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第二章
第21話『いってきます』
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朝早く目覚めた。窓の外はまだ日が昇り始めたばかりで、部屋の中は少し暗い。掛け布団を剥がしてしまえば、朝特有の冷えた空気のせいで鳥肌を立ててしまう。もう少し横になってもいいが、今日だけはそんなわけにはいかない。
遂に護衛任務遂行日となった。依頼を受けた五日前は、一日を過ぎるのが遅く感じて、焦らされるようだったが、いざ当日になってみるとあっという間だったと感じてしまう。
ベッドから出て、鏡で自分の顔を確認する。寝巻き姿の私の少し乱れた藍色の髪と、相変わらず左右の色が違う寝ぼけ眼がそこに映る。
未だにこの目の色が違う原因は分からない。数週間通った図書館にもヒントとなるような本もなかった。
「当分オッドアイのことは後回しだなぁ」
部屋で一人そんなことを呟く。
特に私自身の身体に支障があるわけでもないから、問題は無さそうに思える。ただ、少なくとも私の目の色は異端のようで、魔物や悪魔と疑われることがあるということ。黒い眼帯を付ければ青色の右目が隠れて、不気味がられることもないが、公衆の面前で付け忘れないように注意しないといけない。
その眼帯を右目につけて、朝食を摂ろうと食堂へ行く。まだ人は多くないものの、ちらほらと冒険者がいた。皆も起きたばっかりなのか、歩く速度がゆっくりである。
いつものように受取口でバターとハムが乗せられたトーストを貰い、部屋に戻って紅茶とともに頂いた。この朝食も最後だと思うと、感慨深いものがある。いつもより味わって食べたつもりだが、気づいたら皿の上は何もなくなっていた。
朝風呂に入ろうと浴場に向かうと、脱衣所で掃除中の従業員の姿があった。まだ入れませんか、と訊ねると、浴場の方は終わっているので入れますよ、と言われた。
ありがとうございます、と返して服を脱いで浴場に入る。誰一人いない貸切状態で、湯気が全く立ち込めていなかったから、いつもより寒く感じる。さっさと髪と身体を洗って風呂に入ると、気怠げな身体を奮い立たせるような熱さが、足から首元まで全身を刺激した。眠気覚ましにはちょうどよかった。
数分経って風呂から出ると、さきほどの従業員の姿も用具も既に脱衣所からなかった。水気を取り払ってから脱衣所に戻り、バスタオルで身体をしっかり拭いてから着替えた。黒いローブに黒い眼帯。いつもの格好だ。
部屋に戻って持ち物を確認する。といっても大体マジックバッグに入っているから、部屋に忘れ物がないかを確かめるだけだ。
「よし、大丈夫」
鍵を持って部屋を出る。一ヶ月余りこの部屋を拠点として活動してきたが、いざ退室するとなると名残惜しいものもある。それも、私にとって帰る場所がこの部屋以外にないからだ。
私が帰るべき場所もいつか見つかるのかな。
「またのご利用をお待ちしております。いってらっしゃいませ」
受付で鍵を返すと、お辞儀をされながらそう言われて、微笑んだ表情で手を振られた。それに合わせるように私も小さく手を振って、日が殆ど見えるようになって明るくなった外へ出た。
まだそこまで人通りが多くなく、繁華街の通りは普段より歩きやすく感じた。石畳の通りを歩いていると、日中では聞こえないコツンコツンという音が足元から聞こえた。開店の準備をしている武器屋や道具屋の鼻歌も聞こえてくる。お風呂に入ったこともあって、いつになく清々しい。
ギルドに着いて扉を開けると、中には受付のスタッフ、テオしかいなかった。私とテオだけの室内は、余計なものが一切無い伽藍堂な空間だった。目に留まるのは受付と掲示板、あとは天井から吊るされた照明器具だけである。
「おはようございます、レインさん」
「おはよう、テオ」
挨拶を交わし、私は適当なテーブルに付いた。テーブルといっても椅子などはなく、面積の小さい円形のスタンディングテーブルだ。ただ、大人用の高さだから、私が並ぶとテーブルより高い部分が顔しか無くなった。
「お早い出動ですね。しっかり眠れましたか?」
「うん。いつもより早い時間に寝たよ。今日だけは遅れちゃいけないと思って」
