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6 辺境伯領の噴出編
5-1
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グギュュュュュュュュュ
まったくもって理解しがたい状況に、私は襲われていた。
具体的に言うと、ベッドに寝た状態の私の上にグレイが乗っかり、上からギュウギュウと抱き締めていると。
私の体重の倍近くあるグレイの体重が、もろに上からのし掛かってくる。
ヤバい。
しかも、位置も悪い。
グレイが自分の胸に私の頭を押し付けて、掻きいだくようにしているため、私の呼吸が止まっている。
もちろん、呼吸が止まるとは言っても、完全に停止しているわけではなくて。
鼻も口もグレイのシャツの胸の部分にギューーーーッと押しつけられているため、布越しの空気をわずかに吸って、生き延びているという。
そんなわずかな空気で足りるのか、足りるわけがない。
ヤバい。死ぬ。窒息死だ。
「モガモガガガガ」
私は自由になる腕と足をジタバタさせて、もがいた。物理で勝てるとは思っていないにしても、このままでは昇天する。
頭も左右に振って、と思ったのに、後頭部ががっしりと固定されていて、ピクリともしない。これは本気でマズい。
「今度こそ、絶対に逃がさない」
なんか、怖いことを呟いてるし!
背中がゾクッとする。
私は訳が分からなくなっていた。
グレイとケンカして、ろくに口も聞いてなかったのは事実だ。
私と婚約してるから、グレイがフィリアと結婚できないことも理解している。
だから、後ろ盾が必要なくなったら喜んで婚約解消に応じるつもりだ。
穴に吸い込まれたのは、グレイとフィリアを庇ってのこと。
私やグレイが吸い込まれてもどうってことないけど、フィリアが吸い込まれたら大変だったと思う。
窒息死させられるほど、悪いことはしてないのに。
「モガモガガガガ」
ヤバい。苦しい。死ぬ。
私が息苦しさで、意識が朦朧としてきたところに、
「おい、そこまでにしろ。極悪魔剣士!」
ガバッ
グレイが私から乱暴に引き剥がされた。
あぁ。生き返る。
「息が吸えるって、最高」
「主も主だよ。おとなしく絞め殺されるなんて」
いや、物理的に無理だから。グレイから逃れるのって。
私はベッドから半身を起こし、声のする方を向く。
黒髪金眼の十歳くらいの少年が、床に倒れるグレイを足蹴にして、プンスカ怒りまくっていた。
私のピンチにセラフィアスが助けてくれたようだ。もっと早く助けてくれても良かったのに、と思わなくもない。
「誰が絞め殺すか。人聞きの悪い」
床に倒れたグレイが、頭に手をやり立ち上がった。蹴られた拍子に元々座っていたイスも吹き飛んでいたので、立ち上がると同時にイスも元に戻している。
私は大きく息を吸って吐くと、身体の中が新鮮な空気で満たされていくのを感じた。
数分前までは、グレイに本気で殺されるかと思って、何もかも考えられなかったのに。気持ちが落ち着いてくると、頭の中も落ち着いてきた。
「逃げ出そうと、頑張ってはみたわ」
「転移すれば良かっただろ。なんだかんだ言って、主は極悪魔剣士に襲われたいんだよな」
「そんな趣味、ないから!」
クラヴィスの酷い言いがかりに、私は声を張り上げて反論する。
あ、意外と普通に大声が出る。
「なんだ。それなら、そう言ってくれればシアの趣味に全力で合わせたのに」
どういうわけか、グレイは頬を赤くして恥ずかしそうにつぶやいた。
「だから、襲われる趣味はないからね!」
ここでキッパリと否定しておかないと、変な方向にグレイは暴走する。変な方向に突っ走られても困るんだけど。
私がじーーーっと見ていると、グレイもようやく正気に戻ったようだ。
「でも、意識が戻って本当に良かった」
私の意識より、自分の正気を心配してもらいたいわ。
「二日間も意識が戻らなかったんだ。このまま、シアが目を覚まさないんじゃないかと、心配で心配で」
グレイは立ったまま、私の頭を撫でた。
いい子いい子と小さい子どもの頭を撫でるようにではなく、大切な宝物を優しく愛でるように。
グレイの黒眼は真っ直ぐに私に向かい、今にも泣きそうな表情になっている。
「グレイ」
私は、グレイにたくさん心配をかけてしまったんだ。なのに、グレイは心配するだけで、私を責めるようなことは一切、言わなかったのだ。
グレイの行動には必ず、私の安全と安心がついて回る。早合点したり勘違いしたりすることも、もちろんあるけど、それは私が危険にさらされないようにするため。
宴会の席だって、お酒のことだって、グレイはグレイなりに私を慮っていた。そんなことは百も分かっていたのに。
子ども扱いされているとか、仲間外れにされているとか、意地悪だからとか。どうして、そんなひねくれたことしか考えられなかったのだろう、過去の私。
そんなことを考えていると、胸の奥がつかえて何かがこみ上げてくる。
私の頭を撫でるグレイの手に、私は自分の手を重ねた。
ありきたりの言葉だけれど、私を心配してくれてありがとう、とグレイに伝えよう。
そう思って私が口を開こうとした瞬間、セラフィアスが私より先に口を開いた。
「あー、主。実はな…………」
この後、私はとんでもない話を聞かされることになる。
まったくもって理解しがたい状況に、私は襲われていた。
具体的に言うと、ベッドに寝た状態の私の上にグレイが乗っかり、上からギュウギュウと抱き締めていると。
私の体重の倍近くあるグレイの体重が、もろに上からのし掛かってくる。
ヤバい。
しかも、位置も悪い。
グレイが自分の胸に私の頭を押し付けて、掻きいだくようにしているため、私の呼吸が止まっている。
もちろん、呼吸が止まるとは言っても、完全に停止しているわけではなくて。
鼻も口もグレイのシャツの胸の部分にギューーーーッと押しつけられているため、布越しの空気をわずかに吸って、生き延びているという。
そんなわずかな空気で足りるのか、足りるわけがない。
ヤバい。死ぬ。窒息死だ。
「モガモガガガガ」
私は自由になる腕と足をジタバタさせて、もがいた。物理で勝てるとは思っていないにしても、このままでは昇天する。
頭も左右に振って、と思ったのに、後頭部ががっしりと固定されていて、ピクリともしない。これは本気でマズい。
「今度こそ、絶対に逃がさない」
なんか、怖いことを呟いてるし!
