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第24話:階段の下、止まる足音

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古いアパートの二階に住んでいたころの話だ。

築四十年を超える、木造二階建て。
玄関のドアを開けると、すぐに急な木の階段があり、二階の部屋へとつながっていた。

そのアパートに引っ越して、三日目くらいからだろうか。

夜中の三時になると、階段の下で足音が止まる。

ぴたり、と止まるのだ。

上ってくる気配はない。
ドアも開いていない。
誰かがいるわけでもない。

ただ、「そこに誰かいる」という“存在の気配”だけが、
階段の一段目にべったりと染みついているような感じがした。

私は最初、気のせいだと思っていた。
疲れてるんだろう、と自分に言い聞かせていた。

けれど、一週間経っても、その足音は消えなかった。

それどころか、日を追うごとに“距離”が近づいてきている気がした。

ある日、帰宅して階段を上っているとき、
背後からふと、もうひとつ、遅れてついてくる足音が聞こえた。

振り向いても誰もいない。

気のせいだ、そう思い直して足早に部屋に戻ると――

玄関のすぐ横にある姿見に、私の後ろに立つ何かの影が映っていた。

すぐに振り返っても、そこには何もなかった。

だが、その夜も、三時きっかりに“足音”は来た。

こん、こん、こん――と階段の下で止まり、
今度はゆっくり、一段ずつ上ってきた。

ぎし、ぎし、ぎし……。

一段、また一段。
重たい足取りが、私の部屋に向かって近づいてくる。

私は布団の中で息を殺した。

階段の音が止まったのは、私の部屋の玄関の前だった。

次の瞬間――ノブが、カチャ、と音を立てた。

鍵は、かかっている。
でも、それでも、ノブはゆっくりと回された。

そして、その夜以降、階段の足音は消えた。

……が、代わりに、部屋の中で足音がするようになった。

トイレに行くふりをして、部屋の隅に目をやると、
たしかに、畳の上に“湿った足跡”が残っていた。

私はとうとう引っ越すことを決めた。

退去の日、最後に階段を下りながらふと振り返ると、
一段目のところに、なぜか“真新しい足型のシール”が貼られていた。

子どもの足のような形。
でも、サイズは……どう考えても、大人のものだった。

私はそれを見て、大家に聞いた。

「これ、いつ貼ったんですか?」

すると、大家は怪訝そうに答えた。

「何のこと? あそこには何も貼ってないよ」

もう一度、階段を見た。
そこには、もう足型などなかった。

けれど、湿った木の匂いの奥に、
まだ“誰かがそこに立っている”気配だけが、残っていた。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第24話『階段の下、止まる足音』をお読みいただきありがとうございました。

今回は、日常にひっそりと入り込む“見えない侵入者”をテーマにお届けしました。

「足音」は、目に見えない恐怖をかたちにする最もシンプルな道具です。
だからこそ、気づかないふりが一番危うい。

次回は『第25話:このアパートには、三番目の部屋がない』を予定しています。

―――――――――――――――――――――――

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今、あなたの後ろから聞こえる音――それは、本当に自分の足音ですか?

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