ちらと掲示板のほうを見ると、まだ前日から残ている依頼書だけが寂しく貼られていた。まだ新規の依頼が交換されていない状態だ。
「テオも早いね。まだ誰も来てないのに」
「業務ですから。それに今の私にはこの受付が庭みたいなものですので」
そう言いながらテオは手元にある大量の依頼書を坦々と仕分けていた。遠目ではどう分けているのか分からなかったが、時間を掛けて一つ一つ丁寧に目を通していた。私が話し掛けても邪魔になるだけだろうと、テオの姿を眺めていた。
「見ていて楽しいですか?」
ところが私の視線に気付いたのか、テオの方から話しかけてきた。依然として彼女の目は依頼書に集中している。
「いや、そんな量、大変だなぁって」
「地味な仕事ですからね。でも慣れてしまえば他の仕事より楽な方ですよ」
「他の仕事って?」
私が訊くと、テオは一度作業を止めて手を口元に当てて考える仕草をした。
「例えば掲示板で誰にも請けてもらえなかった依頼を遂行、討伐依頼の事前調査や事後調査、新人育成、悪党の捕縛などですね」
そう言われて、再び掲示板が目に映った。あの残った依頼を運営がやり遂げているのか。それらは恐らく報酬金の割が合わなかったり、難度が高すぎる依頼だったりするんだろう。前者はともかく後者が理由で依頼が残っているのならば、運営に加入するのにかなりの実力を強いられることになる。
トリッシュの戦う姿だけは見たことがあったが、アポロンもテオも、私が思っている以上に強いのかもしれない。
「ただ新人育成については少し課題もありまして。魔法使いや治癒師の方がギルド運営にあまりいないので、それらの職業の育成が御座形になりがちなんですよね」
「どうして?」
「ある程度強大な魔法を使える方は研究者になり、治癒師は教会に行ってしまうんですよ。実際、そちらのほうが待遇が良いとも聞きます」
そういえばアレスも、魔術科卒業生は主に研究者になるって言ってたっけ。図書館で読んだ本にも書いてあったが、剣技に比べ魔法はまだまだ発展途上らしいから、待遇も良いというのなら確かに研究者にならない理由が無い。
「だから、もし運営に入るなら、ギルドは喜んで迎えますよ」
素っ気ないながらも、私の目を見てテオは言った。期待はそこまでされてないが、歓迎してくれるというのは間違いなさそうだった。
話しているうちに入り口から冒険者たちがやってきた。最初は一人、次は三人、次は二人と、三々五々となって次々にやってきた。すると依頼書の整理が終わったのか、テオが私の元へ来た。
「まだ出発まで時間がありますから、それまでにレインさん自身の買い物を済ませてみてはいかがでしょう。もうどこの店も開いていますよ」
テオにそう言われて、このままギルドで徒に時を過ごすのも、他の冒険者の邪魔になると思い、わかった、と返事をして、外へ出た。
折角ならこの街を離れる前に今一度この通り見て回ろう。それで必要なものを思い出したからそのときに買えばいい。
武器屋を見た。既に開店しているが、通りを歩く冒険者は誰一人として立ち寄らない。
鉄の杖を買って以来、世話になったことがない。如何に鉄製品が頑丈なのか身を以て感じる。前にそれぞれの属性魔法の威力を上げたいと石の杖が欲しいと思ったが、よくよく考えればそんな杖を二本も三本も持ってても、嵩張るばかりで邪魔にしかならない。マジックバッグに入れてても、一々取り出すのは億劫になる。
鍛冶屋を見た。武器屋とは違い、まだ店の扉は閉められている。ところが店の前に数人の冒険者が、中身の入った布の袋を携えて待っていた。これは本当にまだ開店前なのか、それとも店主が寝坊したのか、私にはわからない。
ここは武器屋の隣にあるものの、立ち寄ったことは一度もない。武器屋で買える杖で事足りるし、聞いた話によると武器や防具を作ってもらうためには、素材が必要らしい。鉄よりも高価な素材私は持っていないし、防具に至っては戦士が纏うような鎧や盾しか作ってもらえないため、恐らく私には無縁の場所になるだろう。
食材屋を見た。店の前に馬車がある。そして食材屋の店主と馬車の持ち主らしき人が話し込んでいる。きっと次に持ち運ぶ野菜や魚介類の相談をしているのだろう。
自分で料理をすることがなかったため、ここで何か買うことはなかったが、食材を運ぶ馬車の往来を何回か見た。あの馬車のおかげで新鮮や野菜や魚が店に並んでいるんだろう。
