マルチバース豊臣家の人々

かまぼこのもと

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第二十八話 毛利輝元の野望

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竹中半兵衛は秀包の意図をすぐに読み取った。

徳川家康が天下への野心を見せてきた現状。
対抗できる力があるのは前田利家か毛利輝元だけ。
しかし、最も頼りになる前田利家は秀吉が亡くなってからは病に伏せることが多くなり家康と対峙することは現実的に不可能。

毛利輝元が持つ家康以上の野心を利用して動かすしか手はないのだ。

一族である秀包が関与する軍事奉行たちを味方につければ、家康に対抗できる。
彼らは本多忠勝や井伊直政に負けないくらいの武と何より最新兵器の保管と改良を任されている。
しかも、奉行同士の結束は固い。


ーー秀包殿がこちら側に靡かぬことはわかっておった……

家康はふぅーと鼻からため息をつきながら笑顔となる。

「うむ……考慮はいたしましょう。しかし、現状では殿下の死が公に伝わり始めております。まだ秀頼公は幼い身。まずは話し合いを進めた上で、それは決めるということで」

ここで手を挙げないところが家康という人物を表している。
もし、手を挙げれば家康vs輝元の戦いとなるだろう。
豊臣内での派閥争いに収まってしまい、家康に味方する大名も少なくなってしまう。
毛利か上杉が豊臣を脅かすような行動をした上で、徳川家康が豊臣家を守るという構図にしなければならない。
しかし、その準備がまだ整ってはいない。

ーー焦る必要はない。時間はある。


しかし、竹中半兵衛は徳川家康の行動を見て、豊臣家から離れていることを薄らと気づき始めていた。

家康と秀吉の間に信頼関係があったのは確かだろう。
当初、彼も秀吉に近い五奉行たちと共にこの国を治めるつもりだったのは事実。
しかし、そうなれば、五奉行と距離を取っていた黒田長政、伊達政宗の他にも豊臣家恩顧の武断派は冷遇されることは明白。
彼らが暗躍して家康を担ぎ上げたのだろう。
家康の家臣たちも秀吉のような根が陰湿で残虐……しかも、農民上がりの男に主君が従っているのは嫌だった。


利害が一致している。

もし、家康が彼らからの誘いを断ったのであれば、秀吉の一家臣として、屈強な家臣団を率いて毛利上杉と全面戦争に挑んでいただろう。

しかし、"待つ"と言うことを選択肢から選んでしまった。
この時点で豊臣政権から離れてしまったのだ。

間違いなく、竹中半兵衛から権力を奪いに来るだろう。
そして、今、家康は暗に半兵衛を挑発した。

ーー半兵衛は全てを悟っているだろう。しかし、ここで私を潰せば、また戦の世となるぞ?

半兵衛は微笑んだ。

ーー私を脅すのか? いい度胸だ……面白い。受けて立とうではないか。

「内府殿のおっしゃるように待つのが良いでしょう。事を急いでは破滅に導くだけ」

しかし、この裏の意味は

ーー家康、お主だけではない、味方する者全ての首貰い受けようぞ。

ということ。
戦いは始まったのだ。

一方、吉田郡山城では

毛利秀元が輝元に詰め寄った。

「父上、どういうことですか?」

輝元は目を細め、冷静な口調で話し始める。

「お主だけには話そう」

秀元は頷く。

「豊臣家の権威を毛利が貰い受ける」

「何故ですか? 祖父上は天下を目指すなと」

「このまま、指を咥えて見ておっても内府殿が天下を握るその時、毛利はどうなるか? わからぬか?」

「し、しかし……」

秀元は理解している家康が天下を治めると、毛利上杉前田は何らかの方法で領地は減らされる……場合によっては一族滅亡まで考えられる。

輝元が一度ため息を溢した後、更に言う。

「祖父上が成し遂げられなかった悲願。この国の戦乱を毛利が終わらせたいのだ。子々孫々まで千年万年まで毛利の名前を良き意味で残したい……私の手で再び戦なき世にしたいのだ」


秀元が笑顔となり強く輝元の手を握る。

「私、毛利秀元。命を賭して戦いましょう」

「……秀元、安心せい! ワシに味方すると言ってくれる者がすでに何人もいる! 勝算はある」

秀元が頷く。

もちろん、上杉は毛利側だろう。
そして、石田三成など武団派との仲違いしている奉行衆もこちら側につく可能性は高い。
彼らは保身のための行動ではあるが、それは毛利家の目指す天下にとって最大の好機を作り出すもの。

そして、二人が手を強く握り合う。

続く


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