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第68話:鏡の中に“こっちを向かない自分”が映っている

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高校の女子トイレ――北棟の三階、使用されていない一番奥の鏡。
そこには、昔から**「映るのは、自分ではない」**という噂があった。

髪型も服も、確かにその日と同じ。
だが――

目線が合わない。
表情が違う。
呼吸のリズムも合っていない。

三年生の伊藤美咲は、その噂を信じていなかった。

ある日の放課後、美咲は親友とふざけ半分でその鏡の前に立ち、携帯で自撮りを撮った。

何も映らなかった。
ただの古びた鏡、曇った表面に少しばかりの傷があるだけ。
ふたりで笑って立ち去った――その夜までは。

帰宅後、美咲が何気なくスマホの写真を見返すと、
そこに写っていたのは、**明らかに“美咲ではない誰か”**だった。

髪型も、制服も同じ。
でも、その“もう一人”は、首を少し傾け、鏡の奥からこちらをじっと見ている。

しかもその写真には、美咲の隣に立っていたはずの親友が映っていなかった。

翌日、親友は風邪で学校を欠席した。
そのまま、彼女は一週間も音信不通になった。

そして八日目の朝、美咲のスマホに**“鏡の中の自分”からメッセージ**が届いた。

「こっちは、空いてるよ。」

驚愕してスマホを落とし、慌てて親友に電話をかける。
ようやくつながった彼女の声は、弱々しく震えていた。

「……見られてる。ずっと、トイレの鏡の中から、私の顔をした何かが……。
夢にも出てきて、笑ってるの。『あなたじゃない、もう入れ替わった』って……」

その夜、美咲はついに**“鏡の中の自分”が動いている夢**を見た。
現実の自分よりも先に瞬きをし、先に笑い、先に歩き出す。

――追い越された。

それからしばらくして、美咲は転校した。
ただし、転校先でも、学校の鏡の前で立ち止まっては確認するようになった。

自分は今、“鏡と同じ動き”をしているかどうか。

一度でもずれたら――
もう、戻ってこられないのではないかと。

旧北棟三階のトイレは現在も封鎖されている。
だが、夜間にふと照明が点いたとき、鏡に“二人分の影”が映ると語る者がいる。

――そのうち一人は、こちらを向かないまま、微笑んでいるのだという。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第68話『鏡の中に“こっちを向かない自分”が映っている』をお読みいただき、ありがとうございました。

鏡は本来、何かを映すための道具ですが、
ときとして、“本当は見たくなかったもの”まで映してしまうことがあります。

次回は『第69話:夜の図書室でページをめくる“誰かの指”』を予定しております。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
鏡を見るとき、自分と目線が合っているか。
もし、違ったら――それは“あなた”ではないかもしれません。

この物語が気になった方は、いいねとフォローをしていただけると嬉しいです。







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