背中がゾクッとする。
私は訳が分からなくなっていた。
グレイとケンカして、ろくに口も聞いてなかったのは事実だ。
私と婚約してるから、グレイがフィリアと結婚できないことも理解している。
だから、後ろ盾が必要なくなったら喜んで婚約解消に応じるつもりだ。
穴に吸い込まれたのは、グレイとフィリアを庇ってのこと。
私やグレイが吸い込まれてもどうってことないけど、フィリアが吸い込まれたら大変だったと思う。
窒息死させられるほど、悪いことはしてないのに。
「モガモガガガガ」
ヤバい。苦しい。死ぬ。
私が息苦しさで、意識が朦朧としてきたところに、
「おい、そこまでにしろ。極悪魔剣士!」
ガバッ
グレイが私から乱暴に引き剥がされた。
あぁ。生き返る。
「息が吸えるって、最高」
「主も主だよ。おとなしく絞め殺されるなんて」
いや、物理的に無理だから。グレイから逃れるのって。
私はベッドから半身を起こし、声のする方を向く。
黒髪金眼の十歳くらいの少年が、床に倒れるグレイを足蹴にして、プンスカ怒りまくっていた。
私のピンチにセラフィアスが助けてくれたようだ。もっと早く助けてくれても良かったのに、と思わなくもない。
「誰が絞め殺すか。人聞きの悪い」
床に倒れたグレイが、頭に手をやり立ち上がった。蹴られた拍子に元々座っていたイスも吹き飛んでいたので、立ち上がると同時にイスも元に戻している。
私は大きく息を吸って吐くと、身体の中が新鮮な空気で満たされていくのを感じた。
数分前までは、グレイに本気で殺されるかと思って、何もかも考えられなかったのに。気持ちが落ち着いてくると、頭の中も落ち着いてきた。
「逃げ出そうと、頑張ってはみたわ」
「転移すれば良かっただろ。なんだかんだ言って、主は極悪魔剣士に襲われたいんだよな」
「そんな趣味、ないから!」
クラヴィスの酷い言いがかりに、私は声を張り上げて反論する。
あ、意外と普通に大声が出る。
「なんだ。それなら、そう言ってくれればシアの趣味に全力で合わせたのに」
どういうわけか、グレイは頬を赤くして恥ずかしそうにつぶやいた。
「だから、襲われる趣味はないからね!」
ここでキッパリと否定しておかないと、変な方向にグレイは暴走する。変な方向に突っ走られても困るんだけど。
私がじーーーっと見ていると、グレイもようやく正気に戻ったようだ。
「でも、意識が戻って本当に良かった」
私の意識より、自分の正気を心配してもらいたいわ。
「二日間も意識が戻らなかったんだ。このまま、シアが目を覚まさないんじゃないかと、心配で心配で」
グレイは立ったまま、私の頭を撫でた。
いい子いい子と小さい子どもの頭を撫でるようにではなく、大切な宝物を優しく愛でるように。
グレイの黒眼は真っ直ぐに私に向かい、今にも泣きそうな表情になっている。
「グレイ」
私は、グレイにたくさん心配をかけてしまったんだ。なのに、グレイは心配するだけで、私を責めるようなことは一切、言わなかったのだ。
グレイの行動には必ず、私の安全と安心がついて回る。早合点したり勘違いしたりすることも、もちろんあるけど、それは私が危険にさらされないようにするため。
宴会の席だって、お酒のことだって、グレイはグレイなりに私を慮っていた。そんなことは百も分かっていたのに。
子ども扱いされているとか、仲間外れにされているとか、意地悪だからとか。どうして、そんなひねくれたことしか考えられなかったのだろう、過去の私。
そんなことを考えていると、胸の奥がつかえて何かがこみ上げてくる。
私の頭を撫でるグレイの手に、私は自分の手を重ねた。
ありきたりの言葉だけれど、私を心配してくれてありがとう、とグレイに伝えよう。
そう思って私が口を開こうとした瞬間、セラフィアスが私より先に口を開いた。
「あー、主。実はな…………」
この後、私はとんでもない話を聞かされることになる。
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