百の話を語り終えたなら

コテット

文字の大きさ
50 / 102

第49話:かくれんぼの途中、声がひとつ多かった

しおりを挟む
その日、小学五年の健太は、
田舎の祖母の家に泊まりに来ていた。

夏休みの真ん中、夕暮れ時。
近所の子どもたちが集まって、裏山でかくれんぼをして遊んでいた。

鬼になったのは、背の高い中学生の兄ちゃん。
「百まで数えるから隠れろよー!」
そう言って、木の幹に顔を伏せた。

健太は、裏山の獣道の奥にある小さな祠の裏に身をひそめた。

しゃがんで息を潜めていると、
すぐ近くに誰かが隠れている気配がした。

でも、誰の姿も見えない。

祠の石の陰から覗くと、
少し離れた木の影に女の子のような姿がちらっと見えた。

「誰だろう……」

見覚えがない顔だった。

鬼の兄ちゃんの声が聞こえてきた。

「もういいかーい!」

すると――

**「まーだだよ」**と、すぐ後ろで女の子の声が返事した。

びっくりして振り返った。

でも、そこには誰もいなかった。

それどころか、祠の裏にいたのは自分ひとり。

「変だな……」

その後、鬼がみんなを見つけて、遊びは終わった。

健太が声をかけた。

「さっき女の子の声、聞こえなかった?」

「え、だれそれ? 今日、女の子いないよ」

「……え?」

数えてみると、今日集まったのは健太を含めて六人。

でも、隠れていたとき――
あの祠の裏で聞こえた声を合わせると、七人目がいたことになる。

その夜、健太は祖母にその話をした。

すると祖母は、ふと顔を曇らせて言った。

「裏山の祠はね、昔、迷子になって亡くなった子を祀ってる場所なんだよ」

「……女の子?」

「うん。あんたと同じくらいの歳だったって」

健太は、あのとき聞いた声を思い出した。

明るく、はしゃぐような「まーだだよ」。

でも、あの声には――
もう見つけられることを望んでいないような、
妙に深い寂しさがこもっていた気がした。

翌日、健太は祠にお菓子を置いて帰った。

小さなチョコと、ポケットの中に入っていたビー玉を添えて。

そして祠を離れるとき、
背後でかすかに、**「もういいよ」**と聞こえた気がした。

――だが、その日以降。
健太の影は、いつもひとつ多く見えるようになった。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第49話『かくれんぼの途中、声がひとつ多かった』をお読みいただき、ありがとうございました。

遊びの中に紛れ込む“見えない誰か”。
子どもの無邪気さは時に、
向こうの世界との境界線を越えてしまうのかもしれません。

次回は『第50話:封筒に入っていた、差出人不明の自分の写真』を予定しております。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
「もういいかい?」
「――まーだだよ」

あなたのそばでも、聞こえていませんか?

いいねとフォローで、
百の物語に隠れた“声の主”たちを、ぜひ見つけてあげてください。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...