレイが来たり、ベイオス閣下が来たり、私の護衛たちが来たりしたみたいだけれど。
全員を追い返してもらったのだ。
うん、さらに気分がいい。
そうして、まったりとお茶をしていると、侍女さんたちに質問される。
「エルシア様、本当にルプス隊長や護衛さんたちを追い返して良いんですか?」
「うん。これから魔力コントロールの特訓をするから」
魔力コントロールの訓練は、是非ともやっておかないといけないことだった。
「もうすぐ大噴出が起きるし、私が出来るのは魔術防御と穴の破壊くらいになるだろうからね」
そう、特大の大噴出の出現が刻一刻と近づいている。
噴出してくる魔物や魔獣は騎士たちが倒すとはいっても、魔術師だってただその場にいるわけではない。
騎士たちが被害に合わないよう、被害にあっても最小限で済ませられるよう、間接的に防御を施したり、直接的に攻撃魔法を放ったり、騎士たちの支援を行う。
偵察にいった現場は背の高い草だらけの場所。あれでは魔物や魔獣が現れても、穴が突然開いても、目視では分かりづらい。
とはいえ、あの広さ全部の草を刈るのは不可能に近い。
ならば、魔術防御は必須。
「大人数を個別に防御するには、繊細な魔力コントロールが必要になってくるの。だから、少しでもたくさん訓練しておかないとね」
だから、「しばらく一人にしておいて」と目配せすると、侍女さんたちはしぶしぶ下がっていった。一人を残して。
「これだけは譲れません」
「邪魔にならないようにしますので」
と言うので、気にならないよう、一人だけ部屋の隅のイスに座っていてもらう。
この待機の侍女さん、どうやら交代制のようで二時間おきに人が入れ替わった。
そのタイミングでお茶菓子だったり、ホットタオルだったり、昼ご飯だったりと、様々な差し入れが交代の侍女さんとともにやってくる。
「ルプス隊長、エルシア様の部屋に入りたそうにしていましたよ」
「ルプス隊長、エルシア様のことをもの凄く心配してました」
「エルシア様、今夜はルプス隊長の部屋で寝てあげてください」
おまけの一言も付け加えながら。
「しばらくグレイはいいわ。大噴出が始まったら嫌でも顔を合わせるようだし」
私の方は魔力コントロールの特訓をしながら、侍女さんのお喋りに付き合う。
侍女さんも私の特訓の邪魔をしてはいけないと思っているので、そんなに長々とお喋りしないから。
喋りながらの魔法陣の維持も、十分、魔力コントロールの特訓になるし。お喋りで息抜きしつつ魔力は引き締めつつ、一挙両得な特訓が続いた。
右手の人差し指をくるくるくるくると回していくと、小さな小さな魔法陣が無限に出てくる。
これを維持するだけではなく、自在に動かして並べる、一つ一つ発動させる、全部一気に発動させる、などなど。様々なことをひたすら試していた。
この小さな小さな魔法陣を見て、侍女さんたちは物珍しそうに誉めてくれる。
「エルシア様の魔法陣は綺麗ですね」
「魔法陣を複数操るのは、上級者でも難しいと聞いています」
実のところ、設置されている魔法陣を複数同時に操るのは、それほど難易度は高くない。
発動するだけの魔力があれば、訓練次第で上級者ではなくても出来てしまう。
ところが、魔力を練り上げて自分で魔法陣を展開させるとなると、大きく難易度があがった。
さらに、魔法陣の複数展開、複数発動、複数維持となるにつれ、難易度はあがる。
今、私が特訓しているのがこれだ。
元々出来るけど。複数を同時にとか、複数を組み合わせてとか、複雑になればなるほど、集中力と細やかな魔力コントロールが必要になってくるから。
小さな魔法陣だけではない。
扉と窓に鍵をかけている魔法陣と、部屋の結界となっている魔法陣も、自前で展開して維持させている。
部屋の魔法陣は、扉や窓、床といった場所に刻み込んでしまえば、魔法陣を維持する力を省略できるのに、あえて刻み込まないのには理由があった。
特訓の一環であることも理由の一つだけど、刻み込んでしまうと発動途中で変更することが出来なくなるから。
臨機応変に魔法を発動させるには、やはり、自前だ。
《だいぶ維持が安定してきたな、主》
セラフィアスから合格の言葉をもらったので、今日の特訓はここまでにしよう。
もちろん、部屋の魔法陣は維持したまま。
そして当然ながら、今夜も私は自分の部屋で、一人静かに眠りについたのだった。
「エルシア様、良いんですか?」
私は、私の身の回りの世話をしてくれる侍女さんたちに囲まれていた。
魔力結界を作って誰も侵入できないようにはしてみたものの、籠城生活を送る上でごはんは必須。
ごはんを運んできてくれたり、部屋を掃除してくれたり、甲斐甲斐しく気を配ってくれる侍女さんたちが出入り出来ないとなってくると、私が死ぬ。
逆に言えば、侍女さんたちさえいれば、私は快適に生きていける。
だから、朝起きて真っ先に、侍女さんたちだけは部屋に入ってこられるような仕組みに変えてみた。