道具屋を見た。幾人かの冒険者が既に出入りしている。きっと不足したポーションを朝早く買おうとしているのだろう。
そう予想してから、私は自分のマジックバッグに手を突っ込んで、中にあるポーションや魔力瓶を取り出す。いくつか手に持ったが、それ以上は持ちきれず、再びマジックバッグに仕舞った。回復アイテムは充分にあった。
足りないものがあるかと改めて思索していると、マジックバッグそのものに目が止まった。そういえば前に魔物の素材用のマジックバッグも買おうとしていた。それを思い出して、急遽道具屋に足を踏み入れた。
バッグが並んでいる箇所に行くと、トートバッグやショルダーバッグ、ポーチなどといった形が様々なものが陳列されていた。お洒落な見た目なものは無く、茶色や黒色といった地味な色で染まっている。そのうちの一つ、ウエストポーチを手にとってみた。革の触り心地が良く、新品特有の綺麗な匂いがした。
【名称】アイテムバッグ
【成分】カウハイドレザー
【属性】-
【破損】0%
【効果】劣化遅延
へぇ、普通はアイテムバッグって言うのか。
並べられているものは全て同じ性能のようだった。バッグの口も開けてみると、中は例によって真っ暗である。手を突っ込んでみると、上腕の半分ぐらいまで入ったところで底に手がついた。見た目に反してリュックサックぐらいの容量はあるようだが、やはり私のマジックバッグに比べたら大したことはない。
でも、魔物の素材だけいれるのならこれで問題ないか。値段は…銀貨5枚か。ここらに並べられている商品の中でも特に高い。それだけ需要もあるということなのだろう。ここ一ヶ月で一番の出費かもしれない。
アイテムバッグを購入して、早速腰に付けてみた。中身がまだないため重さは感じない。軽くぴょんぴょんと跳ねてみても、ズレ落ちたりバックル部分が外れてしまったりということも無い。いい買い物をしたんじゃないかな?
店を出ると、先程よりも通りの冒険者の往来が増えていた。武器屋にも人の出入りが目立ち、鍛冶屋の前にいた冒険者の姿はなかった。既に街の外へ出ている者もいる。そして食材屋の前にいた馬車はギルドの前に移動していた。
そろそろかと思ってギルドへ戻ったが、中を見るとまだ冒険者たちが掲示板の前で屯していた。もう少し空いてから中に入ろうと考えていた。
「レインちゃん…だね?」
ふと名前を呼ばれて、ちょっと吃驚しながら、声のした方を見ると、脹よかな見た目の男性がいた。どっかで見たことあるような、ないような…。
思い出した。まだトリッシュと依頼を受けていた頃に会った商人だ。ということは。
「えっと、ボンゴレさん?」
その名前を呼ぶと、男性の表情は少し明るくなった。
「おお、よく覚えててくれたね」
そう言ってボンゴレさんは握手をしようと右手を出してきた。それに応じて私は彼の右手を握った。私よりも大きく、ゴツゴツとした仕事人の手だった。
「もしかして、今回の護衛依頼で私を指名したのって?」
私が訊くと、ボンゴレさんは大きく頷いた。
「私だよ」
「そうだったんだ。でも、どうして私を?」
テオは私の実力が認められているから、と言っていたが、それはギルド運営側の認識なだけであって、関わりのない冒険者や国民には周知されづらいはずだ。特に商人のボンゴレさんみたいな、定期的に別の場所へ移動を強いられる人間なら尚更だ。
私がした質問に、ボンゴレさんは昇りきった日を見つめながら答えてくれた。
「…三週間ぐらい前だったかな?レインちゃんが悪党の襲撃に対して応援に駆けつけてくれた、あの日の馬車に私もいたんだよ。御者としてね」
「そうだったの?」
私が確認するように聞くと、ボンゴレさんはゆっくり頷いた。全く知らなかった。
…いや、あのときのことを思い出すと、私が駆けつけて悪党を払い除けた際に意識を失っていた。気がついたときには宿屋の部屋にいたわけだから、知らないのも当然か。
「あの時はありがとう。それと…初めて会った時に失礼な態度をとって申し訳なかった」
初めて会った時…といえば、確かにボンゴレさんの私に対する態度に違和感があった。あんまり関わりを持ちたくないような、どこか私を敬遠するような。でも、当時の私はそんなこと深く考えず、その後会うこともなかったので、すっかり忘れていた。
「私も忘れてたから、大丈夫」
