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第十六話 夕暮れ時と笑み
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石田正澄が連れてきた小柄な男。
飄々とした物静か……しかし、確かにその瞳は修羅場を見てきており、それはこの国だけのものではなく、もっと規模が大きい……それは地獄に近い。
「淀様からの紹介でな。猟師やっとる平兵衛殿や。まぁ百聞は一見にしかずや。頼むで」
正澄の性格は明るく、大坂の空気の中に馴染む性格をしている。
彼の明るい声に平兵衛は微笑みながら頷くと置いてある石打ち式銃を撃つ。
角度的に考えて中心を射抜くのは困難なのだが、あっさりとそれを熟す。
豊久は驚き、興味津々に平兵衛に話しかける。
「なんじゃあ!? どないなっとんじゃ!」
平兵衛は人差し指を口に持ってきて静かにするよう豊久たちに促すと、次は目隠しをして同じ銃を使い、発射する。
豊久たちは驚き、的に駆け寄る。
「穴、空いとらん? 外したのか?」
宗茂がそう呟くと、信親は壁を見て頬から顎の部分に冷や汗を流しながら言う。
「わ、わけわからんぜよ」
「どうした!?」
信親が指差した方向には銃弾が壁を貫通させている後。
まだ煙があり、さっき撃ったばかりなのがわかる。
平兵衛は信繁に呟く。
「威力はない。だが、狩猟に使えそうだ。二丁ほど用意してくれないか?」
信繁は彼を見つめ頷いた。
そして、二人は直感で互いを理解し、言語化には頼らないコミュニケーションをする。
平兵衛は微笑み、その場に座り、銃の手入れを始める。
そこに秀包が一番最初に駆け寄り、他の者たちも近づいていく。
「すごいなぁ! 銃のこと、私にも教えてくれぬか?」
秀包の無邪気な質問から彼の仲間たちが興味深く平兵衛を取り囲み、質問責めにする。
ーー俺が生きていた時代に連れて行きたいくらいの男たちだ。
平兵衛はそう思い、質問に答えていた。
男たちは希望に満ちた笑みを浮かべて話していた。
その頃、佐和山の城では。
吉継は三成に言う。
「悪いことは言わん。やめておけ。内府殿は律儀なお方。豊家を蔑ろになどせぬ」
「わかっておる。私も内府殿を信頼している。しかし、あの方の配下の動き……看過できぬ」
吉継はさらに三成に警告する。
「それについては理解できないことはない。しかしだ、あの方の力は強大。逆らうことはできない」
左近は吉継を諭すように話し始める。
「吉継殿、豊家が生き残るには戦に勝ち、天下に豊臣に勝てる者はおらぬと示さねばなりません。さもなくば、内府殿に……」
戦国の世を生き抜いてきた左近の言葉は重みがある。
吉継も黙るしかない。
彼は五奉行と有能な父と兄、そして、吉継、直江兼続や佐竹義宣など自分の仲が良好な人間たちを使い、徳川家臣たちと競い合うかのように反乱鎮圧や検地の手伝いを行なっている。
「吉継よ、勝ち目はある。兼続に聞けば、五大老は殿下亡き後、家康の配下たちは自分たちに刃を向けるのではないかと疑心暗鬼になっておる。力を合わせれば……」
吉継の顔が曇る。
ーー内府殿の配下が三成や五大老の動きを把握していないわけがない。五大老五奉行の切り崩しをすでに行っているはずだ。
その予感は当たっている。
徳川家康の配下たちは既に動き始めていた。
「長盛殿、どうであるか?」
本多正信の呼びかけに答える男。
五奉行の一人である増田長盛。
石田三成との関係は良好ではあるが、やはり自分の家の存続が一大事である。
家康に味方するのは当然だ。
「はい、近頃、大谷吉継殿は島左近殿と懇意にしているようで……」
「やはりな。彼奴らは気づいておったか? だが、おかしくはないか? 三成と吉継では勝ち目はない。奴らと味方になりそうな毛利は豊臣と懇意にしておる安国寺恵瓊と小倅の秀包くらい。吉川広家など以前から私たちに靡いておる。面倒な者たちと言えば、南蛮との交渉に当たっている奴らか。奴らも一枚岩ではなかろうて。もはや、天下は我々の手に……」
正信がそう言うと、天海が
「いや、竹中半兵衛がどちらに着くかで、変わって参ります。奴ならば彼らをまとめ上げることは可能。しかも、奴は欲望や家の存続など考えておらぬ変わり者と聞く」
と、危惧する。
「ふふ、心配ご無用。半兵衛が懇意にしている黒田如水は既に私たちと共にある。秀吉が亡くなれば奴もこちら側につくのは明らかだ。そして、秀長も……」
男たちは目前に迫った勝利に微笑みながら話していた。
大和郡山城に秀長はいた。
「はは、もはや立つことすらできぬか……」
彼は自嘲の笑みを浮かべながら話し始める。
半兵衛は表情を変えないが、苦労を共にした仲間との別れを悟り、内心は悲しさで満ち溢れている。
「秀保も亡くなり、ワシの家も終わりか……いや、秀次と秀頼がおったか。半兵衛よ」
「何でございますか?」
消え入りそうな声で秀長が話し出す。
