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祈りの間に着くと、バーバラが中央で汗まみれになって祈っていた。
バーバラは私の姿をみとめると、美しさを取り戻した私に一瞬戸惑ったが、すぐに牙を向く蛇のように私を睨んだ。
「必要ないといいましたのに!」
「しかし、バーバラ」
殿下の言葉に歯向かうように、バーバラは言葉を続けた。
「私は占い専門の聖女だから、ちょっとだけ魔物が苦手なだけですわ!コツを掴めば、すぐにでも祓えるはずです!」
コツって……。
普通レベルの聖女なら、祈るだけでも、小さい魔物くらいなら退けられるはずだけど?
王宮の上空に飛び交う小物の魔物さえ祓えていないのは明白だった。
「殿下、私の出る幕ではないようです」
対抗心が見え見えのバーバラに嫌気がさし、さっさと去ろうとした私の手を、殿下が引き留めた。
「行かないでくれ!」
「ですが……」
「頼む、助けてくれ」
困惑する私に殿下は必死の形相で懇願した。
どうしてこんなことに。
私は仕方なく、バーバラにレクチャーすることになった。
「ただ祈るだけでいいわけではありません。厄災を祓う祈りとは、魔物たちとの戦争をひとりで引き受けるようなものです」
「そんな大変だなんて、聞いてないわ!!」
バーバラはお役目を軽く考えていたようだ。
「もっと簡単に祓える方法は!?教えなさいよ!!」
バーバラは声を荒げた。
私から殿下を奪っておいて、傲慢なこと。
「ひとつ私が手伝えることがあります。ですが、もしバーバラさんの聖なる力が足りない場合、この方法は危険を伴います」
「失礼ね!私はれっきとした聖女よ!十分力があるわ!さっさとやってみなさいよ!」
思うように魔物を祓えない上に、かつて追い出した元婚約者を殿下が頼っている姿に、バーバラの苛立ちは最高潮を迎えていた。
「本当にいいのですね?」
再度確認した私に、バーバラは下品にも顎で合図した。
「そんなにおっしゃるのなら。始めます」
私は口火を切った。
「実は、この五芒星は魔物たちのいるエリアと繋がっていません。エリアと繋がらないと、こちらの力も相手に伝わりません。ですので、私の力を充填して、外との空間を繋ぎます。その上で、直接魔物を退治してください」
「え?直接??」
バーバラは事態がよく飲み込めていないようだ。
「はい。私はそうして魔物と戦っていました。イメージで聖なる武器を生成してみてください」
「え?どうやって?」
「……」
話にならなかった。
バーバラにはきっとほとんど力がない。
だから、五芒星とエリアを繋ぐこともできないし、聖なる武器を生成することもできない。空の結界などなおさらだ。
「あなた……本当に力がありますの?殿下に嘘をついているのでは?」
「うるさい!」
バーバラは逆上した。
「さっさとエリアと繋げ!全部魔物を祓ってやる!!」
「無理はされないほうが……」
「早くやれ!!」
殿下はただおろおろしたまま、私たちのやり取りを見ている。
激昂状態のバーバラを止めることはできなそうだった。
「どうなっても知りませんわよ」
令嬢の品格すら失ったバーバラの前に、私は右手を差し出した。
「私の手を握れば、聖なる力があなたに伝わってエリアが開くでしょう。ただし」
私ははたと思いとどまって、手を引っ込めようとした。力の弱いバーバラにはあまりに危険な手段だったからだ。
「ドミニク!!」
その時、突如、怒鳴り声が部屋に響いた。
バーバラは私の姿をみとめると、美しさを取り戻した私に一瞬戸惑ったが、すぐに牙を向く蛇のように私を睨んだ。
「必要ないといいましたのに!」
「しかし、バーバラ」
殿下の言葉に歯向かうように、バーバラは言葉を続けた。
「私は占い専門の聖女だから、ちょっとだけ魔物が苦手なだけですわ!コツを掴めば、すぐにでも祓えるはずです!」
コツって……。
普通レベルの聖女なら、祈るだけでも、小さい魔物くらいなら退けられるはずだけど?
王宮の上空に飛び交う小物の魔物さえ祓えていないのは明白だった。
「殿下、私の出る幕ではないようです」
対抗心が見え見えのバーバラに嫌気がさし、さっさと去ろうとした私の手を、殿下が引き留めた。
「行かないでくれ!」
「ですが……」
「頼む、助けてくれ」
困惑する私に殿下は必死の形相で懇願した。
どうしてこんなことに。
私は仕方なく、バーバラにレクチャーすることになった。
「ただ祈るだけでいいわけではありません。厄災を祓う祈りとは、魔物たちとの戦争をひとりで引き受けるようなものです」
「そんな大変だなんて、聞いてないわ!!」
バーバラはお役目を軽く考えていたようだ。
「もっと簡単に祓える方法は!?教えなさいよ!!」
バーバラは声を荒げた。
私から殿下を奪っておいて、傲慢なこと。
「ひとつ私が手伝えることがあります。ですが、もしバーバラさんの聖なる力が足りない場合、この方法は危険を伴います」
「失礼ね!私はれっきとした聖女よ!十分力があるわ!さっさとやってみなさいよ!」
思うように魔物を祓えない上に、かつて追い出した元婚約者を殿下が頼っている姿に、バーバラの苛立ちは最高潮を迎えていた。
「本当にいいのですね?」
再度確認した私に、バーバラは下品にも顎で合図した。
「そんなにおっしゃるのなら。始めます」
私は口火を切った。
「実は、この五芒星は魔物たちのいるエリアと繋がっていません。エリアと繋がらないと、こちらの力も相手に伝わりません。ですので、私の力を充填して、外との空間を繋ぎます。その上で、直接魔物を退治してください」
「え?直接??」
バーバラは事態がよく飲み込めていないようだ。
「はい。私はそうして魔物と戦っていました。イメージで聖なる武器を生成してみてください」
「え?どうやって?」
「……」
話にならなかった。
バーバラにはきっとほとんど力がない。
だから、五芒星とエリアを繋ぐこともできないし、聖なる武器を生成することもできない。空の結界などなおさらだ。
「あなた……本当に力がありますの?殿下に嘘をついているのでは?」
「うるさい!」
バーバラは逆上した。
「さっさとエリアと繋げ!全部魔物を祓ってやる!!」
「無理はされないほうが……」
「早くやれ!!」
殿下はただおろおろしたまま、私たちのやり取りを見ている。
激昂状態のバーバラを止めることはできなそうだった。
「どうなっても知りませんわよ」
令嬢の品格すら失ったバーバラの前に、私は右手を差し出した。
「私の手を握れば、聖なる力があなたに伝わってエリアが開くでしょう。ただし」
私ははたと思いとどまって、手を引っ込めようとした。力の弱いバーバラにはあまりに危険な手段だったからだ。
「ドミニク!!」
その時、突如、怒鳴り声が部屋に響いた。
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