百の話を語り終えたなら

コテット

文字の大きさ
96 / 102

第95話:逆さまの放送

しおりを挟む
六限が終わり、教室に静寂が戻る午後三時。
終業チャイムが鳴る少し前、校内放送のスピーカーが「カッ……」とノイズを鳴らす。

それが、合図だった。

放送委員も先生も使っていないはずの時間に、誰かがマイクを握っている。
けれど、その声ははっきりと聞こえない。
音が“逆再生”されているからだ。

――キョン……ルェ……ナカ、……ルカ……。

音の意味はわからない。だが、その声が誰かの名前を呼んでいることだけは、聞いた者全員が感じ取った。



放送の異変に気づいたのは、生徒会役員の一人・笠原颯太だった。

彼は、昼下がりの校内に響くノイズを毎日記録していた。
不規則なその音の波形は、逆再生にすれば“文章”になると突き止める。

彼が録音した音源を逆再生したとき、スピーカーから漏れた声が、はっきりとこう言った。

「……つぎは、カサハラ……」

彼の名前だった。

颯太は、自分に何かが起こると直感する。
だが誰に相談しても、「気のせい」「放送室の機械の不調」だと取り合ってくれなかった。

翌日から、彼の周囲では小さな“異変”が始まった。

目覚まし時計が、決まって三時三十三分に止まる。
教室のスピーカーだけが、ノイズを撒き散らす。
昇降口の靴箱の名前札が、彼の名前だけ“鏡文字”で書き換えられていた。

そして、ある日を境に、彼の姿が“写真に映らなくなった”。

それを最後に、彼は学校から姿を消した。



生徒会の机の引き出しからは、カセットテープが一つ見つかった。
ラベルには、“95話・逆さまの放送”とだけ記されていた。

誰がその話を書いたのか。
なぜ、生徒会役員の名が語られるのか。

そして、次に放送で呼ばれる名前は――
まだ、誰も知らない。

ただひとつ、確かなことがある。

それは、スピーカーから聞こえる“逆さの声”が、確実に誰かを選んでいるということ。

――今日も、午後三時。
「カッ……」というノイズと共に、放送が始まる。

あなたの名が、呼ばれないことを願って。

―――――――――――――――――――――――

あとがき
第95話『逆さまの放送』をお読みいただきありがとうございました。

聞いてしまった“声”は、誰に届くのか。
そして、名前を呼ばれるということは、呼ぶ者が“見ている”という証でもあります。

次回は『第96話:鏡のなかの明日』。
鏡に映る自分が、少しずつ違う動きを見せるようになる話です。
最後の百話へ向けて、語りは加速していきます。

―――――――――――――――――――――――

いいね・フォローのお願い
もし今、あなたの部屋にスピーカーがあるなら、次に鳴る“ノイズ”にご注意を。

物語の続きをご覧になりたい方は、いいねとフォローをどうぞ。
残りあとわずかの“語り”を、一緒に見届けてください。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...