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第61話:開かずのロッカー、その中から毎朝“使用済みのハンカチ”が見つかる

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旧館の一角に、誰も使っていないロッカーがある。

番号は「31番」。
もう何年も前に鍵が壊れ、閉まらなくなったため、使用禁止とされたまま、忘れ去られていた。
そのはずだった。

だがある日、清掃当番の女子生徒・立花真奈がこう言った。

「毎朝、そのロッカーに同じハンカチが入ってるんだよ」

最初は、誰かの悪戯だと思われた。
だがそのハンカチは、毎回きちんと畳まれ、中央に置かれている。
しかもそれが、毎朝違う柄で、濡れていることに気づいたのは、翌週だった。

水に濡れていたり、血のような赤い染みがあったり。
ある日は、香水の匂いが漂っていた。

教師に相談し、監視カメラを取り付けることになった。
そして放課後、映像を確認すると――

夜の校舎に、誰かが歩いてくる映像があった。

だがその姿は、カメラの死角からしか現れない。
そしてロッカーの前に立つと、手元だけが映り込み、何かをそっと置いていく。

それを見た教員は、「これは悪戯では済まされない」と語った。

校長はロッカーを完全封鎖するよう命じた。
だが、翌日も、やはり濡れたハンカチが置かれていた。

ある教師が、封鎖作業の前に中を調べると、**ロッカーの内壁に刻まれた“ある名前”**を見つけた。

「杉浦 夕」

十年前、この学校に通っていた生徒の名前だった。
記録によれば――彼女は三年の春、原因不明の事故で死亡していた。

当時の担任は、こう語った。

「あの子、いつもハンカチを持ち歩いてたよ。誰かが泣いてると、それを差し出すんだ。
でも、自分が泣くときは、ロッカーの中で一人だったらしい」

静かにすすり泣く声を、誰かが聞いたことがあるという。

最後のハンカチが見つかったのは、卒業式の朝だった。

それは、薄い桜色のハンカチで、真ん中に小さく刺繍があった。

「卒業、おめでとう」

以後、「31番ロッカー」からハンカチが現れることはなかった。
だが今も、そのロッカーの前には――

一輪の花と、新しいハンカチが供えられている。

誰が置いたのか、もう誰にもわからない。

ただひとつ確かなのは――
“泣いている誰かに届いてほしい”という想いが、いまだそこに息づいているということだった。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第61話『開かずのロッカー、その中から毎朝“使用済みのハンカチ”が見つかる』をお読みいただき、ありがとうございました。

誰にも言えない涙は、どこへ行くのか。
その答えが、ひとつのロッカーに収められていたのかもしれません。

次回は『第62話:図書室の隅、返却されたはずのない“記録にない本”』を予定しております。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
あなたが最後に、誰かから差し出されたハンカチは、どんな色でしたか?

もし“誰か”の気持ちが、今もあなたのポケットに残っているなら――
いいねとフォローで、その想いを次の誰かへ届けてください。
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