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「セバス!水がない、水を持って来い!」
喉が渇いたミカエルが水差しを掲げ、執事を呼んだ。
「無理でございます」
執事は暗い顔で拒否した。
「おいおい、お前ふざけてるのか?裏の泉からいくらでも汲めるだろうが」
「とっくに枯れております」
「はあ?」
ミカエルは執事の顔を凝視したが、生真面目な彼はミカエルに嘘をついたことがない。ミカエルは血相を変えて裏の泉へ走った。
「おい…嘘だろ?」
執事の言うとおり、あんなにふんだんに湧いていた泉がきれいさっぱり枯れていた。この周辺には井戸を掘っても水が出ず、近くに川もなく、水源としてこの泉だけが頼りだった。
「何で枯れた。突然すぎるだろ!?」
呆然としてミカエルはつぶやいた。そして思い当たった。
「まさか…マルグリッタとの婚姻契約が終わったせいなのか…?」
ミカエルはぞっとした。これまで真面目に目を通してこなかった契約書には何と書いてあった?
確か、水の他に…金?
「ミカエル様あ~」
けばい化粧の男爵令嬢ダフネがシナを作りながらミカエルに抱きついてきた。
「欲しい宝石が見つかったんですの~買ってくださる~?」
「ダフネ、やばいことになったかもしれない」
「ええ?」
ミカエルとダフネは走り、金庫の前へたどり着いた。壁一面を覆う巨大な金庫。中には数え切れないほどの金貨や金塊が入っているはずだ。
ミカエルは震える手で暗証番号を組み合わせながら金庫のダイヤルを回す。だが、いくらやり直しても一向に鍵は開かなかった。
「番号は変えましてよ」
マルグリッタが二人の後ろに立った。
「マルグリッタ、お前!番号を元に戻せ!」
「そうよおばさん!私今すぐ欲しい物があるんだけど?」
一歳しか歳が変わらないのにマルグリッタのことをおばさん呼ばわりする無礼なダフネを、汚い物でも見るような目でマルグリットは眺めた。
「金庫の中のお金はすべて我がゴールダー家からの出資なんですの。男爵令嬢さんに使用許可など出していないのですけれど?」
そう言ってマルグリッタは巻物のように長い明細書をダフネに突きつけた。
「借用書ですわ。あなたがこれまで金庫のお金で買った金額…合計、38億リル、きっちりそろえて返していただきましょうか?」
マルグリッタは氷のような微笑をダフネに返した。ダフネは巨額の借金に血の気が引き、ガタガタ震えだした。
「ミ、ミカエル様、何とかしてええ!」
「お、お、俺が使うのを許可したんだ!ならいいだろう!?」
「残念ながら…契約内容は細部まで確認して頂かないと…」
マルグリッタは眉をひそめてミカエルを見た。
「あなた自身がお使いになるなら問題ありませんのよ。けれど、出金理由に愛人項目は認められておりませんの」
直後、ダフネは行方をくらました。
喉が渇いたミカエルが水差しを掲げ、執事を呼んだ。
「無理でございます」
執事は暗い顔で拒否した。
「おいおい、お前ふざけてるのか?裏の泉からいくらでも汲めるだろうが」
「とっくに枯れております」
「はあ?」
ミカエルは執事の顔を凝視したが、生真面目な彼はミカエルに嘘をついたことがない。ミカエルは血相を変えて裏の泉へ走った。
「おい…嘘だろ?」
執事の言うとおり、あんなにふんだんに湧いていた泉がきれいさっぱり枯れていた。この周辺には井戸を掘っても水が出ず、近くに川もなく、水源としてこの泉だけが頼りだった。
「何で枯れた。突然すぎるだろ!?」
呆然としてミカエルはつぶやいた。そして思い当たった。
「まさか…マルグリッタとの婚姻契約が終わったせいなのか…?」
ミカエルはぞっとした。これまで真面目に目を通してこなかった契約書には何と書いてあった?
確か、水の他に…金?
「ミカエル様あ~」
けばい化粧の男爵令嬢ダフネがシナを作りながらミカエルに抱きついてきた。
「欲しい宝石が見つかったんですの~買ってくださる~?」
「ダフネ、やばいことになったかもしれない」
「ええ?」
ミカエルとダフネは走り、金庫の前へたどり着いた。壁一面を覆う巨大な金庫。中には数え切れないほどの金貨や金塊が入っているはずだ。
ミカエルは震える手で暗証番号を組み合わせながら金庫のダイヤルを回す。だが、いくらやり直しても一向に鍵は開かなかった。
「番号は変えましてよ」
マルグリッタが二人の後ろに立った。
「マルグリッタ、お前!番号を元に戻せ!」
「そうよおばさん!私今すぐ欲しい物があるんだけど?」
一歳しか歳が変わらないのにマルグリッタのことをおばさん呼ばわりする無礼なダフネを、汚い物でも見るような目でマルグリットは眺めた。
「金庫の中のお金はすべて我がゴールダー家からの出資なんですの。男爵令嬢さんに使用許可など出していないのですけれど?」
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「借用書ですわ。あなたがこれまで金庫のお金で買った金額…合計、38億リル、きっちりそろえて返していただきましょうか?」
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「お、お、俺が使うのを許可したんだ!ならいいだろう!?」
「残念ながら…契約内容は細部まで確認して頂かないと…」
マルグリッタは眉をひそめてミカエルを見た。
「あなた自身がお使いになるなら問題ありませんのよ。けれど、出金理由に愛人項目は認められておりませんの」
直後、ダフネは行方をくらました。
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