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第40話:最後の警備記録、映っていた“いないはずの人物”

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大型商業施設の夜間警備をしていた頃の話だ。

そのビルは都心にある新しいショッピングモールで、
最新の監視カメラが無数に設置されていた。

警備室には、夜通し映像が映し出される巨大なモニターが並び、
俺はその中のひとつ、エントランスホールの映像を見ていた。

時刻は深夜2時すぎ。

自動ドアがゆっくりと開いた。

だが――センサーが反応するには、人の接近が必要だ。
それなのに、誰もそこにいなかった。

「……また誤作動か?」

そう思いながら映像を巻き戻し、再確認した。

すると――画面の隅、観葉植物の陰から、
スーツ姿の女がふらりと現れていた。

長い髪。下を向いたまま、まるで眠っているような足取り。
だが、次の瞬間、画面がノイズ混じりに乱れ、女の姿は消えた。

その後、警備記録を保存するために、バックアップサーバーから該当映像を取り出そうとした。

しかし、その時間帯の記録だけ、すっぽりと抜け落ちていた。

不審に思い、同僚の警備員に話すと、彼は顔をこわばらせた。

「……それ、たぶん“白石さん”だよ」

「白石さん?」

「三年前にさ、このビルの建設中に墜落事故で亡くなった女性設計士。
当時の警備員がさ、何度か深夜の記録映像に彼女を見たって言ってた」

さらに調べてみると、
その女性が最後に手がけていたのが、まさにあのエントランスホールだったという。

設計段階で予期せぬ工期変更が重なり、
連日徹夜続きの末に、疲労と不注意で足場から転落――

誰にも見守られず、照明の消えた夜のビルでひとり、
彼女は最期を迎えた。

以来、深夜2時を過ぎた頃になると、カメラに“誰かが歩く姿”が映るという噂が、警備員の間で囁かれていた。

その人物は、顔を見せない。
ただ、ゆっくりとホールを横切り、
そして、自動ドアの前で消える。

“誰かを待っている”ようにも、“出ていこうとしている”ようにも見えるという。

俺は、その日以来、
夜の映像を巻き戻すことをやめた。

見てしまったら、
次は自分が“記録される側”になる気がしたからだ。

きっと、あの時の彼女も、
画面の向こうから誰かに気づかれるのを待っていたのだろう。

でも、誰も気づかず――
だから今も、同じ時間、同じ場所に立ち続けている。

あなたが監視カメラの映像を見たとき、
もし“いないはずの誰か”がそこにいたら、
その人は、何年も前から、ずっとあなたを見ていたのかもしれない。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第40話『最後の警備記録、映っていた“いないはずの人物”』をお読みいただき、ありがとうございました。

記録というものは、残すためにあると同時に、
時として“忘れてはいけないこと”を突きつけてきます。

見てしまったこと、記録されていたこと。
それが過去の断片だと信じたいのは、私たち自身なのかもしれません。

次回は『第41話:誰も住んでいない空き家から届いた手紙』を予定しています。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
監視カメラは、すべてを見ているわけではありません。
でも、“見てはいけないもの”だけは、なぜか必ず映る。

そんな話が、まだまだ続きます。
よろしければ「いいね」と「フォロー」で、百の物語の最後までお付き合いください。
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