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第95話:逆さまの放送
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六限が終わり、教室に静寂が戻る午後三時。
終業チャイムが鳴る少し前、校内放送のスピーカーが「カッ……」とノイズを鳴らす。
それが、合図だった。
放送委員も先生も使っていないはずの時間に、誰かがマイクを握っている。
けれど、その声ははっきりと聞こえない。
音が“逆再生”されているからだ。
――キョン……ルェ……ナカ、……ルカ……。
音の意味はわからない。だが、その声が誰かの名前を呼んでいることだけは、聞いた者全員が感じ取った。
◆
放送の異変に気づいたのは、生徒会役員の一人・笠原颯太だった。
彼は、昼下がりの校内に響くノイズを毎日記録していた。
不規則なその音の波形は、逆再生にすれば“文章”になると突き止める。
彼が録音した音源を逆再生したとき、スピーカーから漏れた声が、はっきりとこう言った。
「……つぎは、カサハラ……」
彼の名前だった。
颯太は、自分に何かが起こると直感する。
だが誰に相談しても、「気のせい」「放送室の機械の不調」だと取り合ってくれなかった。
翌日から、彼の周囲では小さな“異変”が始まった。
目覚まし時計が、決まって三時三十三分に止まる。
教室のスピーカーだけが、ノイズを撒き散らす。
昇降口の靴箱の名前札が、彼の名前だけ“鏡文字”で書き換えられていた。
そして、ある日を境に、彼の姿が“写真に映らなくなった”。
それを最後に、彼は学校から姿を消した。
◆
生徒会の机の引き出しからは、カセットテープが一つ見つかった。
ラベルには、“95話・逆さまの放送”とだけ記されていた。
誰がその話を書いたのか。
なぜ、生徒会役員の名が語られるのか。
そして、次に放送で呼ばれる名前は――
まだ、誰も知らない。
ただひとつ、確かなことがある。
それは、スピーカーから聞こえる“逆さの声”が、確実に誰かを選んでいるということ。
――今日も、午後三時。
「カッ……」というノイズと共に、放送が始まる。
あなたの名が、呼ばれないことを願って。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第95話『逆さまの放送』をお読みいただきありがとうございました。
聞いてしまった“声”は、誰に届くのか。
そして、名前を呼ばれるということは、呼ぶ者が“見ている”という証でもあります。
次回は『第96話:鏡のなかの明日』。
鏡に映る自分が、少しずつ違う動きを見せるようになる話です。
最後の百話へ向けて、語りは加速していきます。
―――――――――――――――――――――――
いいね・フォローのお願い
もし今、あなたの部屋にスピーカーがあるなら、次に鳴る“ノイズ”にご注意を。
物語の続きをご覧になりたい方は、いいねとフォローをどうぞ。
残りあとわずかの“語り”を、一緒に見届けてください。
終業チャイムが鳴る少し前、校内放送のスピーカーが「カッ……」とノイズを鳴らす。
それが、合図だった。
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けれど、その声ははっきりと聞こえない。
音が“逆再生”されているからだ。
――キョン……ルェ……ナカ、……ルカ……。
音の意味はわからない。だが、その声が誰かの名前を呼んでいることだけは、聞いた者全員が感じ取った。
◆
放送の異変に気づいたのは、生徒会役員の一人・笠原颯太だった。
彼は、昼下がりの校内に響くノイズを毎日記録していた。
不規則なその音の波形は、逆再生にすれば“文章”になると突き止める。
彼が録音した音源を逆再生したとき、スピーカーから漏れた声が、はっきりとこう言った。
「……つぎは、カサハラ……」
彼の名前だった。
颯太は、自分に何かが起こると直感する。
だが誰に相談しても、「気のせい」「放送室の機械の不調」だと取り合ってくれなかった。
翌日から、彼の周囲では小さな“異変”が始まった。
目覚まし時計が、決まって三時三十三分に止まる。
教室のスピーカーだけが、ノイズを撒き散らす。
昇降口の靴箱の名前札が、彼の名前だけ“鏡文字”で書き換えられていた。
そして、ある日を境に、彼の姿が“写真に映らなくなった”。
それを最後に、彼は学校から姿を消した。
◆
生徒会の机の引き出しからは、カセットテープが一つ見つかった。
ラベルには、“95話・逆さまの放送”とだけ記されていた。
誰がその話を書いたのか。
なぜ、生徒会役員の名が語られるのか。
そして、次に放送で呼ばれる名前は――
まだ、誰も知らない。
ただひとつ、確かなことがある。
それは、スピーカーから聞こえる“逆さの声”が、確実に誰かを選んでいるということ。
――今日も、午後三時。
「カッ……」というノイズと共に、放送が始まる。
あなたの名が、呼ばれないことを願って。
―――――――――――――――――――――――
あとがき
第95話『逆さまの放送』をお読みいただきありがとうございました。
聞いてしまった“声”は、誰に届くのか。
そして、名前を呼ばれるということは、呼ぶ者が“見ている”という証でもあります。
次回は『第96話:鏡のなかの明日』。
鏡に映る自分が、少しずつ違う動きを見せるようになる話です。
最後の百話へ向けて、語りは加速していきます。
―――――――――――――――――――――――
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