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6 辺境伯領の噴出編
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私たちが大噴出の現場についたときには、大噴出が始まっていた。
すでに予兆の段階ではない。
馬を殲滅隊の先頭に移動させるよう、フィリアに指示を出す。
というのも、私はフィリアの馬に乗せられての移動だったから。私だって練習して自分で馬に乗れるようになってるのに。
またもやグレイが、私一人で馬に乗せてはダメだとか、うるさいことを言い出したらしい。
昔から、グレイの前に座らせられて移動してるからな。ある意味、定位置みたいな感じになってたわ。
今回も、当初の予定では、グレイが私を馬に乗せるつもりだったようだけど。けっきょく、折衷案でフィリアの馬に乗せられることになって今に至る。
て。馬の話をしている場合じゃないわ。
「予想より、穴が開く速度が速い」
先頭…………はグレイに危ないと邪魔されて行けなかったものの、見通しのいい場所に移動してくれたフィリアのおかげで、私は今の穴の状態を確認することが出来た。
「これから穴が開くくらいの時間なのに、もうだいぶ大きくなってきている」
「お嬢、見えるんですか?」
私たちの隣に馬を寄せてきたバルザード卿が、不思議そうに尋ねてきた。
「え? 歪みが見えないの?」
「見えません」
答えるバルザード卿。私は近くのバルトレット卿の方を向くと、バルトレット卿もブンブンと首を横に振った。
「だって、殲滅隊は全員、魔剣士なんでしょ?」
「魔力が見えるのはお嬢くらいですよ」
「え? それじゃあ、予兆が始まったのはどうやって分かったわけ?」
いまさら知る事実に愕然とする私。
「魔力の動きに敏感な騎士や魔術師が、監視隊になってるんです」
「知らなかった。みんな、分かるものだとばかり思ってた」
「まぁ、ベイオス閣下や隊長も予兆を感知できる人たちですしね」
そう言うフィリアの目は、グレイに向いていた。表情は、なんだろう、恋する乙女とは違う。英雄に憧れを向ける、そんな表情だった。
とにかく。
現況も分からず現場にいても、いざというタイミングで動けなくない?
「うん、小細工してみるか」
私はフィリアが止めるより先に、右手の指をくるくる回して魔法陣を展開した。
「お嬢、何するんですか?!」
「だから、小細工」
展開した魔法陣の一つを発動させる。
「《光球》」
私は現場の上空に魔法の『光球』を生み出した。
「お嬢、何したんですか?!」
「見ての通り、光球を出したんだけど?」
「あれのどこが光の球なんですか? どう見ても暗黒球ですよ?」
私の、暗い光球に文句を言うフィリア。
「だって、夜なら光ってた方がいいだろうけど、今は明るいから。光球を暗くした方がいいかなって」
「なるほど。考えましたね、お嬢」
「ロード先輩、突っ込むところはそこじゃないですよね? しかも納得するんですか、あれを」
そう言って、フィリアに文句をつけたバルザード卿は、空を指差す。
正確には、私が生み出した無数の暗い光球を、バルザード卿は指さしていた。
うろたえているバルザード卿と対照的に、バルトレット卿の方は意外と平然としている。
「爆発したりするんですか、あれ?」
「うん、光球だから照明みたいな感じ?」
「それなら、危なくはないですね」
危ないのはダメなのか。仮にも私は魔術師なのに。
そう思ったのが顔に出たようで、
「お嬢の攻撃魔法は、桁違いの規模の殲滅魔法だと聞いてますので」
とバルトレット卿に返された。
誰よ、そんなことを言ったのは。グレイか、グレイしかいないよね。
みんな、忘れてるかも知れないけど、私が得意とするタイプは、範囲魔法。通常は個々を対象として発動する魔法も、範囲を対象として発動させることが出来る。
セラフィアスによると、これが『鎮圧』に適した才能なんだとか。
つまり、鎮圧のセラフィアスの有無に関わらず、私には鎮圧の才があるんだそうな。
話を元に戻すと、例えば、特定の一点で爆発する爆発魔法を私が使うと、特定の領域すべてが爆発する爆発魔法に早変わりする。それゆえ、桁違いの規模の殲滅魔法になってしまうと。
これを一言で説明するのが難しいので、バルトレット卿に言い返すことが出来ない。
むぅ。
「しかし、たくさんありますね」
「ありすぎだろ。お嬢、あんなにたくさん出して、どうするんですか!」
「お嬢に何か考えがあるんでしょ?」
「暗い光球が何の役に立つんですか!」
危ないものではないと分かり平静を保つバルトレット卿とフィリアに対して、バルザード卿が突っ込みを入れ始めた。
ふよふよと空中に浮かぶ、無数の暗い光球。生み出した私もぜんぶでいくつあるのかが分からないくらいの数が、ゆらゆらと何かに押し流されるように動く。
何の役に立つのかは、まぁ、あの動きを見ていれば分かるとは思うけど。
