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11話
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私がバラド王子と別れることを宣言してから、2ヶ月が経とうとしている。
屋敷に戻ってからは、ガラレド侯爵家の領主であるお父様の仕事を手伝う日々だ。
ミドアルダ国は魔法主義の国となりそうだけど、領民の非魔法士が魔法士から理不尽な目に合うことは避けたい。
そのため領地では数の力で対処できるような問題は非魔法士の人達に任せて、魔法士達の負担を減らすことにしていた。
今日は部屋で事務仕事の報告をお父様にすると、話しておきたいことがあるようだ。
「フロンが城を出て2ヵ月になるな。その間に国内で変化が起き、優秀な魔法士が非魔法士を蔑ろにする出来事が多くなっているようだ」
「予想できたことですが、非魔法士で構成されている城の兵士達は大丈夫でしょうか?」
「兵士の一人と話す機会があった。どうやらフロンがいなくなってから、宰相が「どんな状況でも命を捨てる覚悟で魔法士を守れ」と命令を出したらしい」
今までも魔法士は兵士達の後ろで魔法を使っているから、守るべき存在なのは間違いではない。
どうやら今の兵士達は魔法士のためなら捨て駒となるよう指示があり、魔法士に意見することも許されないようだ。
魔法士から暴言を吐かれたり、魔法に巻き込まれる者も増えてきたようで、辞める者が続出しているらしい。
宰相の行動を聞き、私はお父様に尋ねる。
「魔法派閥としては、非魔法士しかいない兵士の数を減らそうとしているのでしょうか?」
「いや、むしろ兵士は減った以上に増やしているらしい。新兵は最初から魔法士に尽くすと決意しているようだ」
面接の際にそんな人ばかり採用している節があると、お父様は兵士の一人から聞いたようだ。
魔法が使える人の数は少なくて、兵士達は非魔法士だとしても鍛えているから戦力になる。
まずは城の人達から変えていくつもりなのか、非魔法士が蔑ろにされているようだ。
魔法派閥の人達が本格的に動き出したようだけど、城の内状をバラドと別れた私が関与するつもりはない。
お父様から城の兵士達について聞き、以前から魔法派閥に嫌われていた私は警戒を強める。
それが表情から伝わったようで、正面にいるお父様は言い辛そうに数枚の紙を机の上に置いた。
「話すことは他にもある。フロンは不快になりそうだが、これを見せなければならない……結婚式の招待状だ」
結婚するのはバラド王子で、どうやら王妃にする人が決まったようだ。
そして招待状が届いたようだけど……婚約を解消した私が、式に出席するの?
王家の行動で不快になり、結婚式の招待状を眺めて。
「……それは、私が行く必要があるのでしょうか?」
「侯爵家だから送りはしたという感じだな。バラド殿下とは婚約を解消しているし、断ることはできる。むしろ来るなと文章から読み取れた」
そう言い、お父様が招待状を私に見せてくれる。
受け取った紙に目を通すと、一部だけど豪快な字で書かれている部分が気になってしまう。
恐らくラミカが招待状を書いてみたくなったようだけど、受け取った人は「これが今後ミドアルダ国の側妃になるのか」と不安になりそうな気がする。
それほど歪な文字で気になりながら、私は書かれた内容を確認していく。
結婚式は妻になるコリサが最初に行われて、その次に側室となるラミカの結婚式が行われるようだ。
「コリサ様は城で働いていた伯爵家の令嬢ですね。表情が変わらない綺麗な人でした」
彼女がこれからの王妃となるのなら問題なさそうだけど、側妃がラミカなのは問題か。
招待状を読んでいくと、確かに私達の参加は遠慮して欲しいと読み取れてしまう。
私が婚約を解消したことや、断っても問題ないと書かれていたからだ。
「この内容なら不参加で問題ないでしょう。王家の人達も望んでいそうです」
「そうだな。書状を出しておこう」
結婚式は絶対に欠席すると決めて、数ヶ月が経過する。
