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第57話:黒板に勝手に書かれた出席番号、それは既に死んだ生徒の席だった
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雨の月曜日。
教室に一番乗りしたのは、いつも通り真面目な佐伯千夏だった。
黒板消しを片づけ、朝の準備を整えていたそのとき、ふと違和感に気づいた。
黒板の左隅に――出席番号“32”とだけ、白チョークで書かれていた。
(あれ……? うちのクラスって、31人だったはず……)
そう、3年2組の生徒は全員で31人。
クラス名簿にも、出席簿にも、“32番”は存在しない。
イタズラか、と思った。
けれど、チョークの文字は湿った板書ににじんでいなかった。
つまり、今朝書かれたものではない。
まるで、誰かが昨夜のうちに、ひっそりと書き残していったかのように。
そして、その下にはうっすらと**“斉藤”という苗字**が擦れたように見えた。
(斉藤……誰だっけ?)
名前に記憶はない。けれど、聞き覚えがあるような錯覚。
次々と登校してくるクラスメイトたちも、最初は笑っていた。
「また誰か変なイタズラしたなー」
「番号ミスってるし、ビビらせようとしてんじゃね?」
担任の中山先生が入ってくるまで、騒ぎは続いていた。
しかし、先生は黒板を見るなり、ピタリと動きを止めた。
「……誰がこれを書いた」
全員が黙る。
「……これは、絶対に消すな」
一瞬、教室にざわりと冷たい空気が流れた。
――放課後。
こっそり職員室で、千夏は名簿をのぞき見た。
そこには確かに、出席番号32番・斉藤真由という名前が、過去の学籍記録にだけ存在していた。
だが彼女は、3年前の修学旅行中、事故で死亡していた。
同じ教室で、同じ席で。
それから、毎年のこの日――
“斉藤真由”の出席番号が黒板に現れるようになったという。
その席は、今のところ、誰も座っていない。
正確には、座れない。
机の椅子を引こうとすると、なぜか動かないのだ。
誰も触っていないのに、誰かが腰かけているように。
黒板の出席番号は、その日が終わるまで消せない。
無理に消すと、その手をひねるような痛みが走るという。
それを体験した生徒は、次の日から姿を見せなくなった。
千夏は、翌朝もう一度黒板を見た。
そこにはもう“32”の文字はなかった。
ただ、出席番号“31”の下に、うっすらと白く“つづけて”と書かれていた。
その“つづけて”が何を意味するのか、彼女にはわからない。
ただ一つ言えるのは――今年も“斉藤真由”は、出席していた。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第57話『黒板に勝手に書かれた出席番号、それは既に死んだ生徒の席だった』をお読みいただきありがとうございました。
教室という日常の中で、黒板は言葉を刻む場所。
でも、そこに現れる“誰かの名”は、もういないはずの存在かもしれません。
“出席している”ということが、どれほど重く、恐ろしい意味を持つのか。
静かに、考えてみてください。
次回は『第58話:誰もいない図書室で、延滞したはずの貸出カードが戻っていた』を予定しております。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
その番号が、空白であることに、理由はある。
その机が、動かない理由もまた――
もし、あなたの記憶にも“誰かの席”が空いていたなら、
いいねとフォローで、そっとその存在に気づいてあげてください。
教室に一番乗りしたのは、いつも通り真面目な佐伯千夏だった。
黒板消しを片づけ、朝の準備を整えていたそのとき、ふと違和感に気づいた。
黒板の左隅に――出席番号“32”とだけ、白チョークで書かれていた。
(あれ……? うちのクラスって、31人だったはず……)
そう、3年2組の生徒は全員で31人。
クラス名簿にも、出席簿にも、“32番”は存在しない。
イタズラか、と思った。
けれど、チョークの文字は湿った板書ににじんでいなかった。
つまり、今朝書かれたものではない。
まるで、誰かが昨夜のうちに、ひっそりと書き残していったかのように。
そして、その下にはうっすらと**“斉藤”という苗字**が擦れたように見えた。
(斉藤……誰だっけ?)
名前に記憶はない。けれど、聞き覚えがあるような錯覚。
次々と登校してくるクラスメイトたちも、最初は笑っていた。
「また誰か変なイタズラしたなー」
「番号ミスってるし、ビビらせようとしてんじゃね?」
担任の中山先生が入ってくるまで、騒ぎは続いていた。
しかし、先生は黒板を見るなり、ピタリと動きを止めた。
「……誰がこれを書いた」
全員が黙る。
「……これは、絶対に消すな」
一瞬、教室にざわりと冷たい空気が流れた。
――放課後。
こっそり職員室で、千夏は名簿をのぞき見た。
そこには確かに、出席番号32番・斉藤真由という名前が、過去の学籍記録にだけ存在していた。
だが彼女は、3年前の修学旅行中、事故で死亡していた。
同じ教室で、同じ席で。
それから、毎年のこの日――
“斉藤真由”の出席番号が黒板に現れるようになったという。
その席は、今のところ、誰も座っていない。
正確には、座れない。
机の椅子を引こうとすると、なぜか動かないのだ。
誰も触っていないのに、誰かが腰かけているように。
黒板の出席番号は、その日が終わるまで消せない。
無理に消すと、その手をひねるような痛みが走るという。
それを体験した生徒は、次の日から姿を見せなくなった。
千夏は、翌朝もう一度黒板を見た。
そこにはもう“32”の文字はなかった。
ただ、出席番号“31”の下に、うっすらと白く“つづけて”と書かれていた。
その“つづけて”が何を意味するのか、彼女にはわからない。
ただ一つ言えるのは――今年も“斉藤真由”は、出席していた。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第57話『黒板に勝手に書かれた出席番号、それは既に死んだ生徒の席だった』をお読みいただきありがとうございました。
教室という日常の中で、黒板は言葉を刻む場所。
でも、そこに現れる“誰かの名”は、もういないはずの存在かもしれません。
“出席している”ということが、どれほど重く、恐ろしい意味を持つのか。
静かに、考えてみてください。
次回は『第58話:誰もいない図書室で、延滞したはずの貸出カードが戻っていた』を予定しております。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
その番号が、空白であることに、理由はある。
その机が、動かない理由もまた――
もし、あなたの記憶にも“誰かの席”が空いていたなら、
いいねとフォローで、そっとその存在に気づいてあげてください。
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