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第39話:エレベーターの“閉じかけた扉”の向こうから聞こえた声
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会社帰りの夜、ビルのエレベーターを待っていた。
深夜残業のあとで、フロアにいるのは俺ひとり。
警備員も帰り支度を始めていて、静まり返ったビルの中は妙に空気が冷たい。
「……来ないな」
そう思いながら、チカチカと明滅する呼び出しボタンを何度か押す。
ようやく「チン」と音がして、ドアが滑るように開いた。
だが、乗り込もうとした俺は、一歩足を止めた。
中に誰かがいた。
――真っ黒なスーツ姿の中年男が、
エレベーターの奥の隅で、まっすぐこちらを見ていた。
無表情。
でも、目だけが異様に見開かれている。
何か、訴えるような目だった。
俺が立ち尽くしていると、
ドアがそのまま閉まり始める。
「……あっ」
思わず駆け寄ろうとしたが、
ちょうどその瞬間、中から声が聞こえた。
「……ここに、いないでくれ……」
掠れた、しぼり出すような声。
そして、ドアが完全に閉じる直前に、男の姿が“すっと”消えた。
まるで、奥へ引き込まれるように。
俺は慌てて階段を駆け下りた。
後日、ビルの管理会社に聞いたところ、
その日の夜、そのエレベーターは定期点検で停止中だったという。
つまり、あのとき動いていたはずがない。
しかも、数年前にそのビルで、
エレベーターの中で心筋梗塞を起こし、帰らぬ人となった男性の話を聞いた。
亡くなったのは、夜遅くまで残業をしていた営業部長。
発見されたのは、翌朝のことだったという。
「その人の顔、見覚えありますか?」
写真を見せられて、俺は言葉を失った。
あのときの、目を見開いていた中年男と――同じ顔だった。
「ここに、いないでくれ……」
彼の声は、誰に向けられていたのか。
それとも、自分自身に言い聞かせていたのか――
わからない。
ただ、あのビルの深夜のエレベーターだけは、今も乗らないようにしている。
開きかけた扉の向こうには、
“この世の外側”がつながっていることがあるのかもしれない。
そしてそれは――
誰にも予告されずに、ほんの一瞬だけ開く。
あなたの背後でも、今――
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第39話『エレベーターの“閉じかけた扉”の向こうから聞こえた声』をお読みいただき、ありがとうございました。
密閉された空間、そして“行き先”の見えない移動手段は、
私たちに不安や不信を呼び起こします。
とくにエレベーターは、閉じた世界。
その中で起こる“異常”は、日常に潜む非日常として、
最もリアリティを持って迫ってきます。
次回は『第40話:最後の警備記録、映っていた“いないはずの人物”』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
深夜のエレベーターに、誰も乗っていないはずなのに「到着」すること、ありませんか?
それは、“乗せてはいけない誰か”を降ろすための動作かもしれません。
本作を気に入っていただけたら、「いいね」と「フォロー」で応援していただけると嬉しいです。
次の話も、あなたの“すぐ隣”にあります。
深夜残業のあとで、フロアにいるのは俺ひとり。
警備員も帰り支度を始めていて、静まり返ったビルの中は妙に空気が冷たい。
「……来ないな」
そう思いながら、チカチカと明滅する呼び出しボタンを何度か押す。
ようやく「チン」と音がして、ドアが滑るように開いた。
だが、乗り込もうとした俺は、一歩足を止めた。
中に誰かがいた。
――真っ黒なスーツ姿の中年男が、
エレベーターの奥の隅で、まっすぐこちらを見ていた。
無表情。
でも、目だけが異様に見開かれている。
何か、訴えるような目だった。
俺が立ち尽くしていると、
ドアがそのまま閉まり始める。
「……あっ」
思わず駆け寄ろうとしたが、
ちょうどその瞬間、中から声が聞こえた。
「……ここに、いないでくれ……」
掠れた、しぼり出すような声。
そして、ドアが完全に閉じる直前に、男の姿が“すっと”消えた。
まるで、奥へ引き込まれるように。
俺は慌てて階段を駆け下りた。
後日、ビルの管理会社に聞いたところ、
その日の夜、そのエレベーターは定期点検で停止中だったという。
つまり、あのとき動いていたはずがない。
しかも、数年前にそのビルで、
エレベーターの中で心筋梗塞を起こし、帰らぬ人となった男性の話を聞いた。
亡くなったのは、夜遅くまで残業をしていた営業部長。
発見されたのは、翌朝のことだったという。
「その人の顔、見覚えありますか?」
写真を見せられて、俺は言葉を失った。
あのときの、目を見開いていた中年男と――同じ顔だった。
「ここに、いないでくれ……」
彼の声は、誰に向けられていたのか。
それとも、自分自身に言い聞かせていたのか――
わからない。
ただ、あのビルの深夜のエレベーターだけは、今も乗らないようにしている。
開きかけた扉の向こうには、
“この世の外側”がつながっていることがあるのかもしれない。
そしてそれは――
誰にも予告されずに、ほんの一瞬だけ開く。
あなたの背後でも、今――
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第39話『エレベーターの“閉じかけた扉”の向こうから聞こえた声』をお読みいただき、ありがとうございました。
密閉された空間、そして“行き先”の見えない移動手段は、
私たちに不安や不信を呼び起こします。
とくにエレベーターは、閉じた世界。
その中で起こる“異常”は、日常に潜む非日常として、
最もリアリティを持って迫ってきます。
次回は『第40話:最後の警備記録、映っていた“いないはずの人物”』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
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深夜のエレベーターに、誰も乗っていないはずなのに「到着」すること、ありませんか?
それは、“乗せてはいけない誰か”を降ろすための動作かもしれません。
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次の話も、あなたの“すぐ隣”にあります。
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