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第5話
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「その、貴女は私のことをどう思っているだろうか?」
急に見つめられてそんなことを聞かれても困ってしまうんですけど。
「あ、あの、いろんな面で気遣ってくれていたのもわかりましたし、優しい方だなとは思っていました。仕事も誠実にこなしてらっしゃるのも見ていればよくわかります。ただ、そういう面では意識はしていなかったので、なんと答えていいものやら…」
苦笑する殿下。
「そうだな、突然こんなことを聞かれても困るだろう。嫌われていないのなら今はそれでいい。念のため確認しておきたいが、貴女には誰か気になる男性はいるのだろうか?」
私は首をぶんぶん横に振る。
今まで人生でそんなの一度もなかったから、この状況にかなりとまどってるんですけど。
「ならいい。これから貴女に意識してもらえるよう努力しよう。ただ、殿下呼びではなく、今までとおり名前で呼んでほしいのだが」
「かしこまりました」
ぎこちない笑顔で私は答えた。
「ああ、それからもう1つ貴女に詫びねばならなかったんだ。今にして思えば『目立たないように地味にしろ』などというのは女性である貴女を軽視していた部分もあったのだと思う。その点においても深く反省している」
また私に頭を下げる殿下。
「だからここで前言を撤回させてもらいたい。これからは貴女の好きな服装でかまわない」
「わかりましたわ」
うなずいた私に殿下が微笑みかけた。
「さて、すっかり遅くなってしまったな。馬車まで送ろう」
有無を言わさず殿下に手を取られ、私は執務室を後にした。
翌日。
昨夜はしっかり眠って気分も晴れた。いつもの時刻に登城して第二王子殿下の執務室に向かう。
「おはようございます!」
「ああ、おは…?!」
ノックして入室すると、なぜか殿下は目を丸くして固まっていた。
「どうかなさいましたか?」
「い、いや、確か昨日は貴女に好きな服装にしていいと言ったはずだが」
戸惑う表情の殿下。
「ええ、ですから着たかった服にしてみました」
ニッコリ笑って答える。
「だからって、なぜ男装になる?!」
「王宮内の移動が結構多いですから、仕事するのにドレスじゃ動きにくいんですよ。もう地味にしなくていいということで、多少目立っても便利な方を選ぶことにしたんです」
いやぁ、これホント楽だわぁ。
執務室に来るまでにジロジロ見られたけど、そんなことは気にしない。
「も、もしかして、その服は前から用意していたのか?」
「いいえ、取り急ぎ兄の昔の服を手直ししました」
兄のお古はまだたくさんあるんだけど、なぜかノリノリの母や女性使用人達は新たに仕立てたいみたいで、昨夜はがっつり採寸された。
「1つ確認したい。それはあくまで仕事のための服装、ということでよいのだろうか?」
「もちろんですよ」
本当は動きやすいから普段もこれでいきたいくらいなんだけど、昨夜試着した姿を見せたら私を溺愛する父と兄がすごく悲しそうな表情になったので、ちょっと難しそうかも。
「すまないが私は急用を思い出したので少しはずすから、貴女は通常業務を始めていてくれ」
そう言い残すと第二王子殿下は執務室を飛び出していった。
急に見つめられてそんなことを聞かれても困ってしまうんですけど。
「あ、あの、いろんな面で気遣ってくれていたのもわかりましたし、優しい方だなとは思っていました。仕事も誠実にこなしてらっしゃるのも見ていればよくわかります。ただ、そういう面では意識はしていなかったので、なんと答えていいものやら…」
苦笑する殿下。
「そうだな、突然こんなことを聞かれても困るだろう。嫌われていないのなら今はそれでいい。念のため確認しておきたいが、貴女には誰か気になる男性はいるのだろうか?」
私は首をぶんぶん横に振る。
今まで人生でそんなの一度もなかったから、この状況にかなりとまどってるんですけど。
「ならいい。これから貴女に意識してもらえるよう努力しよう。ただ、殿下呼びではなく、今までとおり名前で呼んでほしいのだが」
「かしこまりました」
ぎこちない笑顔で私は答えた。
「ああ、それからもう1つ貴女に詫びねばならなかったんだ。今にして思えば『目立たないように地味にしろ』などというのは女性である貴女を軽視していた部分もあったのだと思う。その点においても深く反省している」
また私に頭を下げる殿下。
「だからここで前言を撤回させてもらいたい。これからは貴女の好きな服装でかまわない」
「わかりましたわ」
うなずいた私に殿下が微笑みかけた。
「さて、すっかり遅くなってしまったな。馬車まで送ろう」
有無を言わさず殿下に手を取られ、私は執務室を後にした。
翌日。
昨夜はしっかり眠って気分も晴れた。いつもの時刻に登城して第二王子殿下の執務室に向かう。
「おはようございます!」
「ああ、おは…?!」
ノックして入室すると、なぜか殿下は目を丸くして固まっていた。
「どうかなさいましたか?」
「い、いや、確か昨日は貴女に好きな服装にしていいと言ったはずだが」
戸惑う表情の殿下。
「ええ、ですから着たかった服にしてみました」
ニッコリ笑って答える。
「だからって、なぜ男装になる?!」
「王宮内の移動が結構多いですから、仕事するのにドレスじゃ動きにくいんですよ。もう地味にしなくていいということで、多少目立っても便利な方を選ぶことにしたんです」
いやぁ、これホント楽だわぁ。
執務室に来るまでにジロジロ見られたけど、そんなことは気にしない。
「も、もしかして、その服は前から用意していたのか?」
「いいえ、取り急ぎ兄の昔の服を手直ししました」
兄のお古はまだたくさんあるんだけど、なぜかノリノリの母や女性使用人達は新たに仕立てたいみたいで、昨夜はがっつり採寸された。
「1つ確認したい。それはあくまで仕事のための服装、ということでよいのだろうか?」
「もちろんですよ」
本当は動きやすいから普段もこれでいきたいくらいなんだけど、昨夜試着した姿を見せたら私を溺愛する父と兄がすごく悲しそうな表情になったので、ちょっと難しそうかも。
「すまないが私は急用を思い出したので少しはずすから、貴女は通常業務を始めていてくれ」
そう言い残すと第二王子殿下は執務室を飛び出していった。
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