陰で泣くとか無理なので

中田カナ

文字の大きさ
3 / 3

後編

しおりを挟む
 説明を終えた王太子殿下が、改めて私に頭を下げる。

「様々なしがらみで断れなかった側近候補達を切るため、不快な思いをすることを承知の上で貴女が動いてくれたことに心から感謝する。あのままではどうしようかと本当に困っていたんだ」
「あら、何のことでしょうか?私は自分の陰口を叩かれていたことが気に入らなかっただけですわ。そうそう、あの場での淑女らしからぬ行動、改めてこの場にてお詫び申し上げます」
 私が頭を下げると殿下が微笑んだ。
「では、そういうことにしておこうか」
 なんだ、やはり気づかれていましたか。

 身分にあぐらをかいた側近候補達の痛い言動に殿下が頭を抱えていたのはだいぶ前からのことだった。
 あの時間に私が通ることは殿下はよくご存知のはずなので、うまいこと話を誘導してくれていたのだろう。
 それにまだ婚約の発表はしていないけれど、私の妹にはすでに相思相愛のお相手がいる。そもそも橋渡し役となったのは殿下なのだから、婚約者の乗り換えなんてありえない話で、これだけでお芝居なのはバレバレだわね。


「で、さっきの荷造りは何なのかな?間違っても婚約解消などしないから、もしも傷心旅行とかいうのなら中止してもらうことになるんだが」
 私はにっこり笑って答える。
「ふふふ、領地の方で従姉の結婚式がありますのよ。従姉は服飾関係の仕事をしておりまして、ウェディングドレスもご自分でデザインして作られたと聞いておりますので、今からとても楽しみなのですわ」
 向かい側に座っていた殿下が立ち上がって私の隣に座って肩を抱く。
「そういうことなら王太子妃教育の息抜きも兼ねて存分に楽しんでくるといいよ。もし従姉殿のドレスが気に入ったのなら、貴女の分の製作も依頼してきていいからね」

 ああ、もう、この人はなんでそんなことまでわかってしまうのかしら。
 そして殿下は私の髪を一房手にして口づける。
「でも忘れないでおくれ。貴女を世界一の花嫁にするのは私の役目だからね」
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

votoms
2025.12.17 votoms

王家ですら容易に切れないほど力がある家なら、まともな家庭教師をつけて教育しろよ

解除
Vitch
2025.12.03 Vitch

タグの『婚約解消』は、側近候補たちの方ね。

解除
BLACK無糖
2025.09.26 BLACK無糖

側近候補をしがらみで切れないとか王家弱々すぎて草。
やらかしまくって未来の王太子妃を侮れるほど求心力が低いんだろうな。
そのうち瓦解しそう。

解除

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

私知らないから!

mery
恋愛
いきなり子爵令嬢に殿下と婚約を解消するように詰め寄られる。 いやいや、私の権限では決められませんし、直接殿下に言って下さい。 あ、殿下のドス黒いオーラが見える…。 私、しーらないっ!!!

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

恋の終わりに

オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」 私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。 その時、私は 私に、できたことはーーー ※小説家になろうさんでも投稿。 ※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。 タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。

信じてくれてありがとうと感謝されたが、ただ信じていたわけではない

しがついつか
恋愛
「これからしばらくの間、私はあなたに不誠実な行いをせねばなりません」 茶会で婚約者にそう言われた翌月、とある女性が見目麗しい男性を数名を侍らしているという噂話を耳にした 。 男性達の中には、婚約者もいるのだとか…。

貴方は何も知らない

富士山のぼり
恋愛
「アイラ、君との婚約は破棄させて欲しい」 「破棄、ですか?」 「ああ。君も薄々気が付いていただろう。私に君以外の愛する女性が居るという事に」 「はい」 「そんな気持ちのまま君と偽りの関係を続けていく事に耐えられないんだ」 「偽り……?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。