運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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7 王女殿下と木精編

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 ついたため息が聞こえたわけではないと思うけど。突然、会議に参加している全員が私の存在に気が付いた。

 と同時に、なぜか私に視線が集中する。

 いやいや、集中するというレベルではない。私の頭や顔に、ガスッガスッと視線が突き刺さるのを感じる。

 ただ、見ているだけで、誰も何も喋らない。

 会議場がシーーーンと静まりかえる中、


 ゴクリ


 自分の生唾を飲み込み音だけが、やけに耳についた。

 緊張が高まる。

 ふと、隣に座る王太子殿下が、手にしたペンを机の上に落とした。


 パタン、コロコロコロ


 机に落ち、そのまま机の上をペンが転がる。

 その音が合図になったのか、私を注視していた参加者が一斉に口を開いた。

「ルベラス魔導公殿、見守るだけでなく、積極的に会議にご参加ください!」

「ルベラス魔導公殿は、この問題についてどう思われますか?」

「ぜひぜひ、ルベラス魔導公殿のご意見も承りたい!」

 会議なので、議長、司会進行、書記といった役割を担う人たちがいるのに。議長や司会役の人の指示も何も振り払って、我先にと大声をあげる。

 て。議長や司会役の人たちまで、手を挙げて、何か私に向かって喋っていたわ。

 誰がこれをまとめるのよ。

 書記、の人は一斉質問の波に乗り損ねたのを悔しがり、ペンを両手に握りしめているし。

 隣で王太子殿下は、おもしろそうにしている。

 もちろん、一斉質問する人たちをおもしろそうに見ているのではなく、一斉質問されてまごついている私を見て、おもしろそうにしているのだ。

 顔は参加者の方に向けたまま、目だけでチラリと隣を睨む。

「(こんなの私にどうしろと)」

「(よろしく頼む、ルベラス魔導公殿)」

 丸投げされた。無責任すぎる。

 はぁ。

 私は片手を挙げて場を静まらせると、声を張って、周りに語りかけた。

「話がゴチャゴチャしているので、もう一度、今までの経緯とみなさんの意見をお願いします」

 ここから、長い長い戦いが始まる。




 最初に切り出したのは、行政部の担当者だ。

「お披露目会の日程はすでに固まっているため、招待状は発送済みなのですが、各国からの返信をいただいている中で、困ったことが出てきました」

 続いて、外交部が話をつなぐ。

「マギカイと新リテラ王国が、どこから聞いたのか闘技会の情報を入手しておりまして、闘技会の参加を打診してきたんです」

 担当者の話をさらに、王太子殿下が解説する。

「お披露目会が終わった直後に闘技会が開催されるからな。どうせなら参加して、グラディアの実力を肌で感じたい。そういうところだろうな」

「それで、そのことについて、何を困っているんですか?」

 私の問いかけに、一瞬、場が静まってから、議長が要点をしぼってくれた。

「マギカイと新リテラ王国の参加に、意見が二つに割れているんです」

 あぁ、参加賛成派と反対派か。

 まずは賛成派の意見を聞いてみよう。

「よろしいんじゃないでしょうか。我が国の騎士団の強さを、しかと見せてあげましょう」

「そうです。我が国の騎士団なら、マギカイや新リテラ王国の騎士団など、恐るるに足りませんよ」

 ほぼ、行政部や外交部の人たちの声だ。
 実際に闘技会をする側の人間は、意外にもいない。

 で、反対派の意見がこうだ。

「待ってください。闘技会はあくまでも内輪の大会。観客も騎士団内部だけに限定しています。それを他国も混ぜろと言うんですか?」

「内部限定の大会だからこそ、手の内を見せて、最大限の力を発揮させるんです。それが他国も混ざるとなると」

 ほぼ、騎士団関係の人たちが声を上げている。

 ちなみに、会計部の担当者は、

「予算が大幅に超過しないのであれば、どちらでもいいです。
 え? 確かに他国が参加となると予算は増えるでしょうけど、そこはいくらでもやりようがありますので」

 という感じで興味なし。

 そんなわけで、闘技会に出場しない行政部や外交部と、闘技会に出場する騎士団との、意見のぶつかり合いが始まった。

 最終的には、

「マギカイや新リテラに後れを取ると言いたいんですか?」

「わざわざ、実力をすべて見せる必要はないと思いますが」

 と言い合ってどちらも一歩も引かない。

 結果、私に意見を求める運びになったようだ。

「ルベラス魔導公殿は今回の闘技会に参加されますよね? ルベラス魔導公殿としてはどう思われますか?」

「ルベラス魔導公殿が他国になぞ、怯むわけがないだろう。ですよねぇ、魔導公殿」

「ルベラス殿は、魔導公とはいっても成人したてのご令嬢ですから。いくら稀代の魔術師とはいえ、屈強な騎士相手は荷が重いのでは?」

「失礼だぞ、そんな言い方!」

 そしてまたもや、ケンカのような言い争いが始まる。

 うん、こんな子どものケンカのようなことに付き合わされるとは、思わなかった。

 聞いていてあまりいい気分はしないし、なにより心が疲れてくる。いろいろと私も限界だ。こんな時、グレイだったらどうするだろう。

「あのー、」

 私は再び、手を挙げて場を沈めた。
 私がどんな意見を発しようとしているのか、みんなが注目する。

 グレイだったらきっと…………。

「私なら大丈夫ですよ」

 ここで、ニコリと笑ってみせた。

 こう言うに違いない。

「全員まとめて、鎮圧しますから」

 そして《威圧》。笑顔で。




「う………………」

「ぐ………………」

「かはぁ…………」




 もちろん、威力は弱めてある。それでも会議に参加している全員の心(隣の王太子殿下を除く)に、私の《威圧》という名の誠意は突き刺さったらしい。

 みるみる、顔色を変えて押し黙る。

「だから、ゴタゴタうるさく騒ぐのは、止めてくださいね」

 私の最後の念押しに、王太子殿下を除く全員が高速で首を上下に振ることになり、それ以降は会議は静かに進行していったのだった。
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