百の話を語り終えたなら

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第94話:抜け落ちたページの告白

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図書室の奥、旧分類で整理された「怪奇」「民俗」「心理」の棚は、普段は誰も近寄らない。

その中にある、一冊の古い本。
背表紙もタイトルも擦れて読めず、貸出記録もない。

けれどその本は、なぜか棚の位置を日によって変えていた。
誰も触れていないはずなのに、棚の左端にあったと思えば、次の日には真ん中に、また翌日には右端に。

それを見つけたのは、読書好きの女子生徒・野中由梨だった。

彼女はその奇妙な本に興味を持ち、手に取った。

ぱらぱらとページをめくると、中は古い日本語で書かれた民話や怪談ばかり。
一話ごとに「語り」と書かれ、百話構成のようだった。

だが、97話だけが“抜け落ちていた”。



「どうして、ここだけ?」

由梨はページを手繰った。
けれど、96話の末尾の次には、いきなり98話の冒頭が記されている。

ページ番号も、印刷も、飛ばされていた。

不思議に思いながら本を閉じたとき――
彼女は背後から「……みつけてしまったのね」と、女の声を聞いた。

振り向いても、そこには誰もいなかった。



それ以来、彼女は夢を見るようになった。

古びた紙の音、そして墨で書かれた何かの文字。
夢の中で彼女は、空白のページを“書かされている”。

誰かの手が、彼女の指を導いているような感覚。
目を覚ますと、ノートの片隅に、見覚えのない文字列が増えていた。

“あの話は、書かれてはならない。
書いた者の記憶を、代価として捧げる。”

それが、97話の内容なのだと、彼女は知った。

そしてある日、図書室からその本が消えた。

棚にも、記録にも、存在しない。
由梨のノートだけが、誰にも読めない97話の“断片”で埋め尽くされていた。

それを最後に、彼女は転校した。

――ただ、後に入った図書委員が、棚の奥から一冊の古い本を見つけたという。

中を開くと、97話のページだけが破り取られていた。

しかし――そのページの切り口からは、今もかすかにインクの匂いがする。

まるで“今も誰かが、その続きを書いている”かのように。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第94話『抜け落ちたページの告白』をお読みいただきありがとうございました。

書かれていない話は、無かったことになるのでしょうか。
それとも、“語ってはならない”ということこそが、本当に語るべき内容なのでしょうか。

次回は『第95話:逆さまの放送』。
校内放送のスピーカーから、時折“逆さに流れる声”が届くという、不気味な伝承を描きます。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
あなたの本棚にも、背表紙の読めない本がありませんか?
その本のページが揃っているかどうか、どうか今一度、確かめてください。

語り部は残りわずか。いいねとフォローで、次なる話への扉を開いてください。
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