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第十一話 北政所
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本多忠勝……この世界線では小牧長久手で亡くなったはずだった。
しかし、彼は生きていた。
なぜか?
これは天海と正信の策である。
竹中半兵衛と豊臣秀長が生きているうちは忠勝は亡くなっているとした方がいいと彼らは判断したからだ。
秀吉は忠勝を尊敬に近い眼差しを向けており、いつか家臣にしたいと思ってはいるが、あの二人からしたら邪魔でしかない。
ーー忠勝は絶対に裏切らねーし、超がつくほどの厳格な武家で育ってるから、むしろ、俺や兄者出自がよくわからない連中のこと嫌いだろ。
と、秀長は冷静に考えていた。
忠勝は山奥に屋敷を貰い、子の忠朝たちと豊臣家との政争に勝利し、家臣として復帰できる日のために武芸や囲碁に勤しんでいた。
しかし、家康たちから「目立つ行動はするな」と言ってはいるが、「殿の天下のため!」と大声で堂々と話している。
ーー殿は甘い
家康は太平の世となり、関東一円を秀吉から託されており、それに対しての不満はない。
むしろ、大役をもらえたことに満足しているほどだ。
彼は統治体制を整えた豊臣秀吉という人物を評価している。
しかも、史実とは違い残虐な行動を取らない秀吉を尊敬すらしていた。
何という三角関係!
家康は秀吉大好きで豊家の行末を案じている。
しかし、家康の家臣たちはそれに納得せず、家康を天下人にしようと暴走している。
ーー秀次が失脚し秀頼がまだ幼い今、殿が天下を取る絶好の機会。
勿論、彼らに私欲はない。
だからこそ、タチが悪く諦められないのだ。
彼の家臣である榊原康政、井伊直政たちは正信や天海の策略で国内の治安や内政に忙しい豊家の武将たちができない各大名の相談事も受け持っており、豊臣家への不信感を高まらせる工作を行い、周囲を戦火に巻き込もうとしている。
まさに天下はまた戦国に戻り始めている。
そうとは知らずに京の城下町を散策している豊臣家の若手実力派の面々……毛利秀包、立花宗茂、長宗我部信親たち。
そして、彼らを案内する薄田兼相。
彼らは束の間の休息を楽しんでいた。
そんな、彼らの目の前に縄にかけられて歩いている美しい少女が現れる。
彼女の目は恐怖しか感じられない。
ピュアな秀包はその倫理観からは逸脱した光景と少女に対して何かを感じた。
ーー救わねば。
「すまぬ、この娘は何をした?」
秀包は少女を引き連れている武士たちに尋ねた。
「この方はなぁ、謀反者である羽柴秀次の側室。太閤殿下から死罪を……」
ーー伝わっていないのか?
秀包は武士の言葉を遮るように呆れながら言う。
「待て、秀次殿は死罪にはなっておらぬ。家族も罪は不問となり出家するか秀次殿についていくか、故郷に帰るかを選ばせろと早馬の報せがなかったか?」
武士の一人がため息をつき、怒りを見せながら言う。
「うるさいのぉ。どこの誰か存ぜぬが、決まったことじゃ。退け」
「私は毛利秀包だ。昨日まで殿下と共に秀次殿の処遇について話しておった……もし、そこにいらっしゃる方の首を斬ろうものなら容赦せんぞ」
武士たちが"毛利"の名前に反応して焦り、小声で相談し合う。
「下手に逆らうとまずい。ここは一度退くしかねぇよ……」
「しかし、そうなると、広家様や内府様が……」
宗茂が武士たちにわざとらしく尋ねる。
「ん? 広家殿? 吉川家に関係がおありであるのか?」
勘のいい彼の言葉に武士たちはビクッとなる。
「チクショ! バレたら仕方ねぇ!」
武士たちが真剣を抜く。
信親が呆れながら、呟く。
「秀包はいつもいらんことに顔を出しよるきにしゃあねぇな」
武士たちの目に殺意が芽生え、
「お前らは喧嘩で斬られて死ぬ愚かな大名になるんだよ!」
ーーええぜよ。これで秀包は覚醒しちょうぜ。
信親は秀包を見るが、表情が変わっていない。
広家への気持ちが覚醒を止めたのだ。
ーーあの時の秀包じゃねぇ?