バラド王子の結婚式を経て、ミドアルダ国では大きな変化が起ころうとしていた。
屋敷に戻ってからは、ガラレド侯爵家の領主であるお父様の仕事を手伝う日々だ。
ミドアルダ国は魔法主義の国となりそうだけど、領民の非魔法士が魔法士から理不尽な目に合うことは避けたい。
そのため領地では数の力で対処できるような問題は非魔法士の人達に任せて、魔法士達の負担を減らすことにしていた。
今日は部屋で事務仕事の報告をお父様にすると、話しておきたいことがあるようだ。
「フロンが城を出て2ヵ月になるな。その間に国内で変化が起き、優秀な魔法士が非魔法士を蔑ろにする出来事が多くなっているようだ」
「予想できたことですが、非魔法士で構成されている城の兵士達は大丈夫でしょうか?」
「兵士の一人と話す機会があった。どうやらフロンがいなくなってから、宰相が「どんな状況でも命を捨てる覚悟で魔法士を守れ」と命令を出したらしい」
今までも魔法士は兵士達の後ろで魔法を使っているから、守るべき存在なのは間違いではない。
どうやら今の兵士達は魔法士のためなら捨て駒となるよう指示があり、魔法士に意見することも許されないようだ。
魔法士から暴言を吐かれたり、魔法に巻き込まれる者も増えてきたようで、辞める者が続出しているらしい。
宰相の行動を聞き、私はお父様に尋ねる。
「魔法派閥としては、非魔法士しかいない兵士の数を減らそうとしているのでしょうか?」
「いや、むしろ兵士は減った以上に増やしているらしい。新兵は最初から魔法士に尽くすと決意しているようだ」
面接の際にそんな人ばかり採用している節があると、お父様は兵士の一人から聞いたようだ。
魔法が使える人の数は少なくて、兵士達は非魔法士だとしても鍛えているから戦力になる。
まずは城の人達から変えていくつもりなのか、非魔法士が蔑ろにされているようだ。
魔法派閥の人達が本格的に動き出したようだけど、城の内状をバラドと別れた私が関与するつもりはない。
お父様から城の兵士達について聞き、以前から魔法派閥に嫌われていた私は警戒を強める。
それが表情から伝わったようで、正面にいるお父様は言い辛そうに数枚の紙を机の上に置いた。
「話すことは他にもある。フロンは不快になりそうだが、これを見せなければならない……結婚式の招待状だ」
結婚するのはバラド王子で、どうやら王妃にする人が決まったようだ。
そして招待状が届いたようだけど……婚約を解消した私が、式に出席するの?
王家の行動で不快になり、結婚式の招待状を眺めて。
「……それは、私が行く必要があるのでしょうか?」
「侯爵家だから送りはしたという感じだな。バラド殿下とは婚約を解消しているし、断ることはできる。むしろ来るなと文章から読み取れた」
そう言い、お父様が招待状を私に見せてくれる。
受け取った紙に目を通すと、一部だけど豪快な字で書かれている部分が気になってしまう。
恐らくラミカが招待状を書いてみたくなったようだけど、受け取った人は「これが今後ミドアルダ国の側妃になるのか」と不安になりそうな気がする。
それほど歪な文字で気になりながら、私は書かれた内容を確認していく。
結婚式は妻になるコリサが最初に行われて、その次に側室となるラミカの結婚式が行われるようだ。
「コリサ様は城で働いていた伯爵家の令嬢ですね。表情が変わらない綺麗な人でした」
彼女がこれからの王妃となるのなら問題なさそうだけど、側妃がラミカなのは問題か。
招待状を読んでいくと、確かに私達の参加は遠慮して欲しいと読み取れてしまう。
私が婚約を解消したことや、断っても問題ないと書かれていたからだ。
「この内容なら不参加で問題ないでしょう。王家の人達も望んでいそうです」
「そうだな。書状を出しておこう」
結婚式は絶対に欠席すると決めて、数ヶ月が経過する。
バラド王子の結婚式を経て、ミドアルダ国では大きな変化が起ころうとしていた。
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