「三成、秀包、秀次を同じ時間に……高虎を別の時に呼んでくれぬか?」
続く
飄々とした物静か……しかし、確かにその瞳は修羅場を見てきており、それはこの国だけのものではなく、もっと規模が大きい……それは地獄に近い。
「淀様からの紹介でな。猟師やっとる平兵衛殿や。まぁ百聞は一見にしかずや。頼むで」
正澄の性格は明るく、大坂の空気の中に馴染む性格をしている。
彼の明るい声に平兵衛は微笑みながら頷くと置いてある石打ち式銃を撃つ。
角度的に考えて中心を射抜くのは困難なのだが、あっさりとそれを熟す。
豊久は驚き、興味津々に平兵衛に話しかける。
「なんじゃあ!? どないなっとんじゃ!」
平兵衛は人差し指を口に持ってきて静かにするよう豊久たちに促すと、次は目隠しをして同じ銃を使い、発射する。
豊久たちは驚き、的に駆け寄る。
「穴、空いとらん? 外したのか?」
宗茂がそう呟くと、信親は壁を見て頬から顎の部分に冷や汗を流しながら言う。
「わ、わけわからんぜよ」
「どうした!?」
信親が指差した方向には銃弾が壁を貫通させている後。
まだ煙があり、さっき撃ったばかりなのがわかる。
平兵衛は信繁に呟く。
「威力はない。だが、狩猟に使えそうだ。二丁ほど用意してくれないか?」
信繁は彼を見つめ頷いた。
そして、二人は直感で互いを理解し、言語化には頼らないコミュニケーションをする。
平兵衛は微笑み、その場に座り、銃の手入れを始める。
そこに秀包が一番最初に駆け寄り、他の者たちも近づいていく。
「すごいなぁ! 銃のこと、私にも教えてくれぬか?」
秀包の無邪気な質問から彼の仲間たちが興味深く平兵衛を取り囲み、質問責めにする。
ーー俺が生きていた時代に連れて行きたいくらいの男たちだ。
平兵衛はそう思い、質問に答えていた。
男たちは希望に満ちた笑みを浮かべて話していた。
その頃、佐和山の城では。
吉継は三成に言う。
「悪いことは言わん。やめておけ。内府殿は律儀なお方。豊家を蔑ろになどせぬ」
「わかっておる。私も内府殿を信頼している。しかし、あの方の配下の動き……看過できぬ」
吉継はさらに三成に警告する。
「それについては理解できないことはない。しかしだ、あの方の力は強大。逆らうことはできない」
左近は吉継を諭すように話し始める。
「吉継殿、豊家が生き残るには戦に勝ち、天下に豊臣に勝てる者はおらぬと示さねばなりません。さもなくば、内府殿に……」
戦国の世を生き抜いてきた左近の言葉は重みがある。
吉継も黙るしかない。
彼は五奉行と有能な父と兄、そして、吉継、直江兼続や佐竹義宣など自分の仲が良好な人間たちを使い、徳川家臣たちと競い合うかのように反乱鎮圧や検地の手伝いを行なっている。
「吉継よ、勝ち目はある。兼続に聞けば、五大老は殿下亡き後、家康の配下たちは自分たちに刃を向けるのではないかと疑心暗鬼になっておる。力を合わせれば……」
吉継の顔が曇る。
ーー内府殿の配下が三成や五大老の動きを把握していないわけがない。五大老五奉行の切り崩しをすでに行っているはずだ。
その予感は当たっている。
徳川家康の配下たちは既に動き始めていた。
「長盛殿、どうであるか?」
本多正信の呼びかけに答える男。
五奉行の一人である増田長盛。
石田三成との関係は良好ではあるが、やはり自分の家の存続が一大事である。
家康に味方するのは当然だ。
「はい、近頃、大谷吉継殿は島左近殿と懇意にしているようで……」
「やはりな。彼奴らは気づいておったか? だが、おかしくはないか? 三成と吉継では勝ち目はない。奴らと味方になりそうな毛利は豊臣と懇意にしておる安国寺恵瓊と小倅の秀包くらい。吉川広家など以前から私たちに靡いておる。面倒な者たちと言えば、南蛮との交渉に当たっている奴らか。奴らも一枚岩ではなかろうて。もはや、天下は我々の手に……」
正信がそう言うと、天海が
「いや、竹中半兵衛がどちらに着くかで、変わって参ります。奴ならば彼らをまとめ上げることは可能。しかも、奴は欲望や家の存続など考えておらぬ変わり者と聞く」
と、危惧する。
「ふふ、心配ご無用。半兵衛が懇意にしている黒田如水は既に私たちと共にある。秀吉が亡くなれば奴もこちら側につくのは明らかだ。そして、秀長も……」
男たちは目前に迫った勝利に微笑みながら話していた。
大和郡山城に秀長はいた。
「はは、もはや立つことすらできぬか……」
彼は自嘲の笑みを浮かべながら話し始める。
半兵衛は表情を変えないが、苦労を共にした仲間との別れを悟り、内心は悲しさで満ち溢れている。
「秀保も亡くなり、ワシの家も終わりか……いや、秀次と秀頼がおったか。半兵衛よ」
「何でございますか?」
消え入りそうな声で秀長が話し出す。
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続く
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