彼が思い出したのは伊予での合戦と戸次川の合戦。
屈強な長宗我部兵や島津兵を薙ぎ倒した秀包の剣術と砲術。
間違いなく人外の強さであった。
ーー見たかったのにぃ。。。
残念に思う信親だったが、見えない速さで武士たちの腕を何かで叩き、真剣を地面に落とさせた。
ーーは、速くて見えなかった!
信親の持っていたのは木の枝。
ーーあんなもんで……腕が痺れて動かないだと!
長宗我部信親の剣術も凄まじく。
戦国最強とも言われる薩摩兵15人を戦の時に斬ったと言われている。
武士が必死に刀を取ろうとするが、腕が痙攣して持てない。
「姫を解放すれば、それで良い。今の会話は聞かなかったことにしてやろう。早く去れ」
秀包は悲しそうに呟く。
「広家が……やはり……」
兼相が秀包に話しかける。
「秀包殿、そんなことより、あの女……タダモンじゃねぇぜ。きっとどっかの大名の姫さんだろうよ」
確かに美しい。
女性には疎い秀包、宗茂、信親を魅了するくらいである。
ガタガタと恐怖で震えている姫に秀包は話しかける。
「安心してください。貴方様の命は私たちがお守り致します……とにかく、安全な場所にお連れいたします」
秀包は姫の手を握り安心させ、宗茂も頷き、近隣の屋敷にいる護衛を集めて北政所のところに向かう。
「あらぁ! 秀包、宗茂にお友達ののぶちゃんとむさ苦しい兼相やないの。どうかしたん?」
「……む、むさ苦しい!?」
兼相はグサっとくるが、宗茂に
「良いことだ。北政所様は本当に駄目な人間は相手にしない」
と小声でフォローされる。
兼相は
ーー私もお友達のノブちゃんと呼ばれる身分になりたい
と思うが、信親のイケメンっぷりと品のある所作を見て、あっさり諦めた。
秀包は今までの経緯を話して、姫を紹介する。
「まぁかわいい! 娘ができた気分やわ。こっちおいで。キンキンに冷えた梨があったはずよ。一緒に食べへん?」
北政所は喜び、姫を抱きしめながら歩き出す。
彼女は抜群のコミュニケーション能力で姫のことを聞き出した。
彼女の名は駒姫。
最上義光の娘で秀次に嫁ぐ予定で京に寄ったが、秀吉の配下に護衛が斬られ、縄で縛られて斬られる寸前だったという。
「訳は理解したわよ。駒ちゃん、安心して。ここにおる間は私が守るから。それより美味しいもん食べて嫌なことは忘れましょ……て言うか、あの猿! こんなかわいい子を!」
「そ、それについては私たちからも厳しく言いますから……」
宗茂たちは怒りの北政所を落ち着けさせるが……ドタドタと足音が聞こえる。
「ノブぅー!」
次は長宗我部元親が信親を心配してやってきた。
「ノブ、斬られそうになったって、ほんまか? おまんがおらんようになったら生きていけんぜよ!」
北政所は元親に
「全部、ウチの猿が悪いのよ! 長吉、半兵衛、秀長、元親さんと一緒に怒りに行くわよ! 駒ちゃんも怒ってええからね!」
駒姫がふふっと笑顔を見せながら言う。
「私はもう大丈夫です……それより、みなさん、すごく楽しいです」
彼女の笑顔にその場にいた全員が幸せな気持ちとなる。
「長旅でお疲れやろ? しばらく、ここにおりなさいよ。毎日美味しいもん食べて、囲碁や双六やって楽しく暮らしましょ」
長旅で疲労がある駒姫は京にしばらくいることを決め、父親である最上義光に向け、文を書く。
ここは山形城。
駒姫からの文を読んだ義光。
「おい、ウチの大事な姫を畜生みたいな扱いした輩がいるようだな。誰だ? 殿下か?」
義光の眼光は鋭い。
志村光安は臆さずに返す。
「殿下はどうやら止めようと早馬にて伝えていたそうで……自称ではありますが、殿下の遣いという者が河原で斬ろうとした模様。そこを偶然、通りかかった豊臣恩顧の家臣に救われたとか……」
「斬ろうとした者を調べよ。飼い主がいるであろうて……」
「其奴の存在、わかればどう致しますか?」
「苦しませながら殺す」
義光は殺意を全面に剥き出した表情で光安に答えた。
続く
しかし、彼は生きていた。
なぜか?