しかし改めて言われると、段々と当時のボンゴレさんが何故そんな態度をとったのか気になってきた。例えば、素行の悪い相手と対面した時ならあんな態度をとるのも頷ける。だけど私はこの世界に来て間もない身である。知られるような噂なんて無いし、周りの反応を見ていても巫山戯た態度はとっていないはずだ。
他に何かあったかと思い返してみると、一つだけ周りと違うことがあった。いや、というかこれしか無いような気がする。
「ボンゴレさんの態度が変だったのは…私の目を見たから?」
私の言葉に、ボンゴレさんは意表を突かれて驚いた顔をしたが、じきに観念したように息を吐いた。
「あぁ、片方の目の色が違う人間なんて会ったことなかったからね」
異常な相手を目の前に忌避するのは無理もない。ギルドに入る時にも魔物なんじゃないかと疑われた訳だから、寧ろボンゴレさんの反応は自然だ。
「でも君の悪党と対峙したとき、ギルドを体現したような姿勢だと思って、考えを悛めたよ。だから今回の依頼は、君の実力を買ったのは確かだけど、お詫びって面もあるかな」
「お詫び?」
「や、完全に自己満足なんだけどね。指名したらこうやって話す機会もあるだろうと」
なるほど。だから高ランクの冒険者じゃなくて、私を指名したのか。
「さて、そろそろ出発の時間になるかな。私は一度ギルドに報告しに行くから、先に馬車に乗ってくれて構わない。改めて今回はよろしく頼むよ」
「うん。こちらこそ」
お互いに軽く会釈をして、ボンゴレさんはギルドへ入っていった。
私はすぐそこの馬車に目を遣った。前から、馬、貨物車、乗客車、と言った並びである。今まではこんなまじまじと見ることが無かったが、今一度見ると横にも縦にもデカい。
先頭の二匹の馬は子どもに撫でられている。一匹の黒い馬は、もっと撫でられたいと顔を子供に近づけている。人懐っこいようだ。もう一匹の茶色の馬は、周りのことなんか気にせずにむしゃむしゃと生の野菜を食っている。触られても気にしない様子はクールともとれるし、食いしん坊だともとれる。
外からじゃ貨物車内の様子は分からないが、その大きさからして、大量の食料を容れられるだろう。この護衛依頼の報酬金が大銀貨4枚だったが、一ヶ月の宿屋代が銀貨三枚だと考えると、多分に貰っているという気がしてきた。
いやいや、この輸送のお陰で国民が飢餓になることがないのなら、決して安い仕事ではない。第一、道中何が起こるか分からないのは以前目の当たりにしたではないか。気を引き締めないと。
「レイン!」
後ろから聞き覚えのある声がして、ぱっと振り向いた。トリッシュだった。
「トリッシュ、来てくれたんだ」
「勿論!レインが護衛依頼を受けたって聞いたからには、見送らないわけにはいかないでしょ」
私は只の一冒険者だけど、こうして見送りしてくれる人がいると思うと、胸のあたりがとても温かくなっていった。
「ヴェレンで過ごしたら、またこっちに戻ってくるの?」
「ううん、いい機会だから、各地を巡ってみようかなって。暫くここには戻ってこないよ」
「そっかぁ。寂しくなるなぁ」
一瞬トリッシュが眉を落としたが、直ぐに明るい表情になった。
「でも、レインならきっとどこでもやっていけるよ!」
そう言われると、自信が持てる気がした。不思議とトリッシュの言葉は素直に受け取れる。
「ありがとう」
気付けば街の人々が馬車の周りに集っている。皆、今か今かと馬車の出発を待ち侘びていた。乗客車をちらと見ると、冒険者が一人、二人と乗り込んでいた。私と同じ護衛任務を任された人だろう。
「じゃあ、いってきます」
トリッシュにそう告げて、乗客車に乗り込んだ。すでに先に入っていた男女の冒険者が長椅子に座っており、よろしく、と挨拶をしてきたので、私も、よろしくお願いします、と返した。
暫くすると男の冒険者が一人乗り込んできた。私や他の二人が、よろしく、と言うと、男の方は表情一つ変えずに、よろしく、と返してきた。
それ以降は誰も乗ってくることはなく、どうやら今回の依頼はこの四人で遂行するようだ。意識していなかったが、これが初めて他の冒険者との協働である。男女の方は二人で他愛ない会話をして、男の方は目を閉じて身体を休めている。
間もなくして馬車が動き出した。それと同時に外から歓声が聞こえてきた。気を付けて、とか、よろしく頼むよ、とか、そんな言葉も聞こえてくる。見ると大勢の人々が手を振っていた。その中にはトリッシュの姿もあった。それらに応えようと、私は窓から顔と手を出して、大きく手を振った。
