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第87話:封印された連絡ノート
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連絡ノート。
それは、担任と保護者、生徒の三者をつなぐ橋渡しの道具だった。
だが、十数年前――この学校では、ある“理由”からその制度が廃止された。
「あるノートが、戻ってこなかった」
それが事の始まりだったという。
提出されたはずのノートが、朝になっても返却されない。
職員室にも、担任の机にもない。
だが奇妙なことに、誰も「どの生徒のノートだったのか」を思い出せなかった。
保護者にも確認が取れず、名簿を調べても該当者がいない。
それでも、ある朝――保健室の棚の奥から、そのノートが見つかった。
◆
問題のノートは、色の褪せた深緑の表紙に、かすれた白インクで書かれていた。
《○○小学校 三年生 れんらくノート》
○○には名前が書かれていた形跡があるが、擦れて読めない。
ページをめくると、そこには整った文字でこう書かれていた。
きょうは おかあさんが しんでいました。
でも せんせいは しっているとおもいます。
わたしは しっていました。
あしたは わたしが しぬばんです。
担任は震え上がり、すぐに校長に報告した。
だが、ノートはいつのまにか失われていた。
ただ、保健室の棚には、誰も置いた覚えのない黒いバインダーが追加されていた。
中を開くと、そこには全ページが黒く塗り潰された“写し”が挟まれていたという。
◆
ある時期から、この“れんらくノート”は、定期的に見つかるようになった。
誰かの机の奥に、ロッカーの裏に、保健室のベッドの下に。
しかも、見つけた者は必ず、その夜「誰かにノートを返さなければ」という衝動に駆られるという。
教師の中には、それを止めようとした者もいた。
だが、止められた生徒は目を見開き、こう言った。
「だって、渡さないと――わたしの番になるんです」
その言葉を最後に、その子は転校。
以後、誰も連絡が取れなくなった。
◆
いま、この学校では連絡ノートは使われていない。
だが、夜の図書室の隅――職員用の書棚のいちばん下。
引き出しの底には、今もなお“返却を待っているノート”が一冊だけ、静かに横たわっている。
そのノートに名前を書くのは、次にあなたの番が回ってきたときかもしれない。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第87話『封印された連絡ノート』をお読みいただきありがとうございます。
日常に溶け込んだ“記録媒体”――ノートやバインダーは、時にそれ自体が“意志”を持つことがあります。
この話では、記録に縛られた意志と、名前という「順番」の怖さを描きました。
次回は『第88話:昇降口の鏡に映るのは』。
“最後に登校した人”だけが見るものとは、一体……。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
あなたが最後に手渡したノートは、どこにありますか?
もう戻らないその記録が、まだ誰かを探しているかもしれません。
続きを読みたい方は、**「いいね」と「フォロー」**をぜひお願いいたします。
物語は、まだ――百に至っていません。
それは、担任と保護者、生徒の三者をつなぐ橋渡しの道具だった。
だが、十数年前――この学校では、ある“理由”からその制度が廃止された。
「あるノートが、戻ってこなかった」
それが事の始まりだったという。
提出されたはずのノートが、朝になっても返却されない。
職員室にも、担任の机にもない。
だが奇妙なことに、誰も「どの生徒のノートだったのか」を思い出せなかった。
保護者にも確認が取れず、名簿を調べても該当者がいない。
それでも、ある朝――保健室の棚の奥から、そのノートが見つかった。
◆
問題のノートは、色の褪せた深緑の表紙に、かすれた白インクで書かれていた。
《○○小学校 三年生 れんらくノート》
○○には名前が書かれていた形跡があるが、擦れて読めない。
ページをめくると、そこには整った文字でこう書かれていた。
きょうは おかあさんが しんでいました。
でも せんせいは しっているとおもいます。
わたしは しっていました。
あしたは わたしが しぬばんです。
担任は震え上がり、すぐに校長に報告した。
だが、ノートはいつのまにか失われていた。
ただ、保健室の棚には、誰も置いた覚えのない黒いバインダーが追加されていた。
中を開くと、そこには全ページが黒く塗り潰された“写し”が挟まれていたという。
◆
ある時期から、この“れんらくノート”は、定期的に見つかるようになった。
誰かの机の奥に、ロッカーの裏に、保健室のベッドの下に。
しかも、見つけた者は必ず、その夜「誰かにノートを返さなければ」という衝動に駆られるという。
教師の中には、それを止めようとした者もいた。
だが、止められた生徒は目を見開き、こう言った。
「だって、渡さないと――わたしの番になるんです」
その言葉を最後に、その子は転校。
以後、誰も連絡が取れなくなった。
◆
いま、この学校では連絡ノートは使われていない。
だが、夜の図書室の隅――職員用の書棚のいちばん下。
引き出しの底には、今もなお“返却を待っているノート”が一冊だけ、静かに横たわっている。
そのノートに名前を書くのは、次にあなたの番が回ってきたときかもしれない。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第87話『封印された連絡ノート』をお読みいただきありがとうございます。
日常に溶け込んだ“記録媒体”――ノートやバインダーは、時にそれ自体が“意志”を持つことがあります。
この話では、記録に縛られた意志と、名前という「順番」の怖さを描きました。
次回は『第88話:昇降口の鏡に映るのは』。
“最後に登校した人”だけが見るものとは、一体……。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
あなたが最後に手渡したノートは、どこにありますか?
もう戻らないその記録が、まだ誰かを探しているかもしれません。
続きを読みたい方は、**「いいね」と「フォロー」**をぜひお願いいたします。
物語は、まだ――百に至っていません。
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