訳が分かってないバルザード卿に説明してあげようと、
「あれはね、」
と言い掛けたところで、邪魔が入った。
すでに予兆の段階ではない。
馬を殲滅隊の先頭に移動させるよう、フィリアに指示を出す。
というのも、私はフィリアの馬に乗せられての移動だったから。私だって練習して自分で馬に乗れるようになってるのに。
またもやグレイが、私一人で馬に乗せてはダメだとか、うるさいことを言い出したらしい。
昔から、グレイの前に座らせられて移動してるからな。ある意味、定位置みたいな感じになってたわ。
今回も、当初の予定では、グレイが私を馬に乗せるつもりだったようだけど。けっきょく、折衷案でフィリアの馬に乗せられることになって今に至る。
て。馬の話をしている場合じゃないわ。
「予想より、穴が開く速度が速い」
先頭…………はグレイに危ないと邪魔されて行けなかったものの、見通しのいい場所に移動してくれたフィリアのおかげで、私は今の穴の状態を確認することが出来た。
「これから穴が開くくらいの時間なのに、もうだいぶ大きくなってきている」
「お嬢、見えるんですか?」
私たちの隣に馬を寄せてきたバルザード卿が、不思議そうに尋ねてきた。
「え? 歪みが見えないの?」
「見えません」
答えるバルザード卿。私は近くのバルトレット卿の方を向くと、バルトレット卿もブンブンと首を横に振った。
「だって、殲滅隊は全員、魔剣士なんでしょ?」
「魔力が見えるのはお嬢くらいですよ」
「え? それじゃあ、予兆が始まったのはどうやって分かったわけ?」
いまさら知る事実に愕然とする私。
「魔力の動きに敏感な騎士や魔術師が、監視隊になってるんです」
「知らなかった。みんな、分かるものだとばかり思ってた」
「まぁ、ベイオス閣下や隊長も予兆を感知できる人たちですしね」
そう言うフィリアの目は、グレイに向いていた。表情は、なんだろう、恋する乙女とは違う。英雄に憧れを向ける、そんな表情だった。
とにかく。
現況も分からず現場にいても、いざというタイミングで動けなくない?
「うん、小細工してみるか」
私はフィリアが止めるより先に、右手の指をくるくる回して魔法陣を展開した。
「お嬢、何するんですか?!」
「だから、小細工」
展開した魔法陣の一つを発動させる。
「《光球》」
私は現場の上空に魔法の『光球』を生み出した。
「お嬢、何したんですか?!」
「見ての通り、光球を出したんだけど?」
「あれのどこが光の球なんですか? どう見ても暗黒球ですよ?」
私の、暗い光球に文句を言うフィリア。
「だって、夜なら光ってた方がいいだろうけど、今は明るいから。光球を暗くした方がいいかなって」
「なるほど。考えましたね、お嬢」
「ロード先輩、突っ込むところはそこじゃないですよね? しかも納得するんですか、あれを」
そう言って、フィリアに文句をつけたバルザード卿は、空を指差す。
正確には、私が生み出した無数の暗い光球を、バルザード卿は指さしていた。
うろたえているバルザード卿と対照的に、バルトレット卿の方は意外と平然としている。
「爆発したりするんですか、あれ?」
「うん、光球だから照明みたいな感じ?」
「それなら、危なくはないですね」
危ないのはダメなのか。仮にも私は魔術師なのに。
そう思ったのが顔に出たようで、
「お嬢の攻撃魔法は、桁違いの規模の殲滅魔法だと聞いてますので」
とバルトレット卿に返された。
誰よ、そんなことを言ったのは。グレイか、グレイしかいないよね。
みんな、忘れてるかも知れないけど、私が得意とするタイプは、範囲魔法。通常は個々を対象として発動する魔法も、範囲を対象として発動させることが出来る。
セラフィアスによると、これが『鎮圧』に適した才能なんだとか。
つまり、鎮圧のセラフィアスの有無に関わらず、私には鎮圧の才があるんだそうな。
話を元に戻すと、例えば、特定の一点で爆発する爆発魔法を私が使うと、特定の領域すべてが爆発する爆発魔法に早変わりする。それゆえ、桁違いの規模の殲滅魔法になってしまうと。
これを一言で説明するのが難しいので、バルトレット卿に言い返すことが出来ない。
むぅ。
「しかし、たくさんありますね」
「ありすぎだろ。お嬢、あんなにたくさん出して、どうするんですか!」
「お嬢に何か考えがあるんでしょ?」
「暗い光球が何の役に立つんですか!」
危ないものではないと分かり平静を保つバルトレット卿とフィリアに対して、バルザード卿が突っ込みを入れ始めた。
ふよふよと空中に浮かぶ、無数の暗い光球。生み出した私もぜんぶでいくつあるのかが分からないくらいの数が、ゆらゆらと何かに押し流されるように動く。
何の役に立つのかは、まぁ、あの動きを見ていれば分かるとは思うけど。
訳が分かってないバルザード卿に説明してあげようと、
「あれはね、」
と言い掛けたところで、邪魔が入った。
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