32 / 102
第31話:読まれていない卒業文集が、誰かの名前を増やしていた
しおりを挟む
卒業式のあと、教室の棚に文集が並べられていた。
クラス全員分を綴じた、厚めの文集。名前順に収められたそれは、
きちんと一人一人の思い出や将来の夢が書き記されている。
俺たちの学年は全員で32人。
文集の最後にはクラス写真と寄せ書きのページがあり、
それを読みながら、みんなで泣いた。
……はずだった。
数年後、ふと立ち寄った実家で、
古い文集を見つけた俺は、懐かしさからページをめくった。
「山口、斉藤……」
懐かしい名前が並ぶ。あの頃の顔が思い浮かぶ。
だが、ふと――知らない名前が一つ、混じっていた。
「間宮 梢」
そんな名前の同級生は、いなかった。
写真にも、文集の寄せ書きにも、いなかったはずだ。
不思議に思って、他の同級生にも文集を見せて回った。
だが、誰の文集にも「間宮 梢」のページは、ちゃんとあった。
そして皆、こう言う。
「え? いたじゃん、間宮って。髪長くて、図書委員だった子でしょ?」
俺の記憶には、そんなやつはいない。
記念写真を見ても、どう見ても31人しか写っていない。
32人目は、どこにいる?
疑問は深まるばかりだったが、決定的だったのは、
最後のページ――“将来の夢”の欄だった。
「誰にも忘れられないこと。
そうすれば、わたしはずっとここにいられるから。」
その一文のあと、文集の裏表紙の内側に、
鉛筆で書かれた小さな言葉があった。
「あとひとり、忘れたら、あなたの番。」
俺は怖くなって、文集を燃やそうとした。
だが火にくべても、なぜか燃えなかった。
翌朝、また机の上に戻っていた。
しかも表紙の名前が、「間宮 梢」文集になっていた。
気がつくと、他の名前はすべて消えていた。
いま、俺の記憶からも少しずつ――
“本当のクラスメイト”の名前が、薄れていっている。
誰が本当にいたのか、もうわからない。
でも、間宮 梢のページだけは、読み返すたびに、
彼女の声が耳元でささやくのだ。
「忘れないでね。そしたら、あなたは消えなくてすむから」
俺は今夜も、文集を読んでいる。
自分の名前がまだ載っているか、確認するために。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第31話『読まれていない卒業文集が、誰かの名前を増やしていた』をお読みいただき、ありがとうございました。
学校という空間には、残された記憶が多く存在します。
それが物質――たとえば文集や写真のような形で残るとき、
私たちはその“記憶”が正しいかどうか、つい疑ってしまいます。
“あの子、いたっけ?”
その疑問が、忘れてはいけない誰かを呼び戻すことになるのかもしれません。
次回は『第32話:切り抜いた制服のボタンが、夜ごと戻ってくる』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
もし、昔の文集を読み返す機会があれば――
“覚えていない誰か”が書いたページがないか、注意してみてください。
もしそれがあったら、絶対に“破ってはいけません”。
続きを楽しみにしてくださっている方は、ぜひ「いいね」と「フォロー」で応援していただければ幸いです。
クラス全員分を綴じた、厚めの文集。名前順に収められたそれは、
きちんと一人一人の思い出や将来の夢が書き記されている。
俺たちの学年は全員で32人。
文集の最後にはクラス写真と寄せ書きのページがあり、
それを読みながら、みんなで泣いた。
……はずだった。
数年後、ふと立ち寄った実家で、
古い文集を見つけた俺は、懐かしさからページをめくった。
「山口、斉藤……」
懐かしい名前が並ぶ。あの頃の顔が思い浮かぶ。
だが、ふと――知らない名前が一つ、混じっていた。
「間宮 梢」
そんな名前の同級生は、いなかった。
写真にも、文集の寄せ書きにも、いなかったはずだ。
不思議に思って、他の同級生にも文集を見せて回った。
だが、誰の文集にも「間宮 梢」のページは、ちゃんとあった。
そして皆、こう言う。
「え? いたじゃん、間宮って。髪長くて、図書委員だった子でしょ?」
俺の記憶には、そんなやつはいない。
記念写真を見ても、どう見ても31人しか写っていない。
32人目は、どこにいる?
疑問は深まるばかりだったが、決定的だったのは、
最後のページ――“将来の夢”の欄だった。
「誰にも忘れられないこと。
そうすれば、わたしはずっとここにいられるから。」
その一文のあと、文集の裏表紙の内側に、
鉛筆で書かれた小さな言葉があった。
「あとひとり、忘れたら、あなたの番。」
俺は怖くなって、文集を燃やそうとした。
だが火にくべても、なぜか燃えなかった。
翌朝、また机の上に戻っていた。
しかも表紙の名前が、「間宮 梢」文集になっていた。
気がつくと、他の名前はすべて消えていた。
いま、俺の記憶からも少しずつ――
“本当のクラスメイト”の名前が、薄れていっている。
誰が本当にいたのか、もうわからない。
でも、間宮 梢のページだけは、読み返すたびに、
彼女の声が耳元でささやくのだ。
「忘れないでね。そしたら、あなたは消えなくてすむから」
俺は今夜も、文集を読んでいる。
自分の名前がまだ載っているか、確認するために。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第31話『読まれていない卒業文集が、誰かの名前を増やしていた』をお読みいただき、ありがとうございました。
学校という空間には、残された記憶が多く存在します。
それが物質――たとえば文集や写真のような形で残るとき、
私たちはその“記憶”が正しいかどうか、つい疑ってしまいます。
“あの子、いたっけ?”
その疑問が、忘れてはいけない誰かを呼び戻すことになるのかもしれません。
次回は『第32話:切り抜いた制服のボタンが、夜ごと戻ってくる』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
もし、昔の文集を読み返す機会があれば――
“覚えていない誰か”が書いたページがないか、注意してみてください。
もしそれがあったら、絶対に“破ってはいけません”。
続きを楽しみにしてくださっている方は、ぜひ「いいね」と「フォロー」で応援していただければ幸いです。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる