if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと

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第十話

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大坂から京。
長い道のりではあったが、一日でたどり着き、片桐且元の所有する屋敷で一泊することとなる。
秀頼は彩女、片桐且元と仲良く話していた。
一度は秀頼を攻める側となった且元だが、史実でも本気で秀頼の助命を嘆願しており夏の陣が終わると、間を空けずに病んでしまい亡くなっている。

且元は涙を流しながら秀頼の無事を喜んでいた。

「もう、且元を泣かせるようなことはせぬ。家康殿とは和解する。次の戦は起こらぬよ」
「左様でございますか」

自分の意見を持つ秀頼。
以前とは違い、成長した彼の姿を見て且元は感涙していた。
その空気を変えるドタドタと廊下を走る音。

「若ぁ!! 何故、爺を置いて、危険なところへ!?」


秀頼の教育係である速水守久である。

「すまぬ、爺。其方にはゆっくりと休んで欲しいのだ」

「何をおっしゃいますか!? 爺は、秀頼公のためなら火の中、水の中!」

彩女はため息を吐いた。

「ったく、赤子かよ」

秀頼は彩女に言う。

「彩女、爺は私を育ててくれた父のような存在。悪く言わんでくれ」

秀頼は微笑みながら守久に近づき、彼の肩をポンポンと叩く。

「爺、わかっておるよ。其方も母上と同様に戦ばかりの人生であった。もう戦は起こらぬ。河内に屋敷を用意した。余生をゆっくり過ごして欲しい」

速水守久、彼は秀吉に武勇を買われ、前線で戦い続けてきた。
冬の陣では上杉景勝と直江兼続を相手に互角以上に渡り合い、夏の陣では……


「爺、重成の部隊が退却したそうだ。長宗我部の隊に井伊直孝、水野勝成との戦に備えることを伝え、700程の兵士と共に調査と救出を頼む。その後は盛親殿と合流してくれ」

守久は調査に向かった。

ーーおそらく、盛親は逃げるだろう。

そう思われても仕方ない。
盛親は屈強な土佐兵を率いながらも関ヶ原の際に逃げている。
しかし、彼らの部隊に近づくと意外な情報を耳にする。

「長宗我部隊、勝利。藤堂高虎隊の被害が甚大!」

ーー勝ったのか?

しかも、史実と違い、秀頼参戦を聞いた盛親は

「ここで踏ん張るじゃ!」

逃げずに高虎を討ち取ろうと追撃していた。
5000人ほどだった盛親の部隊は豊臣家から一時解雇となり行く当てを無くした浪人、そして、農兵や藤堂高虎を裏切った土佐兵などを引き入れ、一万人を超える程の大部隊となっていた。

「ワシの言うことを聞かん奴はぶった斬るよいな! 隊列を組めい!」

農兵も不器用ながらも土佐式の槍衾を組み始める。

嬉しい誤算だった。
盛親が持つ長宗我部の血が覚醒し、的確な指示を部隊に送っていた。

「このまま、重成と合流して井伊直孝、水野勝成を倒す!」



ーーうむ、今日においては長宗我部隊は崩れぬであろう……重成の捜索に専念せねば。


木村重成は秀頼の大親友である。
彼を失えば、秀頼の闘うモチベーションが下がり、豊臣軍の敗走は確定してしまうだろう。

「何としても探さねば!」

断末魔の声が聞こえる。

守久は声のする方を振り返り兵士を率いて、その場に急行すると……

そこは農兵と木村重成隊の残党が高虎を囲んでいた。

高虎は巨体を傷だらけにさせながら、フラフラと眩みながらも構えている。

「ワシは……亡き殿下や家康公に認められたワシが……名もなき兵士に討たれるのか……儚いものよ……」

守久が兵士を掻き分けながらやってきて、高虎に話しかける。

「藤堂高虎殿とお見受けする。私は速水守久と申します」

「そ……其方が……頼む。名もなき者に討たれたくはない。この首、受け取ってくれぬか?」

「承知仕る。最後に言い残すことは……」

高虎は一度ため息を吐いたのちに言う。

「この戦、我らの負けであろう。そして、再び戦乱の世となる。どうか……我が子・高次は幼い……助けてやって……欲しい」

守久は頷く。

「若は寛大なお人。必ずや助けるであろう。安心を。もし、万が一伊勢や伊賀を攻めるなら私が若を斬ります」

高虎は安心して短刀を握るが、首を貫く握力はない。
彼は膝をつき、生涯の終わりを覚悟した。

「さらばだ」

守久は一刀で高虎の頸動脈を斬り、苦しませることなく黄泉の世界に送った。
彼は足軽頭と思われる男に金と高虎の首を渡し、盛親に戦況を伝えるように言う。

「一大事にございます! 柳生宗矩の部隊が秀頼様の軍に向かって進軍しております」

柳生宗矩と言えば、柳生の党首。
剣の腕は確かであり、浪人や農兵中心の豊臣軍では敵わない……彼が率いる柳生の剣豪部隊の突撃。

ーー秀頼様の命が危ない。

秀頼の下にいる彩女や薄田兼相も剣の腕はあるが、柳生宗矩には敵わないだろう。

「重成は生きておるのだな?」

足軽たちは頷いた。
守久は秀頼がいる場所を見つめながら言う。

「早急に重成と合流し、長宗我部と共に井伊直孝との戦に備えよ」

「守久殿は何処へ?」

「若のもとへ」

そう言い残すと700名の軍勢は秀頼のもとへ急行する。

続く
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