陰で泣くとか無理なので

中田カナ

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中編

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 翌日は休日だったが、午後になって王太子殿下が訪ねてきた。

 開かれたドアから殿下が自室にいる私に声をかける。
「貴女はいったい何をしているのだろうか?」
「あら、ご覧になってわかりませんか?荷造りをしておりますの」
 侍女と共に旅行かばんや移動用の衣装ケースにあれこれ詰め込んでいる。

「いったいどこへ行こうというのかな?」
「しばらく領地へ帰ろうと思いまして」
「婚約解消など絶対にしないからな!…昨日は本当にすまなかった。どうか許してほしい」
 王太子殿下が廊下で私に深々と頭を下げた。

「殿下、どうか頭を上げてくださいませ」
 メイドがお茶の準備を整えてくれたので、荷造りはいったんやめてサロンに移動する。
「で、あの後どうなりましたの?」
 紅茶を口にしながら向かいのソファーに座る殿下に尋ねた。

「あの場にいた学友達はすぐに叱りつけた。私の幼馴染でもある最愛の貴女と破談になったらいったいどうしてくれるのだ、と」
「…そうでしたか」
 いや、最愛とか言われましても、なんと答えていいものやら。

「で、貴女の父君が王宮に怒鳴り込んできて、学友達の親も呼び出しをくらった」
「いくら父が国王陛下と幼馴染とはいえ、いきなり押しかけるのはよくありませんわね。後ほど父に言っておきますわ」
 まぁ、父も私の意図を完全に理解してくれた上での行動でしたけどね。

「話し合いの末、彼らは全員側近候補からはずれることになった。新たな側近候補は現在選出中だが、身分は問わず実力重視になるので今までに比べれば期待できるはずだ」
「なるほど、よくわかりましたわ」
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