段々と小さくなっていく人々に、その姿が見えなくなるまで、声が聞こえなくなるまで、私は手を振っていた。
遂に護衛任務遂行日となった。依頼を受けた五日前は、一日を過ぎるのが遅く感じて、焦らされるようだったが、いざ当日になってみるとあっという間だったと感じてしまう。
ベッドから出て、鏡で自分の顔を確認する。寝巻き姿の私の少し乱れた藍色の髪と、相変わらず左右の色が違う寝ぼけ眼がそこに映る。
未だにこの目の色が違う原因は分からない。数週間通った図書館にもヒントとなるような本もなかった。
「当分オッドアイのことは後回しだなぁ」
部屋で一人そんなことを呟く。
特に私自身の身体に支障があるわけでもないから、問題は無さそうに思える。ただ、少なくとも私の目の色は異端のようで、魔物や悪魔と疑われることがあるということ。黒い眼帯を付ければ青色の右目が隠れて、不気味がられることもないが、公衆の面前で付け忘れないように注意しないといけない。
その眼帯を右目につけて、朝食を摂ろうと食堂へ行く。まだ人は多くないものの、ちらほらと冒険者がいた。皆も起きたばっかりなのか、歩く速度がゆっくりである。
いつものように受取口でバターとハムが乗せられたトーストを貰い、部屋に戻って紅茶とともに頂いた。この朝食も最後だと思うと、感慨深いものがある。いつもより味わって食べたつもりだが、気づいたら皿の上は何もなくなっていた。
朝風呂に入ろうと浴場に向かうと、脱衣所で掃除中の従業員の姿があった。まだ入れませんか、と訊ねると、浴場の方は終わっているので入れますよ、と言われた。
ありがとうございます、と返して服を脱いで浴場に入る。誰一人いない貸切状態で、湯気が全く立ち込めていなかったから、いつもより寒く感じる。さっさと髪と身体を洗って風呂に入ると、気怠げな身体を奮い立たせるような熱さが、足から首元まで全身を刺激した。眠気覚ましにはちょうどよかった。
数分経って風呂から出ると、さきほどの従業員の姿も用具も既に脱衣所からなかった。水気を取り払ってから脱衣所に戻り、バスタオルで身体をしっかり拭いてから着替えた。黒いローブに黒い眼帯。いつもの格好だ。
部屋に戻って持ち物を確認する。といっても大体マジックバッグに入っているから、部屋に忘れ物がないかを確かめるだけだ。
「よし、大丈夫」
鍵を持って部屋を出る。一ヶ月余りこの部屋を拠点として活動してきたが、いざ退室するとなると名残惜しいものもある。それも、私にとって帰る場所がこの部屋以外にないからだ。
私が帰るべき場所もいつか見つかるのかな。
「またのご利用をお待ちしております。いってらっしゃいませ」
受付で鍵を返すと、お辞儀をされながらそう言われて、微笑んだ表情で手を振られた。それに合わせるように私も小さく手を振って、日が殆ど見えるようになって明るくなった外へ出た。
まだそこまで人通りが多くなく、繁華街の通りは普段より歩きやすく感じた。石畳の通りを歩いていると、日中では聞こえないコツンコツンという音が足元から聞こえた。開店の準備をしている武器屋や道具屋の鼻歌も聞こえてくる。お風呂に入ったこともあって、いつになく清々しい。
ギルドに着いて扉を開けると、中には受付のスタッフ、テオしかいなかった。私とテオだけの室内は、余計なものが一切無い伽藍堂な空間だった。目に留まるのは受付と掲示板、あとは天井から吊るされた照明器具だけである。
「おはようございます、レインさん」
「おはよう、テオ」
挨拶を交わし、私は適当なテーブルに付いた。テーブルといっても椅子などはなく、面積の小さい円形のスタンディングテーブルだ。ただ、大人用の高さだから、私が並ぶとテーブルより高い部分が顔しか無くなった。
「お早い出動ですね。しっかり眠れましたか?」
「うん。いつもより早い時間に寝たよ。今日だけは遅れちゃいけないと思って」
ちらと掲示板のほうを見ると、まだ前日から残ている依頼書だけが寂しく貼られていた。まだ新規の依頼が交換されていない状態だ。
「テオも早いね。まだ誰も来てないのに」
「業務ですから。それに今の私にはこの受付が庭みたいなものですので」