これは天海と正信の策である。
竹中半兵衛と豊臣秀長が生きているうちは忠勝は亡くなっているとした方がいいと彼らは判断したからだ。
秀吉は忠勝を尊敬に近い眼差しを向けており、いつか家臣にしたいと思ってはいるが、あの二人からしたら邪魔でしかない。
ーー忠勝は絶対に裏切らねーし、超がつくほどの厳格な武家で育ってるから、むしろ、俺や兄者出自がよくわからない連中のこと嫌いだろ。
と、秀長は冷静に考えていた。
忠勝は山奥に屋敷を貰い、子の忠朝たちと豊臣家との政争に勝利し、家臣として復帰できる日のために武芸や囲碁に勤しんでいた。
しかし、家康たちから「目立つ行動はするな」と言ってはいるが、「殿の天下のため!」と大声で堂々と話している。
ーー殿は甘い
家康は太平の世となり、関東一円を秀吉から託されており、それに対しての不満はない。
むしろ、大役をもらえたことに満足しているほどだ。
彼は統治体制を整えた豊臣秀吉という人物を評価している。
しかも、史実とは違い残虐な行動を取らない秀吉を尊敬すらしていた。
何という三角関係!
家康は秀吉大好きで豊家の行末を案じている。
しかし、家康の家臣たちはそれに納得せず、家康を天下人にしようと暴走している。
ーー秀次が失脚し秀頼がまだ幼い今、殿が天下を取る絶好の機会。
勿論、彼らに私欲はない。
だからこそ、タチが悪く諦められないのだ。
彼の家臣である榊原康政、井伊直政たちは正信や天海の策略で国内の治安や内政に忙しい豊家の武将たちができない各大名の相談事も受け持っており、豊臣家への不信感を高まらせる工作を行い、周囲を戦火に巻き込もうとしている。
まさに天下はまた戦国に戻り始めている。
そうとは知らずに京の城下町を散策している豊臣家の若手実力派の面々……毛利秀包、立花宗茂、長宗我部信親たち。
そして、彼らを案内する薄田兼相。
彼らは束の間の休息を楽しんでいた。
そんな、彼らの目の前に縄にかけられて歩いている美しい少女が現れる。
彼女の目は恐怖しか感じられない。
ピュアな秀包はその倫理観からは逸脱した光景と少女に対して何かを感じた。
ーー救わねば。
「すまぬ、この娘は何をした?」
秀包は少女を引き連れている武士たちに尋ねた。
「この方はなぁ、謀反者である羽柴秀次の側室。太閤殿下から死罪を……」
ーー伝わっていないのか?
秀包は武士の言葉を遮るように呆れながら言う。
「待て、秀次殿は死罪にはなっておらぬ。家族も罪は不問となり出家するか秀次殿についていくか、故郷に帰るかを選ばせろと早馬の報せがなかったか?」
武士の一人がため息をつき、怒りを見せながら言う。
「うるさいのぉ。どこの誰か存ぜぬが、決まったことじゃ。退け」
「私は毛利秀包だ。昨日まで殿下と共に秀次殿の処遇について話しておった……もし、そこにいらっしゃる方の首を斬ろうものなら容赦せんぞ」
武士たちが"毛利"の名前に反応して焦り、小声で相談し合う。
「下手に逆らうとまずい。ここは一度退くしかねぇよ……」
「しかし、そうなると、広家様や内府様が……」
宗茂が武士たちにわざとらしく尋ねる。
「ん? 広家殿? 吉川家に関係がおありであるのか?」
勘のいい彼の言葉に武士たちはビクッとなる。
「チクショ! バレたら仕方ねぇ!」
武士たちが真剣を抜く。
信親が呆れながら、呟く。
「秀包はいつもいらんことに顔を出しよるきにしゃあねぇな」
武士たちの目に殺意が芽生え、
「お前らは喧嘩で斬られて死ぬ愚かな大名になるんだよ!」
ーーええぜよ。これで秀包は覚醒しちょうぜ。
信親は秀包を見るが、表情が変わっていない。
広家への気持ちが覚醒を止めたのだ。
ーーあの時の秀包じゃねぇ?
