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第38話:写真立ての中にだけ現れる“知らない家族”

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祖父が亡くなったあと、遺品整理をしていたときのことだ。

古い箪笥の奥から、木製の写真立てが出てきた。
やや色褪せた木枠には、祖父母らしき若い男女と、三人の子供たちが写っていた。

「……これ、誰?」

妹がぽつりとつぶやいた。
祖父母の若い頃の写真は見たことがある。でも――

この写真に写っている三人の子供たちは、誰も知らない顔だった。

しかも、母も叔母も「こんな写真、初めて見た」と言う。

不思議に思いながらも、その日は疲れ切っていたため、
写真立てごと仏間の棚に置いて、それきりになった。

だが――その夜。

俺は夢を見た。

縁側に座っている祖父の隣に、
あの**“知らない三人の子供”たち**がいた。

彼らは静かに笑いながら、祖父の手を握っていた。
祖父も穏やかな顔で、「ようやく会えたな」と呟いた。

目が覚めたとき、汗でびっしょりになっていた。
悪夢ではなかった。けれど、妙に胸がざわついた。

翌朝、仏間を見に行くと、
昨夜置いておいたはずの写真立ての中身が変わっていた。

子供がひとり減っていたのだ。

「あれ? 三人じゃなかった……?」

慌てて家族に訊いたが、誰も最初の状態を覚えていないという。
それどころか、「もともと二人だったんじゃない?」とさえ言う。

その晩、再び夢を見た。
今度は、祖父と子供たち――いや、子供ふたりしかいなかった。

祖父が彼らの肩を抱きながら、寂しそうに笑っていた。

そして三日目の朝。
写真立てには、最後の子供ひとりしか写っていなかった。

まるで写真の中で、“誰かが一人ずつ消えている”かのようだった。

怖くなった俺は、写真を仏壇に供え、住職に相談した。
彼は言った。

「それは、おじいさんの心残りが具現化したものかもしれませんね。
もしかしたら、亡くなった命を、写真の中で呼び戻そうとしていたのかも」

「でも、あの子たちは……」

「ええ、おそらく“家族”だったのでしょう。
ただ、この世で認められなかった。
だからせめて――写真の中でだけでも、並んでいたかった」

その言葉に、妙に納得してしまった。

四日目の朝。

写真立てには、誰も写っていなかった。

ただ、背景の縁側だけが残っていた。
そこに祖父の姿も、子供たちの姿も、もうなかった。

俺はそれをそっと、仏壇の下にしまった。
二度と、誰の手にも触れさせないように。

けれど、ときどき――
家族の集合写真を撮ると、
見知らぬ子供の姿が、どこかに紛れていることがある。

それは、笑っているときもあれば、
悲しげにこちらを見ているときもある。

写真立ての中だけで生き続ける家族は、
今も静かに、誰かの記憶のすき間で佇んでいるのかもしれない。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第38話『写真立ての中にだけ現れる“知らない家族”』をお読みいただきありがとうございました。

写真とは不思議なものです。
一度写されたものは、記録として残ると同時に、
それが“本当にそこにいた”ことの証明にもなります。

だからこそ、写ってはいけないものが写ると、
それは時に、過去からの語りかけになるのかもしれません。

次回は『第39話:エレベーターの“閉じかけた扉”の向こうから聞こえた声』を予定しています。

―――――――――――――――――――――――

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