そう言いながらテオは手元にある大量の依頼書を坦々と仕分けていた。遠目ではどう分けているのか分からなかったが、時間を掛けて一つ一つ丁寧に目を通していた。私が話し掛けても邪魔になるだけだろうと、テオの姿を眺めていた。
「見ていて楽しいですか?」
ところが私の視線に気付いたのか、テオの方から話しかけてきた。依然として彼女の目は依頼書に集中している。
「いや、そんな量、大変だなぁって」
「地味な仕事ですからね。でも慣れてしまえば他の仕事より楽な方ですよ」
「他の仕事って?」
私が訊くと、テオは一度作業を止めて手を口元に当てて考える仕草をした。
「例えば掲示板で誰にも請けてもらえなかった依頼を遂行、討伐依頼の事前調査や事後調査、新人育成、悪党の捕縛などですね」
そう言われて、再び掲示板が目に映った。あの残った依頼を運営がやり遂げているのか。それらは恐らく報酬金の割が合わなかったり、難度が高すぎる依頼だったりするんだろう。前者はともかく後者が理由で依頼が残っているのならば、運営に加入するのにかなりの実力を強いられることになる。
トリッシュの戦う姿だけは見たことがあったが、アポロンもテオも、私が思っている以上に強いのかもしれない。
「ただ新人育成については少し課題もありまして。魔法使いや治癒師の方がギルド運営にあまりいないので、それらの職業の育成が御座形になりがちなんですよね」
「どうして?」
「ある程度強大な魔法を使える方は研究者になり、治癒師は教会に行ってしまうんですよ。実際、そちらのほうが待遇が良いとも聞きます」
そういえばアレスも、魔術科卒業生は主に研究者になるって言ってたっけ。図書館で読んだ本にも書いてあったが、剣技に比べ魔法はまだまだ発展途上らしいから、待遇も良いというのなら確かに研究者にならない理由が無い。
「だから、もし運営に入るなら、ギルドは喜んで迎えますよ」
素っ気ないながらも、私の目を見てテオは言った。期待はそこまでされてないが、歓迎してくれるというのは間違いなさそうだった。
話しているうちに入り口から冒険者たちがやってきた。最初は一人、次は三人、次は二人と、三々五々となって次々にやってきた。すると依頼書の整理が終わったのか、テオが私の元へ来た。
「まだ出発まで時間がありますから、それまでにレインさん自身の買い物を済ませてみてはいかがでしょう。もうどこの店も開いていますよ」
テオにそう言われて、このままギルドで徒に時を過ごすのも、他の冒険者の邪魔になると思い、わかった、と返事をして、外へ出た。
折角ならこの街を離れる前に今一度この通り見て回ろう。それで必要なものを思い出したからそのときに買えばいい。
武器屋を見た。既に開店しているが、通りを歩く冒険者は誰一人として立ち寄らない。
鉄の杖を買って以来、世話になったことがない。如何に鉄製品が頑丈なのか身を以て感じる。前にそれぞれの属性魔法の威力を上げたいと石の杖が欲しいと思ったが、よくよく考えればそんな杖を二本も三本も持ってても、嵩張るばかりで邪魔にしかならない。マジックバッグに入れてても、一々取り出すのは億劫になる。
鍛冶屋を見た。武器屋とは違い、まだ店の扉は閉められている。ところが店の前に数人の冒険者が、中身の入った布の袋を携えて待っていた。これは本当にまだ開店前なのか、それとも店主が寝坊したのか、私にはわからない。
ここは武器屋の隣にあるものの、立ち寄ったことは一度もない。武器屋で買える杖で事足りるし、聞いた話によると武器や防具を作ってもらうためには、素材が必要らしい。鉄よりも高価な素材私は持っていないし、防具に至っては戦士が纏うような鎧や盾しか作ってもらえないため、恐らく私には無縁の場所になるだろう。
食材屋を見た。店の前に馬車がある。そして食材屋の店主と馬車の持ち主らしき人が話し込んでいる。きっと次に持ち運ぶ野菜や魚介類の相談をしているのだろう。
自分で料理をすることがなかったため、ここで何か買うことはなかったが、食材を運ぶ馬車の往来を何回か見た。あの馬車のおかげで新鮮や野菜や魚が店に並んでいるんだろう。
道具屋を見た。幾人かの冒険者が既に出入りしている。きっと不足したポーションを朝早く買おうとしているのだろう。
そう予想してから、私は自分のマジックバッグに手を突っ込んで、中にあるポーションや魔力瓶を取り出す。いくつか手に持ったが、それ以上は持ちきれず、再びマジックバッグに仕舞った。回復アイテムは充分にあった。
足りないものがあるかと改めて思索していると、マジックバッグそのものに目が止まった。そういえば前に魔物の素材用のマジックバッグも買おうとしていた。それを思い出して、急遽道具屋に足を踏み入れた。
バッグが並んでいる箇所に行くと、トートバッグやショルダーバッグ、ポーチなどといった形が様々なものが陳列されていた。お洒落な見た目なものは無く、茶色や黒色といった地味な色で染まっている。そのうちの一つ、ウエストポーチを手にとってみた。革の触り心地が良く、新品特有の綺麗な匂いがした。
【名称】アイテムバッグ
【成分】カウハイドレザー
【属性】-
【破損】0%
【効果】劣化遅延
へぇ、普通はアイテムバッグって言うのか。
並べられているものは全て同じ性能のようだった。バッグの口も開けてみると、中は例によって真っ暗である。手を突っ込んでみると、上腕の半分ぐらいまで入ったところで底に手がついた。見た目に反してリュックサックぐらいの容量はあるようだが、やはり私のマジックバッグに比べたら大したことはない。
でも、魔物の素材だけいれるのならこれで問題ないか。値段は…銀貨5枚か。ここらに並べられている商品の中でも特に高い。それだけ需要もあるということなのだろう。ここ一ヶ月で一番の出費かもしれない。
アイテムバッグを購入して、早速腰に付けてみた。中身がまだないため重さは感じない。軽くぴょんぴょんと跳ねてみても、ズレ落ちたりバックル部分が外れてしまったりということも無い。いい買い物をしたんじゃないかな?
店を出ると、先程よりも通りの冒険者の往来が増えていた。武器屋にも人の出入りが目立ち、鍛冶屋の前にいた冒険者の姿はなかった。既に街の外へ出ている者もいる。そして食材屋の前にいた馬車はギルドの前に移動していた。
そろそろかと思ってギルドへ戻ったが、中を見るとまだ冒険者たちが掲示板の前で屯していた。もう少し空いてから中に入ろうと考えていた。
「レインちゃん…だね?」
ふと名前を呼ばれて、ちょっと吃驚しながら、声のした方を見ると、脹よかな見た目の男性がいた。どっかで見たことあるような、ないような…。
思い出した。まだトリッシュと依頼を受けていた頃に会った商人だ。ということは。
「えっと、ボンゴレさん?」
その名前を呼ぶと、男性の表情は少し明るくなった。
「おお、よく覚えててくれたね」
そう言ってボンゴレさんは握手をしようと右手を出してきた。それに応じて私は彼の右手を握った。私よりも大きく、ゴツゴツとした仕事人の手だった。
「もしかして、今回の護衛依頼で私を指名したのって?」
私が訊くと、ボンゴレさんは大きく頷いた。
「私だよ」
「そうだったんだ。でも、どうして私を?」
テオは私の実力が認められているから、と言っていたが、それはギルド運営側の認識なだけであって、関わりのない冒険者や国民には周知されづらいはずだ。特に商人のボンゴレさんみたいな、定期的に別の場所へ移動を強いられる人間なら尚更だ。
私がした質問に、ボンゴレさんは昇りきった日を見つめながら答えてくれた。
「…三週間ぐらい前だったかな?レインちゃんが悪党の襲撃に対して応援に駆けつけてくれた、あの日の馬車に私もいたんだよ。御者としてね」
「そうだったの?」
私が確認するように聞くと、ボンゴレさんはゆっくり頷いた。全く知らなかった。
…いや、あのときのことを思い出すと、私が駆けつけて悪党を払い除けた際に意識を失っていた。気がついたときには宿屋の部屋にいたわけだから、知らないのも当然か。
「あの時はありがとう。それと…初めて会った時に失礼な態度をとって申し訳なかった」
初めて会った時…といえば、確かにボンゴレさんの私に対する態度に違和感があった。あんまり関わりを持ちたくないような、どこか私を敬遠するような。でも、当時の私はそんなこと深く考えず、その後会うこともなかったので、すっかり忘れていた。
「私も忘れてたから、大丈夫」
しかし改めて言われると、段々と当時のボンゴレさんが何故そんな態度をとったのか気になってきた。例えば、素行の悪い相手と対面した時ならあんな態度をとるのも頷ける。だけど私はこの世界に来て間もない身である。知られるような噂なんて無いし、周りの反応を見ていても巫山戯た態度はとっていないはずだ。
他に何かあったかと思い返してみると、一つだけ周りと違うことがあった。いや、というかこれしか無いような気がする。
