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第45話:鏡にだけ映る階段下の男
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古びた社員寮に越してきてから、変なことが続いている。
この建物には一階から地下に降りる古い階段があるのだが、
管理人からは「立ち入り禁止」ときつく言われていた。
理由は、「危ないから」。
実際、地下の扉には錆びた南京錠がかかっており、
鍵穴も歪んでいて、開けられる様子はなかった。
ただ、寮の共用トイレの前に設置された姿見の鏡が、その階段の手前にある。
何気なく通るたびにその鏡に目をやると、いつからか、階段の下に“誰か”が映るようになった。
黒いスーツ姿の男。
ぼさぼさの髪に、青白い顔。
まるで、ずっと同じ場所で何かを待っているかのような風情。
だが振り返っても、そこには誰もいない。
最初は気のせいかと思った。
鏡の歪み、光の反射。
そう思い込もうとした。
けれど、映る男の姿は日を追うごとに、階段を一段ずつ登ってくる。
一週間後には、階段の中腹に立っていた。
そして、昨日――
鏡の中の男が、俺と目を合わせた。
心臓が跳ね、鏡の前から逃げ出した。
けれど、振り返ると、鏡の中には何も映っていない。
その晩、夢を見た。
誰もいない地下階段を、男が無言で登ってくる。
じわりじわりと、一段ずつ。
顔は鏡に映ったままの、あの男。
手には、錆びた南京錠がぶら下がっていた。
そして彼が最上段まで来たとき、俺はなぜか鏡の前に立っていて、
鏡越しに“階段の自分”と向き合っていた。
男はゆっくりと口を開き――
「おまえ、俺の代わりに死んでくれるか」
そこで目が覚めた。
汗びっしょりで、部屋の空気が重く沈んでいる。
気を落ち着かせようと、洗面所へ行った。
鏡を見た瞬間、背筋が凍った。
鏡に映っているのは、俺ではなかった。
スーツを着た男――
あの、地下から登ってきたはずの男が、こちらを見て微笑んでいた。
そして、後ろにあるはずの扉が、ゆっくりと開いていく音が、現実の世界から聞こえた。
今、俺の後ろにいるのは――誰だ?
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第45話『鏡にだけ映る階段下の男』をお読みいただき、ありがとうございました。
鏡は本来、真実を映すもの。
しかしそれが、現実と違うものを映したとしたら――
“鏡の世界”の方が本物で、私たちが偽物なのかもしれません。
次回は『第46話:誰もいないはずの自動ドア』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
鏡の中のあなたは、今日も同じ顔をしていますか?
“すこし違う”その違和感に気づいたとき、
あなたの世界は、すでに入れ替わっているのかもしれません。
「いいね」と「フォロー」で、
残された物語の扉を、あなたと共に開いていきましょう。
この建物には一階から地下に降りる古い階段があるのだが、
管理人からは「立ち入り禁止」ときつく言われていた。
理由は、「危ないから」。
実際、地下の扉には錆びた南京錠がかかっており、
鍵穴も歪んでいて、開けられる様子はなかった。
ただ、寮の共用トイレの前に設置された姿見の鏡が、その階段の手前にある。
何気なく通るたびにその鏡に目をやると、いつからか、階段の下に“誰か”が映るようになった。
黒いスーツ姿の男。
ぼさぼさの髪に、青白い顔。
まるで、ずっと同じ場所で何かを待っているかのような風情。
だが振り返っても、そこには誰もいない。
最初は気のせいかと思った。
鏡の歪み、光の反射。
そう思い込もうとした。
けれど、映る男の姿は日を追うごとに、階段を一段ずつ登ってくる。
一週間後には、階段の中腹に立っていた。
そして、昨日――
鏡の中の男が、俺と目を合わせた。
心臓が跳ね、鏡の前から逃げ出した。
けれど、振り返ると、鏡の中には何も映っていない。
その晩、夢を見た。
誰もいない地下階段を、男が無言で登ってくる。
じわりじわりと、一段ずつ。
顔は鏡に映ったままの、あの男。
手には、錆びた南京錠がぶら下がっていた。
そして彼が最上段まで来たとき、俺はなぜか鏡の前に立っていて、
鏡越しに“階段の自分”と向き合っていた。
男はゆっくりと口を開き――
「おまえ、俺の代わりに死んでくれるか」
そこで目が覚めた。
汗びっしょりで、部屋の空気が重く沈んでいる。
気を落ち着かせようと、洗面所へ行った。
鏡を見た瞬間、背筋が凍った。
鏡に映っているのは、俺ではなかった。
スーツを着た男――
あの、地下から登ってきたはずの男が、こちらを見て微笑んでいた。
そして、後ろにあるはずの扉が、ゆっくりと開いていく音が、現実の世界から聞こえた。
今、俺の後ろにいるのは――誰だ?
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第45話『鏡にだけ映る階段下の男』をお読みいただき、ありがとうございました。
鏡は本来、真実を映すもの。
しかしそれが、現実と違うものを映したとしたら――
“鏡の世界”の方が本物で、私たちが偽物なのかもしれません。
次回は『第46話:誰もいないはずの自動ドア』を予定しています。
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