捨てられた私が今度はあなたを捨てる

nanahi

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4 実家からの使い

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「エルザ、大丈夫かい?」

ふらふらと幽霊のように歩くエルザに村人が心配げに声をかけてきた。

「あんた、頼れる実家はないのかい?」

村人たちはまさかエルザが自分たちの領主である侯爵家の娘だと夢にも思っていない。

「さあ。ふかし芋だよ。少しでも食べて元気出すんだよ」
「……」

エルザは生気のない目を村人に向け「……りがと、ございます」と消え入るような声で礼を言った。

「可哀想に。あんな可愛い子を置いていなくなるなんて、酷い夫だよ!」

村人はふらふらと家に入っていくエルザを見てグレイへの怒りを口にした。




それから数日後ことだった。村の入り口に立派な黒塗りの馬車が止まった。

「ありゃ、立派な馬車だよ。どこの貴族だ?」
「一体こんな小さな村に何の用があるんだろうね?」

村人たちは驚きながら噂話をした。

「お嬢様、エルザお嬢様──!」
「ノア!?どうしてここに!!」

侯爵家からの使いだった。エルザが生まれる前から仕えてくれている忠実な執事のノアだ。

「お嬢、様……」

ノアはかすれた声でエルザを呼んだ。

一年ぶりに見る馴染みの顔は白髪混じりの髪が乱れひどくやつれて見えた。十歳は歳をとってしまったようだった。ノアの暗く落ち窪んだ目を見たエルザはまるでノアが死神を連れて来たような不吉な恐ろしさに襲われた。

すぐに言葉を出そうとしないノアは「お嬢、お嬢さま……」と言ったきり目に涙を溜めわなわなと震える手をエルザに差し出した。

「一体どうしたの、ノア!?お父様かお母様に何かあったの!?」

エルザはノアに駆け寄りその手を握った。ノアの手は氷のように冷え切っていた。エルザの問いかけにノアはふるふると首を左右に振った。

「ち、違います……ミランダ、ミランダお嬢様が、土砂崩れに巻き込まれ、若旦那様と、ご一緒に亡くなられ──」

そこまで言ってノアは顎を震わせ言葉を絶った。重大な言伝をエルザにする責務から何とか言葉を紡いだがあまりの悲しみに堰を切ったように泣き出した。

「お姉、さま……が?」

嘘よ。

エルザには白百合のように美しく優しい姉の笑顔しか浮かんでこなかった。

「お腹に、お腹に初めてのお子様をみごもられておりましたのに──」

唸るようにノアが言葉を絞り出した。後継の姉はエルザが屋敷を出たあと婿を取り侯爵にとって初孫となる子を腹に宿したまま亡くなったのだった。

「いや!いやよ!そんなの嘘よ!!お姉様あっ!!」

エルザの目から涙が溢れた。ふたりは手を取り合いしばらくの間、慟哭した。


ひとしきりふたりで泣いた後ノアがエルザに侯爵からの伝言を伝えた。

「とにかくお屋敷に戻り、ミランダ様たちの葬儀に出席して欲しいとのことでございます」

エルザは悲劇によって再び侯爵家に戻ることになった。

迎えの馬車の中で揺られながらエルザは、

グレイがいなくなり、愛する姉までいなくなった。
こんな私にこの先幸せはやってくるのだろうか?

と窓の外を眺めながら不安に思っていた。



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