「ボンゴレさんの態度が変だったのは…私の目を見たから?」
私の言葉に、ボンゴレさんは意表を突かれて驚いた顔をしたが、じきに観念したように息を吐いた。
「あぁ、片方の目の色が違う人間なんて会ったことなかったからね」
異常な相手を目の前に忌避するのは無理もない。ギルドに入る時にも魔物なんじゃないかと疑われた訳だから、寧ろボンゴレさんの反応は自然だ。
「でも君の悪党と対峙したとき、ギルドを体現したような姿勢だと思って、考えを悛めたよ。だから今回の依頼は、君の実力を買ったのは確かだけど、お詫びって面もあるかな」
「お詫び?」
「や、完全に自己満足なんだけどね。指名したらこうやって話す機会もあるだろうと」
なるほど。だから高ランクの冒険者じゃなくて、私を指名したのか。
「さて、そろそろ出発の時間になるかな。私は一度ギルドに報告しに行くから、先に馬車に乗ってくれて構わない。改めて今回はよろしく頼むよ」
「うん。こちらこそ」
お互いに軽く会釈をして、ボンゴレさんはギルドへ入っていった。
私はすぐそこの馬車に目を遣った。前から、馬、貨物車、乗客車、と言った並びである。今まではこんなまじまじと見ることが無かったが、今一度見ると横にも縦にもデカい。
先頭の二匹の馬は子どもに撫でられている。一匹の黒い馬は、もっと撫でられたいと顔を子供に近づけている。人懐っこいようだ。もう一匹の茶色の馬は、周りのことなんか気にせずにむしゃむしゃと生の野菜を食っている。触られても気にしない様子はクールともとれるし、食いしん坊だともとれる。
外からじゃ貨物車内の様子は分からないが、その大きさからして、大量の食料を容れられるだろう。この護衛依頼の報酬金が大銀貨4枚だったが、一ヶ月の宿屋代が銀貨三枚だと考えると、多分に貰っているという気がしてきた。
いやいや、この輸送のお陰で国民が飢餓になることがないのなら、決して安い仕事ではない。第一、道中何が起こるか分からないのは以前目の当たりにしたではないか。気を引き締めないと。
「レイン!」
後ろから聞き覚えのある声がして、ぱっと振り向いた。トリッシュだった。
「トリッシュ、来てくれたんだ」
「勿論!レインが護衛依頼を受けたって聞いたからには、見送らないわけにはいかないでしょ」
私は只の一冒険者だけど、こうして見送りしてくれる人がいると思うと、胸のあたりがとても温かくなっていった。
「ヴェレンで過ごしたら、またこっちに戻ってくるの?」
「ううん、いい機会だから、各地を巡ってみようかなって。暫くここには戻ってこないよ」
「そっかぁ。寂しくなるなぁ」
一瞬トリッシュが眉を落としたが、直ぐに明るい表情になった。
「でも、レインならきっとどこでもやっていけるよ!」
そう言われると、自信が持てる気がした。不思議とトリッシュの言葉は素直に受け取れる。
「ありがとう」
気付けば街の人々が馬車の周りに集っている。皆、今か今かと馬車の出発を待ち侘びていた。乗客車をちらと見ると、冒険者が一人、二人と乗り込んでいた。私と同じ護衛任務を任された人だろう。
「じゃあ、いってきます」
トリッシュにそう告げて、乗客車に乗り込んだ。すでに先に入っていた男女の冒険者が長椅子に座っており、よろしく、と挨拶をしてきたので、私も、よろしくお願いします、と返した。
暫くすると男の冒険者が一人乗り込んできた。私や他の二人が、よろしく、と言うと、男の方は表情一つ変えずに、よろしく、と返してきた。
それ以降は誰も乗ってくることはなく、どうやら今回の依頼はこの四人で遂行するようだ。意識していなかったが、これが初めて他の冒険者との協働である。男女の方は二人で他愛ない会話をして、男の方は目を閉じて身体を休めている。
間もなくして馬車が動き出した。それと同時に外から歓声が聞こえてきた。気を付けて、とか、よろしく頼むよ、とか、そんな言葉も聞こえてくる。見ると大勢の人々が手を振っていた。その中にはトリッシュの姿もあった。それらに応えようと、私は窓から顔と手を出して、大きく手を振った。
段々と小さくなっていく人々に、その姿が見えなくなるまで、声が聞こえなくなるまで、私は手を振っていた。
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