マルチバース豊臣家の人々

かまぼこのもと

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第二十一話 さらば、秀吉! 前編

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豊臣秀吉は親族に近い付き合いがあった者たちを上方での任務に就かせていた。
しかし、加藤清正、福島正則、蜂須賀家政など、徳川方と通じている武将は距離を置き、来ることはない。
逆に石田三成、宇喜多秀家、毛利秀包、立花宗茂、浅野幸長、津野親忠、真田信繁たちは喜びながら秀吉のもとにやってきた。

ーー本にワシは幸せモンじゃ。

秀吉は短い間ではあったが、やってきた彼らの成長を肌で感じ、束の間の幸せを噛み締めていた。

史実では時代への恨み、自分を理解できない人間を粛清する血に塗れた人生をおくっていた秀吉だが、この世界では違う。

大陸への侵攻、身内や諸大名への苛烈な処分はない。

なぜ、起こらなかったか?

それは、秀長や半兵衛が生存していたことでプレッシャーやストレスが緩和され周囲への優しさや心に余裕ができ、家族に近い存在がいることを認識した。

本来、彼が持っていた狂気は緩和されていたのだ。

秀包、豊久の無邪気な声、それを窘める三成の声、リーダー格として慰める宗茂の声が聞こえる。

秀吉が近くにいる半兵衛に対して呟く。
「ワシが寂しいと言えば、遠いところから皆来てくれよる。ワシは幸せ者やったんやな」

彼の呟きに半兵衛は微笑みながら頷く。

秀吉の余命はあと少しで尽きるだろう。
主君にストイックさを求め、斉藤龍興を見限り、秀吉さえも事あるごとに厳しく接してきた。
しかし、半兵衛は秀長が亡くなったあとの秀吉には優しく接していた。

ーー別れが近いのなら、せめて、親友として傍にいたい。

穏やかな毎日であった。

優しい日差しが差し込み、徳川家康が現れる。

この頃の家康は豊臣家と戦う気などはなく、彼自身も秀吉との関係は良好であった。
周囲の人間たちからは次の天下人と期待されているが、家康本人は全くその気はなく、平和な世が長く続くことを祈っていた。

そんなある日、秀吉は秀次を呼び寄せた。
傍には徳川家康、竹中半兵衛、前野長康がいる。

多少の恐怖心はあるが、親忠の勧めにより、やってきた。

ーー幸い、殺意のようなものは感じられない。

秀吉は以前のような死の恐怖感じさせる暴君の瞳ではなく、自身の死を悟った穏やかな瞳。

秀吉は彼を見つめながら話し出す。
「秀次、悪かったな」
「いえ、私に非があること……」

秀次は意外な言葉に内心驚いていた。

ーー殿下が反省を?

不思議な感覚であった。
秀長が亡くなり、暴走化すると思われていた秀吉が……

「実は……おみゃあによぉ、大名復帰してもらおうと思ってるんや」

「そ、そんな……大罪を犯した私に……」

「大罪はワシやろ。身内を亡き者にするなんて愚の骨頂じゃ。おみゃあ、血の繋がった家族。復帰はええやろ? ワシが生きとる間に政を思い出してくれや。長康も手伝ってくれるきに」

長康は力強く頷いた。

「ワシにできることはこれくらいじゃ。秀頼を助けてやってくれや……秀次、ええか?」

秀吉は涙ながらに秀次に近づき、肩をバンバン叩きながら

「すまんかったな……おみゃあのこと、全く考えてへんかった……許してくれ……」

「もう終わったことでございます。安心してください。秀頼様を支えてみせます」

秀次と秀吉は固く握手して、涙ながらに頷き合った。

「せや、何かあったら家康殿に頼れ。家康殿は律儀者やからな。助けてくれるはずや」

家康は笑顔で頷く。
その笑顔に嘘を感じられない。


しかし、ここにいた人間はまだ理解できないだろう。
秀吉亡き後、律儀者と言われた家康が秀次に牙を向けることを……

「安心せい! 嫌われ者は長生きするからな! おみゃあが一人前になるまで……あと、ニ、三年は生きるで! 茶々や寧々と楽しんだるわ」

「お待ちください! 殿下に長生きされたら私、竹中半兵衛の悩みが増えまする!」

半兵衛の冗談に周囲が笑い出す。

「せや、近いうちにデカい酒宴をせんか?
親しい者たちを集めて……せや、駒姫も義光と会えんくて寂しいやろ? みんな、呼んで酒宴じゃ!」

「良いですな」

半兵衛は頷いた。


続く


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