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第91話:貸し出し禁止の本棚

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図書室の一番奥、窓もない小部屋に、誰も近づかない棚がある。

“貸し出し禁止”と書かれた木札が、埃をかぶったガラス扉に吊るされていた。
鍵は掛かっていない。だが、開かない。

司書に聞いても、「あれは……あの棚はずっと前から」と歯切れが悪い。
何の本が並んでいるかすら知らない、と言う。

ただひとつだけ、生徒の間で語られる噂があった。

「夜になると、あの棚の中の本が勝手に増えていく」



秋の夕暮れ。
ある女生徒が、読書感想文の参考になる本を探していた。

ふと、視線の端に“動いた”気配を感じた。
奥の、貸し出し禁止の棚のほうから。

誰もいない。静まり返った室内。
気のせいだろうと背を向けたとき、背後から微かにページをめくる音が聞こえた。

ゆっくりと振り返ると――棚のガラス越しに、自分の名前が書かれた“貸し出しカード”が見えた。

そのカードは、確かに彼女の筆跡だった。
だが、彼女は一度もその本を借りた覚えがない。

棚の中には、赤黒い表紙の本が一冊。
背表紙には、こう記されていた。

「○年○月○日 未来閲覧記録:○○○○(彼女の名前)」



翌日、その女生徒は図書室に現れなかった。

クラスでは誰も不審に思わず、担任も出席簿に“転校”と記していた。
だが、彼女の荷物はそのまま残されていた。

図書室の貸し出し記録には新たな1冊が加わっていた。
タイトルは、こうだ。

「第91話:貸し出し禁止の本棚」

そしてそのページの最後には、手書きで“あとがき”が添えられていた。

まるで、その本が彼女自身によって書かれたものだったかのように。



ある日、図書室を管理していた司書がつぶやいた。

「本が好きな子ほど、あの棚に惹かれるのよ。不思議ね。まるで……自分の話が、そこにあると知っているみたい」

今もその棚は、“貸し出し禁止”のまま佇んでいる。

鍵はなく、誰の手も触れていない。
ただ、たまに、棚の中に新しい本が増えているだけだ。

そしてその表紙には、いつも一つの名前が記されている。

――“次に消える誰か”の名が。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第91話『貸し出し禁止の本棚』をお読みいただきありがとうございました。

本とは記録であり、記憶でもあります。
それが誰かの存在証明になってしまったとき――ページの重みは、ずしりと変わるのです。

次回は『第92話:雨が降る階段』。
晴れていても、そこだけが濡れている。誰もいないはずなのに、水音がする階段の物語。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
図書室の奥へ、あなたは行ったことがありますか?
本棚の影には、まだ語られていない物語が潜んでいます。

続きをご覧になりたい方は、いいねとフォローをよろしくお願いします。
残り、あと九話。語りは終盤へと差し掛かります。
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