具体的に話すととてーも長くなるけど、侍女さんたちの持つ固有の魔力波動を扉の魔法陣に記録して、記録と合う魔力波動の持ち主が近づけば扉の鍵が開き、その人物だけが結界を出入り出来るような仕組み。
おかげで、朝ご飯を自室に持ってきてもらって、優雅に一人朝ご飯を堪能できた。
食後のお茶も優雅にいただけた。
うん、気分がいい。
その間、部屋の外にはグレイが来たり、ベイオス閣下が来たり、私の護衛たちが来たりしたみたいだけれど。
全員を追い返してもらったのだ。
うん、さらに気分がいい。
そうして、まったりとお茶をしていると、侍女さんたちに質問される。
「エルシア様、本当にルプス隊長や護衛さんたちを追い返して良いんですか?」
「うん。これから魔力コントロールの特訓をするから」
魔力コントロールの訓練は、是非ともやっておかないといけないことだった。
「もうすぐ大噴出が起きるし、私が出来るのは魔術防御と穴の破壊くらいになるだろうからね」
そう、特大の大噴出の出現が刻一刻と近づいている。
噴出してくる魔物や魔獣は騎士たちが倒すとはいっても、魔術師だってただその場にいるわけではない。
騎士たちが被害に合わないよう、被害にあっても最小限で済ませられるよう、間接的に防御を施したり、直接的に攻撃魔法を放ったり、騎士たちの支援を行う。
偵察にいった現場は背の高い草だらけの場所。あれでは魔物や魔獣が現れても、穴が突然開いても、目視では分かりづらい。
とはいえ、あの広さ全部の草を刈るのは不可能に近い。
ならば、魔術防御は必須。
「大人数を個別に防御するには、繊細な魔力コントロールが必要になってくるの。だから、少しでもたくさん訓練しておかないとね」
だから、「しばらく一人にしておいて」と目配せすると、侍女さんたちはしぶしぶ下がっていった。一人を残して。
「これだけは譲れません」
「邪魔にならないようにしますので」
と言うので、気にならないよう、一人だけ部屋の隅のイスに座っていてもらう。
この待機の侍女さん、どうやら交代制のようで二時間おきに人が入れ替わった。
そのタイミングでお茶菓子だったり、ホットタオルだったり、昼ご飯だったりと、様々な差し入れが交代の侍女さんとともにやってくる。
「ルプス隊長、エルシア様の部屋に入りたそうにしていましたよ」
「ルプス隊長、エルシア様のことをもの凄く心配してました」
「エルシア様、今夜はルプス隊長の部屋で寝てあげてください」
おまけの一言も付け加えながら。
「しばらくグレイはいいわ。大噴出が始まったら嫌でも顔を合わせるようだし」
私の方は魔力コントロールの特訓をしながら、侍女さんのお喋りに付き合う。
侍女さんも私の特訓の邪魔をしてはいけないと思っているので、そんなに長々とお喋りしないから。
喋りながらの魔法陣の維持も、十分、魔力コントロールの特訓になるし。お喋りで息抜きしつつ魔力は引き締めつつ、一挙両得な特訓が続いた。
右手の人差し指をくるくるくるくると回していくと、小さな小さな魔法陣が無限に出てくる。
これを維持するだけではなく、自在に動かして並べる、一つ一つ発動させる、全部一気に発動させる、などなど。様々なことをひたすら試していた。
この小さな小さな魔法陣を見て、侍女さんたちは物珍しそうに誉めてくれる。
「エルシア様の魔法陣は綺麗ですね」
「魔法陣を複数操るのは、上級者でも難しいと聞いています」
実のところ、設置されている魔法陣を複数同時に操るのは、それほど難易度は高くない。
発動するだけの魔力があれば、訓練次第で上級者ではなくても出来てしまう。
ところが、魔力を練り上げて自分で魔法陣を展開させるとなると、大きく難易度があがった。
さらに、魔法陣の複数展開、複数発動、複数維持となるにつれ、難易度はあがる。
今、私が特訓しているのがこれだ。
元々出来るけど。複数を同時にとか、複数を組み合わせてとか、複雑になればなるほど、集中力と細やかな魔力コントロールが必要になってくるから。
小さな魔法陣だけではない。
扉と窓に鍵をかけている魔法陣と、部屋の結界となっている魔法陣も、自前で展開して維持させている。
部屋の魔法陣は、扉や窓、床といった場所に刻み込んでしまえば、魔法陣を維持する力を省略できるのに、あえて刻み込まないのには理由があった。
特訓の一環であることも理由の一つだけど、刻み込んでしまうと発動途中で変更することが出来なくなるから。
臨機応変に魔法を発動させるには、やはり、自前だ。
《だいぶ維持が安定してきたな、主》
セラフィアスから合格の言葉をもらったので、今日の特訓はここまでにしよう。
もちろん、部屋の魔法陣は維持したまま。
そして当然ながら、今夜も私は自分の部屋で、一人静かに眠りについたのだった。
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