彼が思い出したのは伊予での合戦と戸次川の合戦。
屈強な長宗我部兵や島津兵を薙ぎ倒した秀包の剣術と砲術。
間違いなく人外の強さであった。
ーー見たかったのにぃ。。。
残念に思う信親だったが、見えない速さで武士たちの腕を何かで叩き、真剣を地面に落とさせた。
ーーは、速くて見えなかった!
信親の持っていたのは木の枝。
ーーあんなもんで……腕が痺れて動かないだと!
長宗我部信親の剣術も凄まじく。
戦国最強とも言われる薩摩兵15人を戦の時に斬ったと言われている。
武士が必死に刀を取ろうとするが、腕が痙攣して持てない。
「姫を解放すれば、それで良い。今の会話は聞かなかったことにしてやろう。早く去れ」
秀包は悲しそうに呟く。
「広家が……やはり……」
兼相が秀包に話しかける。
「秀包殿、そんなことより、あの女……タダモンじゃねぇぜ。きっとどっかの大名の姫さんだろうよ」
確かに美しい。
女性には疎い秀包、宗茂、信親を魅了するくらいである。
ガタガタと恐怖で震えている姫に秀包は話しかける。
「安心してください。貴方様の命は私たちがお守り致します……とにかく、安全な場所にお連れいたします」
秀包は姫の手を握り安心させ、宗茂も頷き、近隣の屋敷にいる護衛を集めて北政所のところに向かう。
「あらぁ! 秀包、宗茂にお友達ののぶちゃんとむさ苦しい兼相やないの。どうかしたん?」
「……む、むさ苦しい!?」
兼相はグサっとくるが、宗茂に
「良いことだ。北政所様は本当に駄目な人間は相手にしない」
と小声でフォローされる。
兼相は
ーー私もお友達のノブちゃんと呼ばれる身分になりたい
と思うが、信親のイケメンっぷりと品のある所作を見て、あっさり諦めた。
秀包は今までの経緯を話して、姫を紹介する。
「まぁかわいい! 娘ができた気分やわ。こっちおいで。キンキンに冷えた梨があったはずよ。一緒に食べへん?」
北政所は喜び、姫を抱きしめながら歩き出す。
彼女は抜群のコミュニケーション能力で姫のことを聞き出した。
彼女の名は駒姫。
最上義光の娘で秀次に嫁ぐ予定で京に寄ったが、秀吉の配下に護衛が斬られ、縄で縛られて斬られる寸前だったという。
「訳は理解したわよ。駒ちゃん、安心して。ここにおる間は私が守るから。それより美味しいもん食べて嫌なことは忘れましょ……て言うか、あの猿! こんなかわいい子を!」
「そ、それについては私たちからも厳しく言いますから……」
宗茂たちは怒りの北政所を落ち着けさせるが……ドタドタと足音が聞こえる。
「ノブぅー!」
次は長宗我部元親が信親を心配してやってきた。
「ノブ、斬られそうになったって、ほんまか? おまんがおらんようになったら生きていけんぜよ!」
北政所は元親に
「全部、ウチの猿が悪いのよ! 長吉、半兵衛、秀長、元親さんと一緒に怒りに行くわよ! 駒ちゃんも怒ってええからね!」
駒姫がふふっと笑顔を見せながら言う。
「私はもう大丈夫です……それより、みなさん、すごく楽しいです」
彼女の笑顔にその場にいた全員が幸せな気持ちとなる。
「長旅でお疲れやろ? しばらく、ここにおりなさいよ。毎日美味しいもん食べて、囲碁や双六やって楽しく暮らしましょ」
長旅で疲労がある駒姫は京にしばらくいることを決め、父親である最上義光に向け、文を書く。
ここは山形城。
駒姫からの文を読んだ義光。
「おい、ウチの大事な姫を畜生みたいな扱いした輩がいるようだな。誰だ? 殿下か?」
義光の眼光は鋭い。
志村光安は臆さずに返す。
「殿下はどうやら止めようと早馬にて伝えていたそうで……自称ではありますが、殿下の遣いという者が河原で斬ろうとした模様。そこを偶然、通りかかった豊臣恩顧の家臣に救われたとか……」
「斬ろうとした者を調べよ。飼い主がいるであろうて……」
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続く
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