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第48話:ベランダに干したはずの、あの赤い服
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アパートの三階、風通しのいいベランダが自慢だった。
その日も朝から洗濯をして、
いつものように衣類を干していた。
赤いカーディガンを一枚。
もう着古していて、そろそろ捨てようかと思っていたものだ。
けれど、その赤がなんとなく目に残って、
「最後に一度だけ着よう」と、
なんとなくベランダに吊した。
夕方、取り込もうとしたとき――
赤いカーディガンだけが消えていた。
風に飛ばされたのかと思って、
ベランダの下、道路沿い、アパートの裏側まで探した。
けれど、どこにも見つからない。
そしてその夜。
ベッドで眠ろうとしたとき、
ふと部屋の隅にあるクローゼットに目が止まった。
開けた記憶はない。
なのに、扉が少しだけ、開いていた。
なんとなく、手を伸ばして中を覗く。
……そこに、赤いカーディガンがかかっていた。
しかも、干したときよりも、綺麗に畳まれていた。
アイロンをかけたようにシワもなく、
まるで誰かが丁寧に仕舞ってくれたかのように。
怖くなってすぐに捨てようとした。
けれど、手に取った瞬間――
カーディガンの襟元に、小さな名前の刺繍があった。
それは、自分の名前ではなかった。
『なつこ』
知り合いにも、そんな名前の女はいない。
気味が悪くて、その夜は眠れなかった。
翌朝、クローゼットをもう一度確認すると――
赤いカーディガンはまた、きちんと掛けられていた。
昨日捨てたはずだ。
ゴミ袋に入れて、外の集積所に置いた。
けれど、まるでそれを嘲笑うように、
また元の場所へ戻ってきていた。
気味が悪くて、ベランダに出た。
すると、ベランダの手すりに、指でなぞったような跡があった。
“なつこ”
そう読める筆跡で、白く、うっすらと浮かび上がっていた。
その日から、夜になると――
クローゼットの扉が必ず開いているようになった。
赤いカーディガンは、毎晩、位置を変えて現れる。
ソファの上。
寝室の椅子の背。
果ては、自分の枕元にまで。
それでも、名前の刺繍は変わらない。
『なつこ』
……彼女は、いつからここにいたのだろう?
そして、なぜ“わたし”の生活に入り込んできたのか。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第48話『ベランダに干したはずの、あの赤い服』をお読みいただき、ありがとうございました。
日常の中にある、ほんの小さな違和感。
それが、知らぬ誰かの“存在の痕跡”だったとしたら、
あなたはどうしますか?
「身に覚えのない名前」が、自分の身の回りに現れたとき、
それは偶然ではないのかもしれません。
次回は『第49話:かくれんぼの途中、声がひとつ多かった』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
干したはずの服が戻ってきたら、
まずは“名前”を確認してください。
それが自分のものでなかった場合、
それは“どこかの誰か”の意思かもしれません。
この怪談の続きを読みたいと思ってくださった方は、
いいねとフォローで、ぜひ“彼らの物語”にご同行ください
その日も朝から洗濯をして、
いつものように衣類を干していた。
赤いカーディガンを一枚。
もう着古していて、そろそろ捨てようかと思っていたものだ。
けれど、その赤がなんとなく目に残って、
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なんとなくベランダに吊した。
夕方、取り込もうとしたとき――
赤いカーディガンだけが消えていた。
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けれど、どこにも見つからない。
そしてその夜。
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ふと部屋の隅にあるクローゼットに目が止まった。
開けた記憶はない。
なのに、扉が少しだけ、開いていた。
なんとなく、手を伸ばして中を覗く。
……そこに、赤いカーディガンがかかっていた。
しかも、干したときよりも、綺麗に畳まれていた。
アイロンをかけたようにシワもなく、
まるで誰かが丁寧に仕舞ってくれたかのように。
怖くなってすぐに捨てようとした。
けれど、手に取った瞬間――
カーディガンの襟元に、小さな名前の刺繍があった。
それは、自分の名前ではなかった。
『なつこ』
知り合いにも、そんな名前の女はいない。
気味が悪くて、その夜は眠れなかった。
翌朝、クローゼットをもう一度確認すると――
赤いカーディガンはまた、きちんと掛けられていた。
昨日捨てたはずだ。
ゴミ袋に入れて、外の集積所に置いた。
けれど、まるでそれを嘲笑うように、
また元の場所へ戻ってきていた。
気味が悪くて、ベランダに出た。
すると、ベランダの手すりに、指でなぞったような跡があった。
“なつこ”
そう読める筆跡で、白く、うっすらと浮かび上がっていた。
その日から、夜になると――
クローゼットの扉が必ず開いているようになった。
赤いカーディガンは、毎晩、位置を変えて現れる。
ソファの上。
寝室の椅子の背。
果ては、自分の枕元にまで。
それでも、名前の刺繍は変わらない。
『なつこ』
……彼女は、いつからここにいたのだろう?
そして、なぜ“わたし”の生活に入り込んできたのか。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第48話『ベランダに干したはずの、あの赤い服』をお読みいただき、ありがとうございました。
日常の中にある、ほんの小さな違和感。
それが、知らぬ誰かの“存在の痕跡”だったとしたら、
あなたはどうしますか?
「身に覚えのない名前」が、自分の身の回りに現れたとき、
それは偶然ではないのかもしれません。
次回は『第49話:かくれんぼの途中、声がひとつ多かった』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
干したはずの服が戻ってきたら、
まずは“名前”を確認してください。
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