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第51話:階段を降りた数と、昇った数が違う夜
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大学生の田口翔は、築五十年のアパートで一人暮らしをしていた。
木造二階建てのその建物は、安さだけが取り柄だったが、静かで住みやすかった。
その夜も、コンビニに買い出しに出かけた帰りのことだった。
階段を上がる前、彼はふと、何の気なしに段数を数えた。
1、2、3……と。
結果は14段。
特に意味はなかったが、暇つぶしのようなものだった。
その夜、寝つけず、夜中に飲み物を買いに再び外へ出た。
そして、戻ってきたとき――また階段の段数を数えた。
だが、今度は15段あった。
「……あれ?」
見間違いかと思い、もう一度数え直す。
やはり15段ある。間違いない。
まさか段が増えるなんて――。
少し気味が悪くなりながらも、部屋へ戻った。
だが違和感は、それだけではなかった。
部屋の鍵が、妙に重かった。
開けてもいないはずのポストが、わずかに開いていた。
そして何より――
部屋に入った瞬間、空気の“重さ”が変わっていた。
無音のはずの室内に、微かに呼吸音が混じっているような気がする。
「……誰かいる?」
もちろん、返事はない。
翔はスマホのライトを点け、部屋の隅々まで見て回った。
押入れも、トイレも、風呂場も。
誰もいない。
そう確信しかけたときだった。
玄関の鏡に、ふと視線を向けた――
そこに映ったのは、自分ひとりのはずだった。
けれど、背後に“何か”が立っていた。
黒くて、輪郭だけがぼんやりとした存在。
だが確かに、人型。
振り向くと、何もいない。
でも鏡には、まだ映っている。
翔は一歩ずつ、後ずさりしながら部屋を出た。
そのまま階段を駆け下りる。
1、2、3……13、14、15……16段?
また増えている。
急いで下りきり、振り返ると――
アパートの階段は、どこまでも続いていた。
翔はようやく気づいた。
あの階段は、夜ごとに“下”と“向こう”をつなげていく。
そして昇った回数と降りた回数が違ったとき、
“あちら側”に足を踏み入れてしまうのだと。
その夜以来、翔の姿を見た者はいない。
だが今も、あのアパートの階段を数えると――
夜だけ、段数がひとつ多いのだという。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第51話『階段を降りた数と、昇った数が違う夜』をお読みいただき、ありがとうございました。
当たり前のように使う階段。
だがそれが“異界への道”だったとしたら?
回数や数を数える癖がある方は、夜中だけはお気をつけて。
次回は『第52話:閉じた教室の窓を叩く、昼にはいないはずの手』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
数を数えるという行為は、
ときに“存在を確定する”儀式でもあります。
でも、足りないとき、多すぎるとき――
そこには誰が潜んでいるのでしょうか。
次の階段を踏む前に、
ぜひいいねとフォローで、物語の足音を見届けてください。
木造二階建てのその建物は、安さだけが取り柄だったが、静かで住みやすかった。
その夜も、コンビニに買い出しに出かけた帰りのことだった。
階段を上がる前、彼はふと、何の気なしに段数を数えた。
1、2、3……と。
結果は14段。
特に意味はなかったが、暇つぶしのようなものだった。
その夜、寝つけず、夜中に飲み物を買いに再び外へ出た。
そして、戻ってきたとき――また階段の段数を数えた。
だが、今度は15段あった。
「……あれ?」
見間違いかと思い、もう一度数え直す。
やはり15段ある。間違いない。
まさか段が増えるなんて――。
少し気味が悪くなりながらも、部屋へ戻った。
だが違和感は、それだけではなかった。
部屋の鍵が、妙に重かった。
開けてもいないはずのポストが、わずかに開いていた。
そして何より――
部屋に入った瞬間、空気の“重さ”が変わっていた。
無音のはずの室内に、微かに呼吸音が混じっているような気がする。
「……誰かいる?」
もちろん、返事はない。
翔はスマホのライトを点け、部屋の隅々まで見て回った。
押入れも、トイレも、風呂場も。
誰もいない。
そう確信しかけたときだった。
玄関の鏡に、ふと視線を向けた――
そこに映ったのは、自分ひとりのはずだった。
けれど、背後に“何か”が立っていた。
黒くて、輪郭だけがぼんやりとした存在。
だが確かに、人型。
振り向くと、何もいない。
でも鏡には、まだ映っている。
翔は一歩ずつ、後ずさりしながら部屋を出た。
そのまま階段を駆け下りる。
1、2、3……13、14、15……16段?
また増えている。
急いで下りきり、振り返ると――
アパートの階段は、どこまでも続いていた。
翔はようやく気づいた。
あの階段は、夜ごとに“下”と“向こう”をつなげていく。
そして昇った回数と降りた回数が違ったとき、
“あちら側”に足を踏み入れてしまうのだと。
その夜以来、翔の姿を見た者はいない。
だが今も、あのアパートの階段を数えると――
夜だけ、段数がひとつ多いのだという。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第51話『階段を降りた数と、昇った数が違う夜』をお読みいただき、ありがとうございました。
当たり前のように使う階段。
だがそれが“異界への道”だったとしたら?
回数や数を数える癖がある方は、夜中だけはお気をつけて。
次回は『第52話:閉じた教室の窓を叩く、昼にはいないはずの手』を予定しています。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
数を数えるという行為は、
ときに“存在を確定する”儀式でもあります。
でも、足りないとき、多すぎるとき――
そこには誰が潜んでいるのでしょうか。
次の階段を踏む前に、
ぜひいいねとフォローで、物語の足音を見届けてください。
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